232話 この世界メイドまで戦えるとかw
ブンドル家を無音で抜けだした俺は、その足で直接ニア家と向かう。
因みに、暗闇でも眼が見えるのはアリエルの魔法のおかげだ。
流石闇魔法。燃費悪い以外に弱点ないんじゃないか。
―――――――――――すーっ
そんなことを考えながら、俺は『マジックガード』で移動する。
さて、ニア家はどんな風に煽るか。
ブンドル家は諜報員でこっち探ったりしてきたから好き放題やれたけど、ニア家は確証ないんだよな。
(あと少しでニア家につきますよ)
アリエルからテレパシーが届く。
成る程、少し前にあるデカイ家か。
少し加速し、窓に俺は手をついた。
うん。
(この家の窓、内側からしか開けられないな)
(それは困りましたね。どうします?)
(ほらさ、闇属性なんだし解錠魔法とか)
(闇属性をなんだと思ってるんですか。流石に無理です)
(じゃ、壊すしか無いな)
まるでコソドロの手本のような会話だな。
そう思いながら、カナルの防音魔法を待つ。
―――――――――――――――ブワッ。
来たな。
俺は魔手を5本合成して、窓を殴りつけた。
―――――――――バリッ!
とんでもない音がしたが、防音魔法のおかげで聞こえたのは俺だけ。
ってか、やっぱりこの世界のガラスは脆いな。まあ、現代日本と比べるのも酷か。
そのままするっと入り込み、華麗に侵入。
(ガラスを割って華麗とか素晴らしい思考回路ですね)
(うるさい)
魔力をそんなことに使うな勿体無い。
そうツッコみながら、俺は魔手にバケツを持たせながら天井に張り付いた。
さあ、なんて書こう。
俺がやったってわかって、尚且つ相手が起こりそうなこと。
あ。
ってか、もうなんかデカデカと落書きするだけで怒らせること出来るよね。
よし。
「イレギュラーオルフェン参上!(*´ω`*)」
これは(*´ω`*)ハヤル
城塞都市で未曾有のブームが起こることまちがいなしだな。
シュウとギルを巻き込んだ感があるけど、5人で戦えばなんとかなるだろう。
(あ、イレギュラーオルフェンってデカデカと描いちゃったけど噂とか大丈夫?)
(大丈夫でしょう。そもそも庶民に家に忍び込まれるとか大恥ですし。)
(そいつぁ良かった。)
あとは相手からのアクションを待つだけ。
さて、ささっと帰ろう。
無音で窓に向かった、その時。
ろうそくを持った、メイドに出くわした。
「「!?」」
お互いにその姿にビビるが、俺のほうが行動が早かった。
(『デコラーレ・ピュリファイ』!)
叫ばれる前にその喉を塞ぐ…………!
――――――――――――――キン!
「防ぐってか!?」
多少の護身術はあるようだな。何故この世界の執事はメイドはこうもスペックが高いのか。
「キャアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
ナイフで俺の魔法を防いだメイドが、直ぐ様他人を呼ぼうと叫ぶ。
うげっ。
(マズイ!)
(いえ、まだ大丈夫です。奇跡的にですが、彼女は今防音魔法の中にいます。)
(そいつはありがてえ!魔手装甲展開!『ウィンド・ブースト』!)
高速で接近し、拳を振るう。
ナイフで防がれるが、一応こちらもCランク冒険者。
武術の心得があるとしても、そう簡単に普通の人には負けない。
すぐさまキックを放ち、飛ばす。
そして、音が漏れないよう俺も一緒に飛ぶ。
マウントを取った俺は、サッとエーテルを取り出し彼女に嗅がせた。
彼女が暴れるが、音は全く漏れない。
30秒ほどすると、彼女は完全に気絶していた。
ビバ、科学。
念のため『アンチポイズン』もかけといたので、アフターケアも万全。
襲われる前よりも健康にしてくれるとかなんて義賊だ。石川露伊度右衛門万歳。
(さて、巫山戯るのもやめて逃げるか)
(エーテルなんてよく準備してましたね。あれ、もしかしてクロロホルムとかも使えます?)
(出せるけど、あれ実際は気絶するまで5分位かかるし、下手すりゃ腎不全で人死ぬからな。ドラマとかはそうやすやすと信じちゃダメだぜ)
(そ、そうですか……)
身を持って体験したからな。
何で興味本位でクロロホルムとか嗅がせるのあいつら。
殺す気か。もう捕まっちまえよ。
今はもう会えない悪友に思いを馳せながら、さっき破った窓から飛び降りる。
ミッションコンプリート。途中思わぬアクシデントもあったけど、なんとかなってよかった。
(そのまま帰還して下さい。
最悪今夜から襲撃が来るかもしれないので、私達もそちらの部屋に泊まっていいですか?)
(寧ろそうしてくれ)
カナルもアリエルもめちゃくちゃ強いからな。
特に、カナルの風魔法は『マジックサーチャー』の効かない『唸る水流』を相手にするのには必要不可欠だ。
テレパシーを交わしている間に、俺も二人と合流する。
「帰ってきたか。
さて、明日から本番だな。」
「頼むぜカナル。『唸る水流』の感知はお前が頼りだ。」
「となると、俺は当分家には帰れないか……。」
「なにかマズイんですか?」
「いや、大丈夫だ。ただ、一応家に置き手紙だけ残しておく。」
カナルはそう言って、ポケットからメモ帳を出しささっとなにか書いて家の方向に投げ飛ばした。
「何やってんだ?」
「風で家に送っておいた。これで当分は大丈夫だろう。」
「お前の風魔法も大分チートだな………。」
この戦力じゃもう俺達の家が要塞化するんじゃねえか……。
戦いの余波でまた壊されるであろう我らが家に、合掌。
 




