23話 やっぱり俺が忙しすぎる件
いつも通り目を覚ますと、約十人ほどの人が俺を囲んで立っていた。
あれ?俺何かしたっけ?めっちゃ睨まれてんだけど。
「起きるのが遅いっ!」
うわっ!すげえ大音量だな。近所迷惑だろ。ニスさんの声パネェ。
「いやお前何キョロキョロしてんだよ。今日見せてくれるんじゃなかったのか?煙玉を。」
あーっ。そうだ。何寝ぼけてんだ俺は。
「あ、すみません。寝ぼけてました。」
「全く、寝ぼけたなんてレベルじゃないぜ………。しかもな、俺らはお前を起こすために耳元で叫んだんだぞ?」
え、マジで?どんだけ熟睡してたんだよ、俺。さすがに疲れたのかな。
「ホント、すみません………。で、本題にはいっていいですか?」
「もちろんだ。というか早くしてくれ。もう少しでリーダーがキレる。」
何!?びっくりしてニスさんの後を見ると、リーダーが殺気をまき散らしながら腕を組んでいた。やべえ。なんか冷や汗流れてきたよ………。
「わ、わかりました。じゃ、外に行きましょう。」
早くここから出よう。というか逃げないと。リーダーの殺気が怖いし。
証人勢が外に出た所で、マッチに火をつける。
魔力の手で煙玉を持ち、話しかける。
「では証明を始めます。」
やることは簡単。ただ導火線に火をつけて投げる。終了。
逆にやることが多かったら使いもんになんないし。
俺は実用性を重視する男なんだぜ!
という訳で導火線に火をつけて放り投げる。
そこから煙がもくもくと出てくる。
うん。これも成功だな。前の3つと同じように作ったから失敗しないとは思ったけど。
「どうですか?」
後でさっきまで殺気を出していたリーダーを見る。
「……………………。」
「あのー。」
無言は良くないぜ。
「はあ。」
「な、何かマズイことしましたか?」
「いや、なんか命懸けで追手の目を必死でくらましていた俺らの苦労は何だったんだ、て思ってな。それで他のやつも固まってるんだろうよ。」
確かに。これ見たら馬鹿らしくなりそうだ。
便利すぎると逆に順応に時間がかかるらしいからな。
「で、これにはなんか欠点はあるのか?」
「一応あります。火がないと使えないことですね。」
「おいおい、そいつは大問題じゃないか!火魔法が使えないといけないってことか?」
そうなのだ。これは火がないと使えない。俺もこれは大問題だと考えた。
だけど、ちゃんと抜け道もある。
「いえ、大丈夫ですよ。ほら。」
そう言いながら、俺はある金属を創る。
「何だ?それは。」
「火打ち金というものです。これを硬い石で打ち付けると火が出ます。」
「そんなものがあったのか!ちょっと貸してくれないか?」
「どうぞ。あ、後この石を打ち付けてください。」
「どれどれ。せいっ!」
―――――パチンッ!
「マジかよ。本当に火が出やがった!」
火というよりは火花だけど。
「でもこれじゃ両手が塞がるぞ?」
「煙玉を口でくわえて発火させたら火打ち金等は捨てればいいじゃないですか。」
「成る程。完璧だな!そう思うだろ、お前ら!」
「いや、もう凄すぎてなんと言えばいいか…………。」
「んじゃ、次の集会でこれを配布しよう。ロイド、頼めるか?
多分これが作れるのはお前だけなんだろう?」
なんか俺が雑用係化しているような………。てそうじゃなくて。
たしか次の集会は1週間後だよな………。
「やります。何個くらい必要ですか?」
「うーん。100個くらいか?」
「ちょっと時間が足りないですね………。出来る限り頑張ります。」
「そうか……。まあいい。一応基地のやつ全員には伝えとくぞ?」
「どうぞどうぞ。」
「オッケイ。基地に戻ろう。」
「「「「はい!」」」」
基地に戻ると、やっぱり皆運搬中だった。
「皆!聞いてくれ!大事な話だ!」
開口一番、リーダーが叫ぶ。
すると、基地の中がざわざわしだした。
「まず、ロイドが煙玉を完成させた!」
「オオオッ!」
「本当にやったのか!」
「よっ、小さな天才!」
なんか煽りまで来てるんだが。まあいいや。
「でだ。コイツはちょっと特別な道具を使う。
だから次の集会でその説明会と道具の配布をする。いずれ来る取り締まりでの生存率を上げるためにも、是非とも次の集会は出てくれ!以上!」
ちょっと待て。取り締まりってなんだ?
という訳で隣にいるニスに聞いてみる。
(取り締まりってなんですか?)
(知らないのか?何年かに一度あるのだが、警備兵が一気にスラム内の犯罪者を探んだ。その時のことを取り締まりと俺らは呼んでいる。
取り締まりが起きると沢山の孤児が捕まるから皆必死で逃げるんだ。)
(へえ。有り難うございます。)
成る程。街もやられっぱなしじゃないってことか。
んじゃ、俺も捕まらないようにしないとな。
出来れば体が少しでも発達してから起きてほしいな。
はあ。それよりも今から煙玉づくりしないと間に合わないや。
未だがやがやしている基地の中、俺は騒ぎが逃げる意味も含めて外に出た。
あ、導火線基地の中にあるんだった。