19話 この世界での覚悟
忙しい…………。
ここ一週間あまりネトゲが出来ないorz
「ファァァ~~。よく寝た~。」
素晴らしい目覚めだ。よく体を動かしたからかなぁ。
それにしても無事に下山できたんだな。魔物にあんなふうに襲われたから
また来るかと持っていた。その割には熟睡しちゃったが。
周りを見渡すと、どうやらいつも俺が過ごしていた部屋のようだ。
魔力の手でベッドから降りて、ドアを開ける。
すると、そこにはギーグさんと4人の少年少女が。
何をしにきたのかな、と見上げると4人のちびっこ集団(俺が言えることかどうかは考えず)は寝ていた。
まあそうだよな。怖かっただろうし。俺もあの時はどちらかというと、死ぬ恐怖を拭うために戦ってたような感じだ。俺元日本人だし。
まだ平常心で殺生を出来るような覚悟はできていない。これからは必要になりそうなんだけど。
それにしても本当に物騒だよな、この世界。集会してたら凶暴な生物が襲ってきましたとか洒落にならんわ。よくよく考えてみたらチートなかったら死んでたじゃん。こういうことも考えてチートをくれたのかな?魔王って。
と、思考がそれてしまった。
さっきからギーグさんまで何も言ってこないけどどうしたのかな?
「あのー。何かあったんですか?」
「はっ………。寝ちまった……。ってロイドか?おい、お前ら!起きろ!」
いや、あんたも寝てたんかい!立ってるから起きてると勘違いしたぞ!?
「へ?あ、寝ちゃってたーーー。ってええ?ロイド君!?」
なんかギーグさんと同じようなリアクションだ。つか皆俺のことを見てビビんないでくれ。確かに狼3体を殺したが、ちょっと心へのダメージが大きい。
「ふぇ?」
「どうしたの?」
「寝ちゃったーーーー。」
今度は3人立て続けに起きたよ。なんか仕草が可愛い。
「すまん、ロイド。本当は礼を言いに来たんだが寝ちまったっぽいな…。」
苦笑しながらギーグさんが言った。なんかお爺さんを襲おうと言ってた人とは思えないな。俺が起きるまで待ってくれるなんて。
「いえ、僕が起きるまで待ってくれて有り難うございます。」
「いやいや、命の恩人なんだ。当たり前じゃないか。
ロイド。ありがとうな。」
「「「「ありがとう!」」」」
わお。凄いな。そういえば確かに俺は命の恩人になる。
生き物を殺しちゃった罪悪感があったけど、それでも人を5人も救えたんだ。
なんか勲章でも貰った気分だな。
「どういたしまして。」
「もう俺達はこれからやることがあるから行くよ。じゃあな。」
「「「「じゃあね~。」」」」
全員戻っていったか。それにしてもなんか人が居ないな。
いつも居るはずの雑用係の人たちまで居ない。
なんか今日あったっけ?
『…………明日の夜八時、決行しよう。』
ここで、昨日聞いた言葉が思い出される。
まさか、と思って窓を見ると、見事に真っ黒な空だった。
といことは俺は一日以上眠っていたのか?
まずい。このままでは一人のおじいさんが死んでしまう。
俺は、歯をかんでギシリ、と鳴らした。
さっき出て行ったギーグさんたちを追いかけようと思ったが、暗すぎて無理だ。光属性で明かりをつけながら行けば見つかるだろうが、もし明かりが警備兵などに見つかれば孤児全員がただでは済まない。
それに今更俺が言っても何も出来ない。
第一お爺さんを襲うといった時に俺は反論しなかったじゃないか。
本当にどうすることも出来ない自分に、俺はもう一度歯をギシリ、と鳴らした。
「戻ったぞー。」
リーダーの声だ。手には沢山の作物がある。あれはキャベツだろうか。
俺は、自分の無能さを実感した後、この世界について考えた。
この世界、特にこの孤児という社会では、まさに弱肉強食を絵に描いたような関係が築かれている。
狼が襲ってきた時に俺が逆に殺したように、力があれば身を守れる。
逆に力がなければお爺さんのように奪いつくされて死ぬ。
だから、俺は殺生をすることを覚悟しなければならないのだとわかった。
と同時に、また死ぬことへの恐怖を強く持った。
もう生きるための殺生だけは、迷わず行う。
それが、この世界で転生をした俺が覚悟しなければならないこと。
その代わり、無意味は殺生は絶対にしない。
まさに、「頂きます」と「ごちそうさま」だ。
だから、俺はリーダーにこう返す。
「おかえりー。」
と。




