表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/407

210話 自由の聖剣VS操られた聖剣

発光が終わったあとの勇者は、前のように翼を生やし、鎧を光らせ、そして聖剣に白銀の光を纏っていた。

そこから溢れる魔力は、見てるだけでも体に悪いほど。


チクショウ、勇者め、ふざけんな死ね。


『は、ハハハッ、何だこの力は!

この我を持ってしても精神の最深部にいなければ害を受けるほどの力!

負ける気がしれんなぁッ!!!!』


勇者の高笑いとともに、聖剣がふられる。


「まずぃ、『クレッセントスラッシュ』だ!」


狙いは、体力を使いきったギルマス。

しかし。


――――――――――――ガシィッ!


「いってぇ!!!」


そう叫びながらも、彼は両手でしっかり受け止めた。


「おい、教会軍団!疲れてねぇんだろ、働け!」


いつもの自分の事は棚に上げて「働け」というギルマスに、教会のトップがオドオドしながら答えた。


「ゆ、勇者様に攻撃など滅相もない!」


「チッ、使えねぇな!」


ホントだぜ。


『カッカッカ、コチラにとっては寧ろ好都合!

さあ、飲み込まれろ!『ティアマトの嘆き』!」


勇者がそう叫んだ途端、後ろから全く同じ魔法が飛んでくる。


「…………………『ティアマトの嘆き』!」


「先生!?」


魔力を殆ど使ったはずの先生が、最後の魔力を振り絞り切り札を放つ。


――――――――――――ゴォッ!


『『セイクリッドガード』!

……………何だ、普通の魔法ではそこら辺の輩の劣化ではないか。

では、光属性でいくとしよう。

『ホーリーバースト』!」


先生に『ティアマトの嘆き』を食い破られた勇者は、次に光属性の広範囲魔法をぶちかます。

狙いは、後方で魔力回復をしている奴らか!


「『セイクリッドガード』!」


『ぬう!小賢しい小僧め、お主はこれでも喰らっておれ!

『スピリットマグナム』!」


「ガッ!?」


突如現れた闇属性魔法により、俺の体が吹っ飛ぶ。

と同時に『セイクリッドガード』が解除され、『ホーリーバースト』が後方へと降り注ぐ。


とっさにポケットにれておいたアダマンチウムを投げるが、『ホーリーバースト』は消しきれない。

ブレスもそうだが、アダマンチウムは拡散型の魔法には弱い。


幾らか弱体化されたとはいえ、まだ威力が十分残っている『ホーリーバースト』が後方へと突き進む。


しかし、それが後方に当たることはなかった。

『青盾』さんが、その盾で防ぎきったからだ。


「く……………っ!」


『惜しかったな。では、更に強くして放ってやろう。

『ホーリー「隙アリィ!『アサシンスタブ』!」グッ!?」


「副団長!?」


「コイツ、鎧は硬いが他はそこまで硬くねぇぞ!攻撃は団長とそこのピカピカ坊、ついでに多分ギルマスも防ぐ!お前ら、もう十分休んだだろ!死力を振り絞って突撃しやがれ!」


騎士の副団長がそう叫んだ途端、騎士の一部が丸で復活したと言わんばかりに立ち上がった。

と同時に、冒険者もやせ我慢をして立ち上がる。


『クハハハハ!何人来ようとも構わんぞ!』


勇者が高笑いをしながら不可視の斬撃を放ち始める。

が、それを防ぐように魔力と豪気の壁が展開された。

騎士団長と、ギルマスだ。


「本当に不死身だな君は!」


「いや実際キツイけどよぉ!頼られたらやるしかねぇじゃん?」


それを見た勇者が、不快そうに斬撃を辞めた。

そして、その手にあの魔法が展開される。


『蝿共が、全く鬱陶しい。

これで全て蹴散らしてくれるわ。『カラドボルグ』!!!!』


その手に現れたのは、俺のものよりも二回り大きい『カラドボルグ』。

そして、それを丸で自分の得物のように持ち始める。


「嘘だろ!?『カラドボルグ』を普通に扱うとか反則じゃねぇか!」


『カッカッカ、さあ、絶望しながら潰れるがよい!』


魔力がこれでもかとつぎ込まれた『カラドボルグ』が、振りかざされた。

慌ててアダマンチウムを投げるが、中和する魔力を上回る魔力供給により『カラドボルグ』は乱されることはない。

そして、『カラドボルグ』の剣身が横になる。

それに伴い勇者の体から放出される魔力が濃くなり、魔力に耐性のないものが倒れ始める。

あの『カラドボルグ』を中断させられる者も、防げる者も、多分いない。


俺は、ここで決心をした。

先程使った『カラドボルグ』の影響が残る右肩を魔手で補助し、そして手を天に掲げる。


――――――――――――ブゥン!


「『カラドボルグ』!」


横に凪いだ『カラドボルグ』に合わせるように、『カラドボルグ』をぶつける。


――――――――――――ボキボキボキ。


右肩全体が悲鳴を上げるが、構わず俺がその手を振り下ろした瞬間。



――――――――ズッ。



「「!!」」


俺の『カラドボルグ』が、綺麗に勇者の『カラドボルグ』は切り裂いた。

更に、俺の魔力切れによりこちらの『カラドボルグ』も消える。

一瞬遅れて、俺と勇者を中心に崩壊する二つの『カラドボルグ』が魔力の突風を放つ。


「「「うおお!!??」」」


『カラドボルグ』に対し構えていたギルマスたちも吹き飛ぶ。

突風が収まった後、その場に残れていたのは突風の中心地である俺と勇者だけ。


『貴様…………。その魔力をも切り裂く剣、まさか、まさか『エクスカリバー』に進化させていたとでもいうのか!?」


「『エクスカリバー』がなにもんかは知らねぇが、俺の『カラドボルグ』は元からこんなんだぜ。


あ、『エクスカリバー』を教えてくれたお前には一つお礼をしなくちゃな。

という訳で、コイツ(黒色火薬)のプレゼントだ!」


使いものにならない右腕は諦め、左に持った黒色火薬に火をつけて未だ呆然としている勇者の口の中に突っ込む。

はっと現実に戻った勇者は俺の左腕を噛み千切ろうとしたが、それを間一髪で躱す。


直後、勇者の口内から本日3日目の爆発音が響いた。


―――――――ボン!



『―――――――!!!』


「はは、いいなこの戦い方。悪魔、魔法は封じたぜ!」


激昂した勇者が、その聖剣をでたらめに振り回し始める。

けど、これくらいなら『ウィンド・ブースト』を掛けただけの俺でも避けられる。

コイツ、勇者の体をのっとっただけで剣術とか全然知らねぇな。

どうせ勇者の体に染み付いた剣術だけで闘ってんだろう。


だから。


(魔手装甲!)


魔力の回復した俺には、コイツは勝てない。

どんなに剣速が速かろうと、身体能力が高くても。

あの時死に物狂いでコイツの剣術を見た俺には、ある程度の予知が出来るからだ。

何の考えもなしにただ振られる剣なら、尚の事簡単に予知できる。

あの時は足りなかったスピードも、魔力装甲が底上げしてくれた。


「さあ――――――


空気を裂く横薙ぎをしゃがんで躱し、そして体のバネを使って懐に飛び込む。


「――――死にさらせ!」


喜びに口を思い切り歪ませる俺の左腕が、鎧によって守れていない顎を捉えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ