21話 俺氏、無駄に苦労する
基地から裁縫道具を取ってきた所で、煙玉の作成を再開する。
ついさっき黒色火薬を作り終わったので、次は導火線だ。
というよりも導火線を作るために黒色火薬を作ったんだけどなあ。
けどまあ導火線はすぐ終わる。
裁縫道具にある糸を撚り合わせてその中にまんべんなく黒色火薬の破片を入れていく感じ。
うん、やっぱりすぐ終わるね!
そう思っていた頃もありました。
全ッ然糸が撚り合わねえ。なんか接着剤とかが必要だったのか?
でもこの世界に接着剤なんかないよな………。
あ、そうだ。のり作っちゃおう。でんぷん糊なら作れる。
材料は水と小麦粉だけ。小麦粉は小麦をすりつぶして作っちゃうか。
という訳で基地にレッツゴー。誰か小麦持っていないかなぁ。
基地に入ると皆集中してものを運んでいた。
やべえ。めさ聞きにくい。俺邪魔になるだろ。
ええい!これは人の命を救えるものだ。こんな所で戸惑ってたまるか!
少しサボり気味な人に声をかける。
「小麦ってありますか?」
「ああ、小麦か、あるぜ。ってかなんで小麦がほしいんだ?」
「ちょっと実験に必要で。」
「いや、待て。大事な飯を実験に使うのか?正直無駄な気がしてならないんだが。」
「いえ、とある僕らの命を救える道具を作るのに必要なんです。」
「んなこと言ったって実験というからには失敗するかもしれねえんだろ?
勿体ねえじゃねえか!」
硬いなあ、この人。確かに飯は大事だけど煙玉はかなり有用になるはずなんだよ。もうこの際煙玉を作ってることを言ってみるか。
「実は今僕が作っているのは煙を出す球なんですよ。」
「そういうことが問題なんじゃねえ!失敗した時に無駄になる小麦が勿体無えからやめろってことが言いたいんだよ!もう仕事の邪魔になるからどっか行ってろ!」
これがサボり気味だった人のセリフなのだろうか。
この際黒色火薬を見せちゃうか?
そう考えて胸ポケットから黒色火薬の一番起きいい破片ととマッチを取り出す。
「これを見てください。なんだと思いますか?」
「はあ?どっかの石ころだろ?」
「違いますよ。これはある爆発物です。」
「爆発物?これがか?おいちょっと貸してみろ。」
持ったって何もわからないだろうけどなあ。
そう考えながらも一応破片を手渡す。
「どうみたって石にしか見えんけどなあ。まあいいや。
お前の話が本当ならそれを爆発させてみろや。」
「良かった。興味を持ってくれたんですね。
では爆発させるので一回外に出ます。」
そういえばまだ実際にこの火薬を爆発させたことはなかったな。
てことは失敗するかもしんないのか。
失敗したらどうしよう。
俺はどうもせっかちな自分の行動を反省しながら外に出た。
―――――ボコッ。
「なっ………!?本当に爆発しやがった!?」
ふう。良かった。爆発してくれて。
俺は少し前にある小さな穴と少しだけでた煙を見て安堵していた。
俺が使った黒色火薬は約2グラム。
かなり少なかったが、ちゃんと爆発してくれた。
もしこれが小さすぎると爆発せずに強く燃えるだけだったのだ。
「これでいいですか?出来れば早く小麦を貰いたいんですけど。」
「わかったよ………。疑った俺が悪かった。小麦をやるからちょっと来てくれ。」
そう言い、彼は基地にはいった。
そういや名前聞いてなかったな。
「はあ。それにしてもなんで俺って小麦一つ手に入れるのにこんなに時間がかかるんだろう。」
そんなことをぼやきながら彼に続いた。
「やっと材料が揃ったっ!」
俺は小麦粉と水で作ったでんぷん糊、紐、黒色火薬の破片を並べながら
呟いた。
いやー。大変だった。
硬い人から小麦を手に入れた後、
リンさんに追いかけられて5分くらい逃げてたからなぁ。
先生がまた落とし穴を作ってくれなかったら捕まってた。
やっぱり女子は苦手だ………。
で、小麦粉を抱えながら外に出て、でんぷん糊を作ってやっとここまでこぎつけてたっていう感じだ。
因みにでんぷん糊は水と小麦を潰して作った小麦粉を混ぜて、
熱して冷ましただけだ。作り方は簡単だったんだけどな。
本当になんでいちいちこんなに時間がかかるんだろうか。悲しくなる。
と回想終了。
とりあえずでんぷん糊で紐をくっつけながら編む。
途中で黒色火薬を散りばめていくのも忘れない。
よし、完成。これもすぐ終わった。
やっと煙玉の段階にいける。
でも煙玉はたくさん作ることになるだろうから一応大量に導火線を作っておこう。
俺は、黒色火薬が切れるまで合計50本もの導火線を作った。
よっしゃ、今なら花火業界に片足突っ込める自信あるで………っ!
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