227話 彡⌒ミ
ポケモンのジャパンカップで投稿が遅れました。
すみません。
(よし)
暴虐的なその力を前にして、俺は覚悟を決める。
(おっさん)
(ククク、言われなくともわかっているぞ)
あの力に対抗できるのは、おっさんしかいない。
例え体を乗っ取られようと、すぐに取り返せばなんてことはない。
(え!?ちょっと二人共何を言っているの!?)
ショタが驚いたように声を荒げる。
なんて言ってる間に彼女から漆黒の槍と氷の大砲が俺と先生を襲う。
「『セイクリッド・ガード』!」
氷の大砲は『セイクリッド・ガード』で弾き、漆黒の槍はアダマンチウムで無効化する。
その時。
――――――――――――ピキッ。
「え゛っ」
アダマンチウムの破損に冷や汗をかいた俺は、またテレパシー的な何かを再開する。
(だけどな、生き残るにはこれしか無い)
(その通り、という訳だ)
(その先に何か犠牲が伴うわけだけど?)
(――――――――――――)
確かに、な。
(けど。
正直言って、また死ぬのはまっぴらゴメンだ。)
(はぁ、まあそこまで言うのなら仕方がない。
僕も出来る限りのことをしてあげるよ。ね、『サタン』?)
(うぐお!?
貴様、どこで真名を………!)
突然、おっさんが苦しみだした。いや、サタンか。
(そんなことはどうでもいいでしょ?
で、信夜君。今見せたように、このサタンは今僕に手綱を握られている。
これで、一時的に制御可能さ。
ただ、君にも副作用はあるんだ。どうする?)
(死にさえしないのならそれでいい)
(わかった。じゃ、いくよ)
(クッ………折角のチャンスを………!)
体から、力が溢れる。
昔とは違って、出るのは火と雷だけ。
これが、制御してるってことなんだろう。
直後、腐ったような異臭を放つ霧が飛んでくる。
これを、雷でかき消した。
(俺の元の属性は使えないか)
(仕方がないね)
だが、ないよりはマシだ。
最悪、全力でサタンを解放すればいい。
拳を握り、突き出す。
それだけで炎と雷の入り混じる竜巻が生み出された。
しかし、それも黒い氷によって防がれる。
スペックは、ほぼ互角。
恐らく、あっちも全力では無いのだろう。
なら、ここでアドバンテージを作らないとな。
(魔手展開)
物理的に、手数を増やす。
「さあいくぞ……………。
オラオララッシュ!!!!!!!!!!」
心のなかでオラオラ言い始める俺を、彼女は冷めた目で見る。
しかし、この拳の圧力は馬鹿にできなかったようで、全力で防御に力を回す。
少しずつ敵の体力を削るのを拳で感じながら、俺は更に考えた。
(決定的な一打が作れない………!)
(ならば私の力を……(だめだよ。この状態で信夜君が更に負荷を負ってしまえばそれこそ死へ直結だ)チッ)
やっぱダメか。
なら、火薬を使うしか無い………!
俺の手が、腰に付いている火薬に向かう。
その時。
「『ディストラクション』!」
彼女の背中が、文字通り抉れる。
防御用に展開されていた黒い氷をたやすく割って。
「ぎ、ギル!待ってよ!」
「援軍、到着だな。」
俺は、やってきたギルとシュウを見てニヤリと笑みを浮かべる。
それにしても、二人の成長っぷりが凄いな。
特にギル、大剣2つ担いでいるし。
「…………!」
背中の傷を治した『唸る水流』が、こっちを睨みつける。
「あ?どうしたねーちゃん。怖えぞ?」
「それを言うならロイドも怖いんだけど………。」
二人の軽口の返答として帰ってきたのは、数えきれない氷の矢の弾幕。
しかし。
「『ワイドシールド』『ストーンシールド』」
二枚の壁が、それを凌ぎきる。
次々と出てくる壁を前に、『唸る水流』はなにか考えこむような顔をして
――――――――――――ヒュン!
………唐突に、消えた。
恐らく、闇属性魔法の何かだったんだろう。
「ふぅ、どちらにせよ助かったぜ。」
「感謝しろよロイド!」
(チビ助、ありがとよ。じゃあ解除してくれ。)
(それを言うなら君もじゃないか。まあ、それは置いといてと。『解除』)
体から、力が抜ける。
いつも通りの魔力が体を流れ始め、火と雷が霧散した。
と同時に、視界がブレる。
(…………え?)
コツン、と、頭が床に激突する。
そのまま、俺の意識は沈んでいった。
「ふおおおおおお!」
「お!ロイドが起きたぞ!」
奇声を上げながら飛び起きた俺は、周りを見渡した。
ギルとシュウが、こっちを見ていた。
「ねぇロイド。」
「なんだ?」
シュウが俺に質問をした。
「さっきのあれ、もしかして勇者の時の?」
「………そうだ。
力は控えめにしたけど。
そういえば副作用があるって行ってた割にはどこも悪くないな。」
一番怖かったのは魔力に何かしら制限がつくことだったが、それもない。
「いや、ロイドの前髪、一部黒くなってるぜ。」
「え?」
ギルに言われて髪を触ってみると、パラパラと髪が崩れた。物理的に。
(え、炭化!?禿げるの!?9歳にして禿げちゃうの俺!?)
(いや大丈夫だよ。ちょっとずつだから。
あと、副作用だけど君の魂が少し削れたよ。時間でしか回復しないから気をつけてね。)
(お、おう。)
良かった、禿げはしないようだ。
「で、ロイド。昨日何であんなことになってたの?」
「知らん。いきなり寝こみを襲われた。
そして皆二日酔いだったせいで俺と先生しか戦えなかった。」
「なにそれ………。」
そうだよな。ホントナニソレだわ。もうあいつら酒自重しろよ。
「前にもこんなことあったよな。
あの時はもう依頼者とっちめれたみたいだけど。」
「ああ、ジルフォン家か。あの時はカナルにお世話になった。」
「でも、多分今回は依頼者違うよね?」
「だろうな。流石に二度目はカナルが許さない。
………よし、情報収集を始めようか。依頼者をとっちめるぞ。」
「アテはいるのかよ?」
「それこそ貴族様に頼み込もうぜ。」
「「おお!」」
「そうと決まれば、早速朝食を食ってイグニスやカナルを訪ねよう!」
俺達は、支度を始めた。




