214話 俺氏死亡の危機
「せ、せみどらごにーと?」
「半竜人だわアホ。」
ニートはあかんだろニートは。ぶっちゃけそれはギルマスだけで十分だ。
「いや、お前らなんでそんな呑気なんだ?
お前ら、知らないかもしれないが竜人の絶滅したこの世界で半竜人は結構レアなんだぜ?」
「「「いや、知ってるけど俺ら《僕ら》って結構なんでもアリじゃん?」」」
「開き直っただと…………!?」
要らない間にイシスの加護ゲッツしてたりいつの間にか神様から同情かってたりするし、今更半竜人ぐらいじゃあんまし驚かないぜ。ハハハ。
俺達がそんな乾いた笑みを浮かべていると、急に窓をぶち破ってギルマスが落ちてきた。
「半竜人だとぉ!?いや、ひっさしぶりだなぁ!」
(((ホント自由だなコイツ)))
俺達の心の声が一致する中、ギルマスは一人ドヤ顔で説明し始める。
「半竜人っつうのはだなぁ、竜人の血を持っている奴が強力な龍の因子に触れることで発現する体質みてぇなもんで、体の鱗の強化、純粋な体力の増強、竜の血が強い奴はブレスも吐けるし、翼も生える。
まあ、お前の場合はブレスは吐けねぇな。翼はちっこいのが生えるかもしんねえ。
俺のチームメイトはコイツで一気に強くなりやがってよ、鳥属の獣人でもねえのに空を飛び回ってブレスを連射するバケモンになりやがった。まあ、俺の耐久力からしたら弱っちいもんだけどよぉ。」
「「「ご説明有り難うございました後はもうお帰りください。」」」
「ひでぇ!?ちょっと自慢くらいさせろy「うっひょお!ホントに翼が生えたぞ!」
ギルマスの悲痛な絶叫も、翼を生やしたギルによってかき消される。
哀れ、ギルマス。さあさっさと帰って仕事しようか。
「何でだ………折角良心で説明してやったのに………。」と呟きながら秘書にズルズル引きづられるギルマスを見ながら、俺は笑顔で手を振った。
わるい、ギルマス。
でも、いっつも涙目になっている秘書さんや従業員さんを見るとやっぱりお前がクズに見えて仕方がないんだ。
「ねぇギル、それで空は飛べる?」
ギルの背中に生えた小さな翼を見ながら、シュウが質問する。
「いんや全然。」
「その翼意味なくねぇか?」
グランさんがそう言うと、ギルが反論した。
「そう思ったんだけどよ、なんかこれ走るときに上手く使うとスピードが上がるし、ジャンプすれば風に乗れるぜこれ。」
「おお、いいんじゃないか?それ。」
ギルは、俺やシュウに比べるとスピードが足りていなかったからな。
パワーはおかしいんだが。
…………あれ、半竜人になったからもっとパワーが上がってんじゃね?
軽くホラーだわ。
某超次元サッカーゲームの、炎だろうとなんだって耐えるゴールネットだって破るんじゃないだろうか。
「いや、でもまだうまく使えねーんだよな。
ちょっと練習が必要かもしんねえ。」
「じゃあ、うちの訓練所使ってけよ。丁度今空いてるしな。
それと………。ロイド、シュウ、お前らも一応称号と加護を確認しとけ。
嫌な予感がする。」
「ハハハ。そんな簡単に称号なんか増えねえだろ。」
そう言って、俺は石に手をおいた。
いつも通り石が光ってグランさんの方にデータが流れる。
「相変わらず行動だけは早いな……………って!?うおおおおお!?」
「今度はどうしたよ。」
「称号が増えてやがる!
『上級悪魔の完全浄化』ってのと、『勇者との死闘を制した者』が『勇者を二度制した者』に変化してやがるぜ。」
「へえ、因みに効果は?」
「『上級悪魔の完全浄化』は闇属性の強化らしい。
『勇者を二度制した者』は光属性の強化に加えて消費魔力の減少らしいぞ。良かったな。」
「へえ、『上級悪魔の完全浄化』は要らねえとして、『勇者を二度制した者』はいいな。
シュウも確認しといたらどうだ?」
「そうだね。よっと。」
シュウも、石に手を触れる。
俺がデータを見るグランさんの顔を見ると、見事に顔が真っ青になっていた。
「グ………グランさん?」
「…………お前ら、どうかしてるだろ。」
「「え?」」
「だから…………ッ、何だこの『地霊ノームの気遣い』っていう称号は!?
魔力手に入れてるぞてめえ!?」
「ファーッ!?」
シュウ、お前ここに来てとんでも無いものを発現しやがったな!?
急いで『マジックサーチャー』を展開すると、シュウの中に魔力があるのが確認できた。
「………………でも、俺より魔力すくねぇし、土属性一色だな。」
「ああ、そうなんだ。残念。」
「魔力がない奴が魔力を手に入れること自体が珍しいんだがな………!?
しかも、それ称号によるもんだから魔力増えたりするぞ。」
「なん……………だと!?」
ここに来て、俺のアイデンティティの危機が訪れただとぉ!?
※戦闘力インフレは起きません




