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258話 対グランドタートル 8

俺が先ほど粉塵爆発を選択したのには、敵の殲滅以外にもう一つ理由がある。

それは、この木々が乱立する森で一定の視界を確保するためだ。

お陰で、今俺達が飛んでいる下では木々が燃え、なぎ倒されている。自然破壊も甚だしいな。

その下から、ポコポコと飛び出すもぐらの魔物たち。

数は多くないが、飛び出したらすぐに地面に潜りこちらの死角を狙うという作戦をとってきて、非常に厄介だ。おまけに素早いし、地面を軽々掘って飛び出す程の筋力もある。


(さて………どう攻略しようか………。)


空を飛びながら、熟考を重ねる。

正直、この距離からもぐらだけを処理するのは可能だ。

ただし、あの『グランドタートル』が率いている以上、こちらの魔手を警戒し地面に潜りっぱなしの可能性すらある。

かと言って無視して『グランドタートル』と戦えば、どうしても地に足をつけて戦う必要がある二人には常に危険がつきまとう。

危険ではないが、面倒くさい。

それが、俺の今もぐら軍団に対して抱いている感情だ。


なんて考えているうちに、木々についている火は段々沈静化していく。

とりあえず、ある程度の足場は確保できた。考えながら魔手で倒木をぶっ飛ばし、落とし穴を埋めていく。

それにしても、なぜ『グランドタートル』本体は攻撃してこないのか。

その魔法を使えば、ここへの狙撃も出来るだろう。俺とシュウがいれば絶対に通らないが。


「ろ、ロイド。マズイよ、『グランドタートル』の魔力を見て………!」


「お?って………マジか、新たな魔物をまた味方にしてやがる………。」


魔力の流れを見ると、『グランドタートル』は闇属性魔力を周りの魔物たちに流し、服従させていた。

動かないのはそれが理由か。

それにしても、服従させる具体的な方法がわからなかったが、まさか闇属性を流しているだけとは。


……………ん?


闇属性を流しているだけ(・・・・・・)………?

これだ。


「『デコラーレ・ピュリファイ』!」


もぐらの魔物にぶち当てると、『マジックサーチャー』がもぐらの魔力が若干変わったことを教えてくれた。

そして、魔物本来の凶暴性を発揮して届きもしないのにピョンピョンはね始める。ぴょんぴょんするのは心だけにしろ。

地面に潜ろうとしなかったおかげで、サクッと魔手で処理できた。

よし、これだ。

浄化魔法の『デコラーレ・ピュリファイ』なら、洗脳を解ける。


「お前ら、降りるぞ。」

「「あ、うん。」」


近くの木に止まり、魔力を練る。

大事なのは、広範囲に薄くでも広げること。


「『デコラーレ――――――――


よし、掴んだ。一気に魔力操作を加速させる。


「――――――――ピュリファイ』!」


使ったのは、帯状ではなくマットのように薄く伸ばした『デコラーレ・ピュリファイ』。

これに物理的拘束力はないが、浄化作用はしっかりと残ってる。

地面から勢い良く飛び出したもぐらの魔物が『デコラーレ・ピュリファイ』をくぐり抜け、浄化される。

発狂したそいつに、さっきと同様魔手を突き刺した。

あとは、簡単な作業ゲー。


『くっ………!まさか小僧!もどれ、もどるのだ!』


俺が何をやったか気づいたようで、『グランドタートル』が焦り始める。

だが時既にお寿司。懐かしい。


「残念だが、こちとらまだまだ全然ムカムカするのが治まらねぇんだよ……っ!

八つ当たりだけどよ、全員ブチ殺す!『ストロム・ベルジュ』!」


逃げようとするもぐらを、ブスリ。

飛び出しかけたのを慌てて止めたため、動きはトロかったのだ。


「あぁ、すっきりした。」


『クソ小僧、いい気になりおって。

なら、次は空陸同時!』


先ほどの服従で手に入れたであろう駒を、一気に出してくる。

かなりの数だ。この森からかき集めにかき集めたに違いない。

だが。


「二刀流、『デュアルジョー』!」


「『カウンタークレイヴ』!」


「『ゲイル・クラーク』!」


残念、遅かった。せめてもぐらさえ残せればギルとシュウを木の上に縛り付けれたが、もう二人は足場を手に入れた。

そして、空中戦は概念魔法による距離の無視で俺の独壇場。

ここの魔物だけで、俺達を倒すのは厳しいってもんじゃない。

よし、殲滅だ。


「GYAAAAAAAAA!」


「BUOOOOOOOOO!!!!!!」


魔物の低い叫び声が、さっきまで木々の燃えるパチパチという音しかしていなかった空間に響き渡る。


『くっ、『ロックカノン』!』


「焦りが見え見えなんだよ!そんな稚拙な魔力操作で強力な魔法が撃てるか!『セイクリッドガード』!」


巨大だが、スピードのない岩の砲弾を完璧に弾く。

それを他の魔物に跳ね返してやった。

ズン、という音をたてて、悲鳴すら挙げれず魔物が潰れる。

それが最後だったようで、物の3分もせずに100体余りの魔物が全滅した。

一体一体が弱かったのもあるが、最大の敗因は。


「………お前の慢心、そして準備不足だ。」


『ぐぬぉぉぉぉぉおおおおおッッッ!!!!!』


姿は見えないが、声は憤怒に満ち、魔力が荒ぶる。


「さて、あとはてめえ一人だぜ!覚悟しな!」


『よくもコケにしてくれたな、小僧ども………!あの世で後悔するがいい………!』


『グランドタートル』の心底悔しそうな声が、響き渡った。

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