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265話 門出

3日が経った。


「お、手紙が帰ってきたぞ。」


『最強の魔法使い』―――――名前を聞こうとしたが教えてくれなかった―――――が、飼いならした鷹から手紙を受け取る。

大陸を渡れるような鳥は少ないらしく、この人は動物の飼い方でも何やら凄い腕前を持っているらしい。

彼は、さっと目を通すとこっちを見た。


「とりあえずお前を見てから決めるそうだ。すぐに船を出させるから、それで行くといい。」


そういうと、手紙を軽く書いてまた鷹に渡した。


「というと、魔法陣の講義は………。」


「終わりだな。だが、魔法陣がある程度見えるようにはなっただろう?

お前の理解力、そして『イシスの加護』があればある程度の魔法の性質は見えるようになったはずだ。」


この三日間で、俺は魔力回路を魔法陣が見えるように改造してもらった。

俺の魔力量がかなり少ないから力技で出来たらしい。それに、見えると言ってもはっきり見えるわけでもない。『リュミエール・シーカー』を使えば見える、という程度だ。


それと俺の『イシスの加護』だが、戦いを経て強くなっていた。というよりは、神によりいっそう気に入られたらしい。神に気に入られたと言っても実感わかないが。


魔法と潔白の神イシスの加護


魔法習得速度が超上昇

魔法の威力が微量上昇

魔力親和性の向上


色恋沙汰に巻き込まれにくくなる



この魔力親和性の向上が俺の魔法陣への理解を感覚的なもので深めてくれたようだ。


「そして、餞別だ。この魔方陣を持っていけ。」


彼が手渡してくれたのは、水属性の魔法陣。

これは…………その中でも氷の変化魔法?


「『カルト・フリーズ』という魔法だ。最近開発された。

ただ物の温度を冷やすだけの魔法だが、お前なら何か使い方を思いつくだろう?」


そういって『最強の魔法使い』はニヤニヤした。

この三日間、俺は講義の礼に少しばかり科学の知識を伝えてみた。それを言っているのかもしれない。


だが、確かに物を冷やす魔法は有用性がある。

有りがたく受け取って、礼をする。


「世話になった。」


「あの気難しい爺さんに気に入られるかは分からないが、頑張ってこい。

お前の魔力操作は間違いなく世界トップクラスだ。」


激励、そして船着場の住所をもらってギルドを出る。

外の空気に触れて、俺は伸びをした。

ギルド内での目線が思いの外厳しかったのである。

最年少Bランカーの名前は多少なりともこちらに伝わっていたらしく、更に二人のSランクと会う等という傍から見れば結構滅茶苦茶なことをしていたため、向けらられるものに嫉妬やら敵意やら好奇心が混ざりまくってて肩身が狭かった。

俺とか死ににくいのと魔力操作だけが取り柄なんだが………。


とりあえず、すぐに船の準備はできるそうなので早めに船着場に行って損はないだろう。

俺は、餞別のメモを頼りに船着場へ向かった。















「ちょっと聞きたいんだが、この街のギルドマスターに今日出港するよう言われてる船はコイツで合ってるのか?」


本日7度目の質問。

メモには船着場の場所は書いてあったがどの船かは書かれていなかったのだ。

完全に忘れてたなあの人。殆どギルドから出ずにいるからだろう、船を使わないのかもしれない。


俺の質問に対して、日焼けしたおっちゃんはびっくりした目でこっちを見た。


「おいおい、ちびっ子冒険者が来るとは聞いてたがこんな小さかったのか。

てっきり15歳くれえだとは思ってたぜ。」


「うっさい、チビで悪かったな。」


俺だって好きでチビなのではない。というかこの世界牛乳が高いんだよな。と言うかで回ってる量が少ない。金に物を言わせて毎朝飲んでるが。


「ともあれ、何か証明できるものは?」


俺は、黙って『最強の魔術師』にもらったメモを差し出した。


「筆跡は同じだな。魔法陣も出鱈目じゃなさそうだ。よしきた、船の準備はできてるぜ!乗りな!」


見れば、もう既に帆も張られかけている。あの手紙が届いてからやったのか。船員も準備大丈夫そうだし、動きが早いな。

因みに、船はかなり大きい。この世界じゃかなりいい部類に入るだろう。

くそ、蒸気機関について語りたくて仕方がない。この規模の蒸気船なら結構良い速度で旅できただろうに。


そんな大きな船に登っり、眼下に広がる都市を眺めると、その全貌がよくわかった。

この街は、物凄く整然としている。道は碁盤の目のようになってて、綺麗だ。

それはこの街には貴族が多いことが起因しているのだが、そのせいで城塞都市のような活気が無い。

だが、落ち着いている。

この大陸に別れを告げる街としてはちょうどよかった。


なんて思ってると、追加で何人か船に乗り込む。

まあそうだよな、こんなでっかい船に俺しか乗らないはずがない。


15人ほど乗り込んだところで、船から階段が取り外される。

ついに出発のようだ。


「総員!舵を持て!出港だ!」


さっきのおっちゃんが掛け声を上げると、ゆっくりと船が動き出した。


うむ。


(城塞都市に帰ったら蒸気機関の研究をしよう………!)


船は、元現代日本人からしたらあまりにも遅すぎた。

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