22話 煙玉完成させたった
「ふう。」
俺は、目の前にある煙を見ながら深く息を吐いた。
良かった。
「完成したぜエエ!」
遂に完成した!煙玉がっ!
ここまで大変だった。
日本にいれば味わなかったであろう苦労(小麦粉とか)がたっぷりだったし。
なんかもう一日で終わった感がゼロだ。
因みにこの煙玉は導火線に着火すると煙を出すタイプだ。
試しに3個に着火させてみたが、全部煙を出したので文句なしの成功の筈。
後はこれらを皆に配らなければならないけど、数が足りないし明日一気に作ろう。もう夜だし。
あ、そうだ。一応報告しといたほうがいいよね、これ。
リーダーとか先生とかにはいっておこう。絶対これは欲しがるはずだし。
じゃあ一個は証明用に作らないとなあ。ぱっと作っちゃうか。
まずは薄いアルミニウムを出す。
続いて、粉々にした硝酸カリウムと砂糖を3対2の割合で混ぜる。
後はそれをアルミニウムで包んで導火線を挿すだけ。
滅茶苦茶簡単なのだ。速攻で終わる。
よし、じゃあ基地に戻ろう。
基地に向かって歩き始めた時、大事なことを思い出した。
導火線作りすぎちまった。着火したらえらいことになっちまうな。
もしも起きたらシャレにならない。スラムが火の海になって大惨事が起きるだろう。もちろんこの基地も。
どっか保管出来る場所ないかなあ。
湿ってなくて、尚且つへの火の気無い所。
落とし穴の中は却下。雨が降ったら湿る。
基地の中も却下。最近は寒くなったので焚き火をしているからだ。
因みに酸欠にはならない。換気は完璧にされてる。
となると昔俺が寝てた部屋か?いや、あそこには例の双子がいる。
下手にいじられると何が起こるかわからない。火薬使ってるし。
あ、そうだ。燃えないもので包めばいいじゃん。我ながらナイス。
確か燃えないものは酸化物とかだったな。
じゃあ石でいいか。いざとなったら『アース・ホール』で消せるし。
それに確か土魔法の基本は石だから俺と同じくらいの大きさの石なら俺の魔力の少なさでも大丈夫。
というわけで早速導火線を集めて石で包む。
そのまま石を魔力の手で転がしながら基地へ。完璧な球には出来なかったからちょっと疲れるけど。
ふう。やっとついた。
「お、お前!何だそれは!」
基地にはいった瞬間、怒鳴られた。
びっくりして顔を上げると、ガットさんが驚いた顔でこっちを見ていた。
「あ、これ煙玉の材料の保管庫です。」
「保管庫って………。これがか?」
「確かにいびつな形ですけどね…………。そうなんですよ。」
魔法で作ったんだししゃあない。
「そうかい………。で、煙玉は完成したのか?」
「ちょっと待てっ!お前ら煙玉ってなんのことだっ!?」
―――――ビシッ。
「グホオッ!?何すんだニス!?」
何だっ!?この鋭いツッコミはっ!
ガットさんがツッコミでめっちゃ顔をしかめているぞ。痛そうだな。
このニスって人手加減というものを知らないだろ。
まあいいや。答えてやろうではないか。煙玉について!
「煙玉っていうのは名前の通り煙を出す玉です。
食料をとる時、もし逃げそこねた場合に手助けしてくれるものですよ。」
「そんぐらいはわかる。たしかに皆の逃走率も上がるだろうよ。
でも俺が聞きたいのはそんなことじゃない。今の話の流れだと君は煙玉を作っている、というように聞こえたんだけど。」
「そうですよ。今日完成しました。これです。」
そう言って煙玉を取り出す。
なんか広場の人がびっくりしたような声を出している。
「これが?たしかに光っててちょっと綺麗だけどそんな煙を出すような物には見えないぞ?」
綺麗、か。確かにアルミニウムってこの世界からすれば綺麗かもな。
「さっき試してきましたが、煙を出しました。」
「本当か?と言うか本当だったらめっちゃ助かるんだが。」
「何なら証明します?外で。」
「いや。今日はもう遅い。明日やってもらえるか?」
「そうですね………。わかりました。そうしましょう。」
「んじゃ、明日実験やるからな!見たい奴はさっさと寝ろよ!」
「「「オッケエエイイイ」」」
超ハイテンションじゃん。
確かに生存率が高まるから盛り上がるだろうけどね。
今日の寝る準備はがやがやしていた。
何人もの知らない人が俺に声をかけてくれる。
ぶっちゃけ早く寝たいんだけど。日本人としての感性がそれを許さない。
そこから一時間後、やっと俺は眠りにつけた。
意見、感想宜しくお願いします。