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277話 野盗襲撃

翌日には『レークス』に着く、そんな場所で、不意にそれは飛んできた。


「ッ!『マジックガード』!」


一見何もない場所から飛んできた矢を防ぐ。


――――――――――ヒュンヒュンヒュン


――――――――――カカカン!


続けて放たれた3本の矢を全て防ぐと、矢による攻撃が無意味だと判断したのか総勢30人ほどの男たちがパラパラと出てきた。

やべえ、人数結構多い。

そしてその首領らしきネズミの顔をした男が、値踏みをするようにこちらを見る。


「へぇ、あの魔境を超えたっつう噂の商人がここを通るってのは本当だったのか。」


「頭、さっさとやっちまいましょう。」


「まぁ待て。あの冒険者を見ろ。『不死身(イモータル)』だ。」


リーダーらしき男が俺を一瞥する。


「野盗がいるたぁ聞いてなかったんだがな。」


野盗の目撃情報があれば、すぐにギルドに依頼が来る。

この商人さんがそんなことを確認しないような人だとは思えない。


「そりゃそうよ、俺達は2,3回やったら場所を変えてやってんだし。

で、どうだ。命までは取らねえから積み荷全部置いていかねえか?」


なるほど、こいつら手練か。

見たところ、全員が『隠伏』系の技を持ってるようだ。

流石の俺も普通に行動されれば気づくからな。

まぁ、周りが岩場だったせいで見つけにくかったのもある。

それにしても、状況は結構やばい。俺はちらっと商人さんを見る。

そして、その目を見て確信した。

この人は今俺と同じことを思ってる。


((これ、投降しても殺されるよな))


目撃情報がここまでない、ということはつまり皆殺し、というわけだ。

なら、正解はいかに彼らを撃破するか。


「わ、わかった。だが、盗るのはせめて半分にしてくれ。

このままだと死んでしまう。」


商人さんがビビってるかのように上手く演技を始める。

無論、本気では言ってないだろう。流石。わかってらっしゃる。

ぶっちゃけた話相手からすれば半分だろうと四分の一だろうと皆殺しにして全部奪うので関係ない。

だから、こちらの投降を受け入れる。そう見込んでの話のはずだ。

彼には俺の戦闘スタイルをある程度教えている。


「いいだろう、じゃあ半分にしてやるよ。

じゃあ、そこにいる全員、手を上げてこっちへ来い。

ああ、冒険者のアンタは自分で自分の手を縛ってくれ。」


冒険者からすると縄、と言うのは必需品だ。

当然、俺も持っている。

だからこそ、こういうことを言ったのだろう。その方が安全に殺せる。

俺は自分で自分を縛り、近づいた。


首領らしき男の横の鷲の男が、なにか耳打ちをしていた。

恐らくその視力で俺の縄がそう簡単に解けないことを報告したのだろう。口元からわかる。


俺達が彼らの三歩前まで来ると、首領らしき男がストップをかけた。


「よし、オッケーだ。」


よく見れば、かなり遠くから俺の喉をめがけて弓を引いている一団が見えた。

なるほど、確かに普通の魔法使いは喉を潰されると一巻の終わりだ。

だから縄で自分を縛っているがために相手は俺を完全に拘束できた、そう思ってるのだろう。

確かに、これで大抵の魔法使いは詰む。


リーダーらしき男が俺たちを素通りしようとする。

だが、俺はその手が短剣を納めていそうなズボンに向かうのを見逃さなかった。


(魔手、射出)



――――――――バゴバゴバゴバゴバゴバゴバゴバゴッ!


「「「あがっ!」」」


そう、大抵の魔法使い(・・・・)ならば。

俺が身動きがとれないと油断していた奴らを、魔手8本で顎を撃ちぬいてやった。

因みに死んではいないはずだ。

すぐさま魔手でナイフを取り出して縄を切る。

すると、声のでかい犬の男が叫んだ。


「や、野郎やりやがった!みんな出てこい!」


「えっ。」


ここで明かされる衝撃の真実。

敵は、30人だけではなかった


(いやいやいやいや多すぎでしょ!?)


こりゃ確かに皆殺しにできる。物量の差が尋常じゃない。


「くそ、4人全員俺に近寄れ!」


正直厳しいが、やるしかない。

さっきは不意をつけたから一気にやれたわけであって、こうやって臨戦態勢に入られると厳しいのだ。


「お前ら!、一気にかたをつけるぞ!」


「させるか馬鹿野郎、『ストロム・ベルジュ』!」


ここは殺傷能力とリーチが長い『ストロム・ベルジュ』でいくしかない。

いくら不可視とはいえ魔手では効果的なダメージを与えられないのだ。


水の一閃が、相手の粗末な槍ごと手を切りつける。

だが、それ以外の攻撃は骨に当てられたり武器で防がれ、効果的な一撃を与えられない。


「おら、くたばれクソチビ!」


(『マジックガード』!)


結果、身動きがとれない俺は接近を許すことになる。

厄介なことに、手練なだけあって一人一人がDランク冒険者と並べても遜色ない実力の持ち主だ。

生き残ることに特化した俺だから凌げてはいるが、中々反撃に回すための魔力が確保できない。


「ふっ!」


「いってえ、何してくれんじゃてめえ!荷物だけ置いてきゃいいのに全くよぉ!」


見れば俺の防御の隙間から商人さんが自前の槍で攻撃してくれていた。

『ブースト』を使っているようだが、しゃがんで突いてるぶんパワーが出ない。

だが、ありがたいことにはありがたい。


「『ゲイル・クラーク』」


一瞬できた隙で魔法を変更する。

風の拳の方が吹き飛ばせて楽だと判断したためだ。


「兄貴!あいつ、魔法を変更してきました!」


「よし、全員出し惜しみするな!矢も使って奴を殺せ!」


「「「ラジャー!」」」


(くそ、あいつら野盗だし矢の補給とかしにくいんだからちっとは渋れよ!)


内心悪態をつきながら、突破方法を模索する。

だが、どう足掻いても突きつけられるのは俺の魔力不足。

さらに言えば、商人さんの『ブースト』も殆ど残り時間がない。


(使うしかないか………。)


右手が収納袋に伸びる。

絶対に人間相手には使いたくないとは思っていたが、生き残るためには必要だ。

一度だけなら、しっかりと口止めすれば、大丈夫かもしれない。

俺が意を決して鉄の細長い武器を取り出そうとした時、突然その人(・・・)は空から来た。


「大人数が交戦しているから何事か、と思えば随分大規模の野盗がいたもんじゃなぁ。」


その男は、しわがれた声で空から声をかける。

その声、そして渦巻く魔力に戦闘中にもかかわらずこの場にいる全員が見上げてしまった。

男は、その黒い羽を使いゆっくりと着地する。


「ふむ、誰だお前という目をしておるの。」


「だ、誰だおめぇ。敵対するってんならこのチビみたいにリンチにするぞ。」


「『風帝』、といえばわかるかの?」


「「「ッッッ!!!」」」


全員が、驚きに目を見開いた。

それを見て、男、いや『風帝』はクックッと笑った。


「ほれ、リンチにされるのはどっちの方かのう?」


直後、暴風が吹き荒れた。

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