211話 対ドラゴン+α ラスト
翌々調べてみたら冬休み昨日でラストでした。
唐突ですが、更新ペースが元に戻ります!
大体週一から週二になるかと思いますが、今後とも宜しくお願いします。
どこのリトル◯ックだってくらいの、力強いアッパーカットが勇者の顎に炸裂した。
副団長の言った通り、鎧のない所は確かに脆いな。
宙に浮いた勇者を、回し蹴りで更に高く打ち上げながら俺はそれを確信した。
『――――ッ!』
喉を焼かれた勇者が、声にならない声を上げて体制を立て直そうとする。
まあ、させないけど。
「(『マジックガード』)うらっ!!」
『マジックガード』を足場にして飛び上がった俺は、地面に叩きつけるようにぶん殴る。その衝撃で聖剣が手から離れたのを見て、俺はニヤリとした。
落下する勇者を追いかけるように『マジックガード』で足場を作り、俺も急降下した。
「そろそろチャージできたかなぁッ!『クリスタ・ルーン』!!!!」
両手で『クリスタ・ルーン』を持ち、それを勇者の喉に向ける。
ギャリリ、音を立てる茶色の槍が心なしか頼りに見えた。
「さァ、死のうか!」
俺が両手を突き出し喉を突き刺す直前、勇者は何かしらの手段で防御しようとしたが、その程度で止まるほど『クリスタ・ルーン』はしょぼくない。
軽く障壁を擦り潰し、勇者の喉にそれを突き刺した。
――――――ギュリリリリリリリリ!!!!!
さて、ここらへんでぶっちゃけちゃうか。
俺は、コイツを殺す気まんまんだ。
「アハハハハハハハッッ!!!!!」
俺らしくない、狂ってる?
ハハ、ご自由に。
俺は、コイツを殺したいほど憎んでいるからな。
だってそうだろ?
コイツは、俺の親友を殺したんだから。
これは、その敵討ち。
「で、そろそろ悪魔さんも出てこないかなァ?」
表向きはそんなことを言いながら、俺は更に手を推し進める。
このクソ勇者、無詠唱の『ヘイレン』で凌いでやがんな。
魔力装甲は解いているので魔力的には問題ないが、時間がかかるのは俺の評判的によろしくないかもしれない。
俺は、そのままアダマンチウムを喉に突き刺してあげた。
これでもう『ヘイレン』は使えまい。
俺は、もう一度両手をかざし、『クリスタ・ルーン』を展開する。
今度こそ――――――!
――――――ピュウン!
聖剣が、勇者を守るように飛んできたのを察知した俺は、その剣の腹を魔手で下に叩きつけた。
じっくりと傷めつけれないのは残念だが、これで終わり――――――――
「お待ちくださいッ!」
「うぐッ!?」
誰かの命がけとも言える突進に、俺は魔手で反撃することなく吹っ飛ばされた。
俺が顔を上げると、そこには顔を真っ赤にしてこちらを見る青年が。
「すみません、どうやら見たところ上級悪魔の気配が消えているようなので………。」
「な……!?」
慌てて確認すると、上空に魔力の霧があるのが確認できた。
逆に、勇者にはもういない。
「………マジか、『デコラーレ・ピュリファイ』。」
光の縄を振り、魔力の霧へ投擲。
蛇のように唸った縄は、勝手に霧に絡みつき、それを消滅させた。
クソ、勝手に消えやがって。これで大義名分が無くなったじゃねぇか。
内心では舌打ちをしながら、俺は笑顔を彼に向けた。
「そうですか!いやぁ、危うく勇者様を殺してしまうところでした。
いやはや、良かったです。」
全然よくねぇけど。寧ろクッソ苛立っているけど。
青年も俺に笑顔を返した所で、勇者が身動ぎを始めた。
「あっ!早く針を外さなければ!」
慌てたように青年が針を抜く。
返しのお陰で少し喉の肉が抉れたのを見て、青年の顔がかなり青ざめた。
ハハ、ざまぁみろ。
慌てて水属性の『ヘイレン』を青年が掛け始めると、また、もぞりと動き出した。
そして。
「…………ァ。
ぁ、ア、ァ、あ、ァ、ァ、ア、ぁ、ァああああ。
あああああああああああああああああッッッッッ!!!
あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!」
治ったばかりの喉で、絶叫を上げ始める。
「いかん!勇者様が『聖剣開放』の反動を受けていらっしゃるぞ!」
何か偉そうな人達が集まり、一斉に魔法をかけ始めたり豪気による回復を試みる。
へぇ、あれ反動があるのか。
勇者がもう既に外傷が治ったのにまだ絶叫しているということは、激痛が反動か。道理で殆ど使おうとしない訳だ。
「う………ッッ。」
やべ、俺も魔力と体力を使いすぎたか。
『カラドボルグ』、いや、『エクスカリバー』を使うときに強引に補強した右腕も痛い。
フラフラとし始めた俺を、回復したらしいギルが抑える。
「流石ロイドだな!アイツをボコボコにしたんだって?」
「ワリィ、今ちょっとキツィ…………肩借りるぞ………。」
戦いが一段落ついたことによって、精神面にもジワジワ来たようだ。
俺は、どっと押し寄せてくる疲れに流れ、そのまま意識を暗転させた。




