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16話 服の偉大さ

話が思いつかず書けませんでした……。


…………………。


「えーと、もう教えることはないとか、魔術師としてやっていけるってどういうことですか?」


「ぶっちゃけ君の魔法習得速度って常人の約730倍だからね。」


「な!?」


確かに魔法を1日で全部習得するのは常識的にもなさそうだ。

でもいくらなんでも730倍はないだろ。そんな2年も掛ける奴がいるか。

こんなに簡単だったしチート無しでも半年ありゃあ終わるんじゃないか?


「いや、普通魔力に慣れるだけでも一年は掛かるはずなんだ。

そこから支援魔法を一つの属性をマスターするのに最低四ヶ月掛かる。

その後攻撃魔法を一つの属性をマスターするのに最低半年。

変形魔法はまぁ魔力に慣れればすぐ使えるから時間はかからない。

君の場合光魔法を抜けば三属性あるから一年。魔法になれるのに一年ほどかかるから合計で二年掛かる。

それを一日で終わらせたから実質730倍だろ?」


長々とありがとう。それにしても大抵異世界の住民って計算出来ないよな?

なんで孤児ができちゃってんだろ。


「……………。」


「どうやらびっくりしてるみたいだね。」


先生が何か語りかけてくる。まぁ、確かにびっくりしていた。

でも今の俺にはもっと深刻な問題がある。


「僕、これから何をすればいいんでしょうか?」


そう。これから何をするかだ。さすがに幼いので食料は取りにいけない。

それをごまかすために魔法の練習をしていたのだがもう終わってしまった。

ちょっと違うような気がするが燃え尽き症候群なるものなのかもしれない。


「うーん。そうだね。とりあえず自分の格好を見てみたら?」


そう言われて自分の姿を見た俺は絶句した。

何故なら俺の格好は―――――



―――――捨てられた時に着ていた小さな布切れ一枚だったからだ。














「うわああああああああッッッ!」


数分間の間、俺は赤面したまま叫んだ。

考えてみてくれ。自分がもし下半身が半ば露出した状態で生活していたら。

しかもそれに気づかず走り回っていたら。

大半の人は大声で叫んでしまった俺の心情を理解してくれるだろう。

それにしても他の人は大抵寝ている中で叫んでしまったので誰か起きなかったかヒヤッとしたが、ぐっすりお眠りのようで誰も起きなかった。


「と、兎に角落ち着いて!とりあえず今日までの話で君の格好についてどうこう言ってる人はいなかったから。」


「そういう問題じゃないんですよ!自分で自分が恥ずかしいんですよ!」


「なんか凄いことを言ってる1歳児がここにいるよ………。」


「いいから何かいい方法を教えて下さい!このままだと恥ずかしさで悶え死にそうですのでっ!」


「悶え死ぬ?まぁ、いいや。そんなに服が必要ならリンに頼みなよ。

彼女だけだよ?この拠点で裁縫ができるのは。」


え、あの人?あの人なら絶対「繕ってあげるから抱かせて~♪」とか「ロイド君の臭い…………ゲフンゲフン」とかありそうだ。

でもいくらなんでも後者は無いか。だとしてもあまり頼みたくないな。


「他には本当に誰も居ないんですか!?裁縫のできる人は!」


「いないなぁ。強いて言うなら君かな?何でもやっちゃいそうだし……。」


最後のほうなんつった?聞こえなかったぞ?

それはともかく、自分で繕うか。そいつは考えつかなかったなぁ。


前世、俺はスクランブルエッグすら失敗するほど料理は苦手だったが、裁縫はそれなりに出来たのだ。少なくとも授業中は失敗したことがない。

簡易な着るものだったら出来る筈!いや、成功させてみせる!

魔力の手だったらそれなりに物を動かせそうだしな!


「やります!自分で繕います!」


「へ?君が繕うって?」


「はい!これでも自信はあります!」


「ハハハ。いくら君が凄いからってそこまでは信じないよ。多分君は疲れているんだ。もう寝よう。僕も眠いし。」


「いや、出来ますから!ああ、もう!わかりました。明日証明します!」


「うん。頑張って。おやすみ。」


うわあ。なんか適当にあしらわれた。てか普通に考えればそうか。

一歳児が裁縫するとかどんなホラーだよ。

もういいや。恥ずかしい思いをするのも嫌だしリンさんに繕ってもらうのも嫌だから何が何でも自分で繕ってみせるぜ!


俺は前世では絶対しなかったような決意をして寝た。


















目が覚めた。外の様子からすると3時半くらいかな?ここには時計がないから

わからんが。

ちなみ基地は地下にあるけど天井に大きな穴があって、そこから地上の光は差し込んでくるから中はそんなに暗くない。クルトにこの穴について聞いた時、穴の部分だけかなり時間を掛けたらしいのでかなり硬い金属が使われていると言っていた。


なんでも穴の周りにチンピラ(盗賊)が集まって滅茶苦茶重みのありそうなハンマーで殴って天井崩しを起こそうとした輩がいたらしいが、ビクともしなかったらしい。

無駄にハイクォリティな建物だよ、ここ。

とても孤児が集まっているような場所には見えない。

というか此処の人を前世のストリートチルドレンと一緒にしたら終わりなのかもしれない。魔法一つでここまでいくとかやべぇ。



とここまで此処の人のハイレベルさを語ったが、俺は今日証明しなければならないことがある。

裁縫だ。俺は前世では手袋まで編んだ猛者なのだ。

それを此処で活かさずどうする。今こそ拾ってくれた恩を返す時だ。

問題は長さの足りない指だが、魔力の手で突破する。

むしろ魔力の手の操作が良くなって一石二鳥だZE☆




決意を顕にした所で道具、つまり糸や布や裁縫道具を探しに走ることにしたのだが、見つからない。

先生はリンさんが裁縫を出来ると言っていたので、必ずどこかにある筈なのだが、見つからない。

が、よく考えてみたら当然のことである。

俺は、此処一年間ひとつの部屋にしかいなかった。

俺が探しものを出来るはずがないのだ。全体像もわからないのに。

仕方がない。他人に頼るしかなかろう。

少々後ろめたさを背負いながらも先生を起こしに行く。

、とその時、リーダー(ヤンキー)が起きた。ラッキー。聞いておこう。


「おはよう。こんな早く起きて何してんだ?」


!?なんか怖え。こんな普通の会話に寒気を覚えるとかどうなってんだよ。

本当にヤンキーでも通じるわ。


「ってロイドか!?なんでこんな朝早く起きてんだよ!」


「裁縫をやりたいなぁって思いまして…………。」


「え、裁縫だって?確かにそんな格好じゃ悲しいな。よし、じゃあリンに頼め。アイツなら喜んで教えてくれるだろ。」


リーダーまでリンさん任せかよ…………。まぁ確かに裁縫なんてそんなに必要なさそうだが。


「なんか前に追いかけられたので嫌なんですよ!おしえてくださ~いなんて言ったら襲いかかってきそうで。」


「あのリンが?まぁそれはともかく、リンに教えてもらわないんだったら誰にも教えてもらえないぞ?まさかもう裁縫が出来ますなんて言わないだろ?」


リンさんってまさかの真面目系キャラだったの!?

いや、多分無いな。うん。


「いや、そのまさかでもう裁縫が出来ます。」


「ハッハッハ。冗談がキツイなぁ。第一そんな小さい指でどうやってやるんだよ。」


「魔力の手でやります。」


「ああ、そういえば魔力をもう扱える100年に一度の天才だとかウィルが言ってたな。でもお前は裁縫を舐めてる。俺なんか「並縫い」って奴をするだけで指に何回も針を突き刺しちまったんだぞ?」


いや、いくらなんでも不器用すぎだろ。並縫いで失敗しまくる人とか初めて見たわ。というか地味に俺100年に一度の天才とか言われてね?

ま、いっか。


「ならば証明します。絶対証明します。何が何でも証明します。

だから、裁縫道具の場所を教えて下さい。」


「はぁ。駄々をこねられてもな………。仕方がない。

教えてやるよ。だがそんなに糸があるわけじゃないから無駄遣いすんなよ。つーかしたらぶっ飛ばす。」


やっぱ怖エエエエ!!!なんかスンゲエ怖エエエエ!!!!


「は、はい!宜しくお願いします!」


「オッケイ。じゃあ裁縫道具の場所を教えるからついてこい。」


「はい!」


ついていきますぜ、アニキ!そんな感じのノリだな、今は。












「ここだ。」


「へ?」


ビビった。でも仕方がない。なんたって外見はヤンキーにいきなり振り向かれて「ここだ」なんて言われたんだから。


それは置いといて、今俺がいる場所は、基地の中の共同就寝所だ。

沢山の人が身を寄せ合うようにして寒さをしのいでる。

因みに俺は赤ん坊なので寒くない。幼い子供は暖かいからな。俺勝利。


「すみません。裁縫道具が見つからないのですが。」


「そりゃそうだろうな。いつもリンが肌身離さず持っているし。」


リンさん?ここにいるのか?そう思ってよく見たらすぐ近くにいた。

灯台もと暗し。


「ということは彼女を起こさずそっと取れ、ということですか?」


「もし彼女がお前に本気で襲いかかっていた、というのならな。」


うわあ。難易度高っ。めっちゃ難しいじゃん、それ。


「わかりました。とりあえずやってみます。」


「頑張れよ。俺はこれから仕事があるから。じゃあな。」


なんかリーダーいい人だったな。人はやっぱり外見じゃない。心なんだ。

見た目は子供、中身は中二な俺が言えるかは別だが。


じゃあ、第二段階にとりかかりますか。

次はリンさんから裁縫道具を取らないとな。







手をそろそろと伸ばし、少女の布団の中に手を忍び込ませる。

どう見ても変態ですねありがとうございました。


いや待って。おまわりさん呼ばないで。

ただ単に魔力の手でリンさんが抱いてる裁縫道具を借りるだけだから!


とまぁ脳内で変な一人芝居をやっていると、裁縫道具が魔力の手に当たる感じ

がした。

できるだけ起こさないようそろ~りと裁縫道具を抜き取る。

ふぅ。心臓がバクバクなってるぜ。



「―――――んふ。」


!?今リンさんが声を出したぞ!?起こしちまったか?いや、大丈夫だ。

危なかったわ。


よし、裁縫道具が彼女の手の中から抜け落ちた。

そのまま音を立てないよう俺の手の中へ!



――――――――――ぼとっ。


重っ!意外に裁縫道具って重っ!

いくら俺が栄養失調な1歳児だからといってここまで筋力がないとは思わなかった!


その瞬間、寝てると思っていたリンさんの口元がニヤリと歪む。



「かかったな!」


し、しまった!罠だったか!


「くそ!くらえ!」


俺も急いでフラッシュを使う。



「く!ぐああああああ!目があああああ!」


今だ!ウィンド・ブーストで逃げてやる!


「な、何だ!?」



「警備兵か!」



「そんな!鈴が鳴らないなんて!」



あ、やべ。他の人起こしちゃった。

まあ近くで強烈なフラッシュたかれて尚且つ大声で叫ばれたら起きるよな。

よし、逃げよう。



「ちょっと待った。そこの君。ロイドだっけ?」


「説明してもらおうか。」


「!?な、何をですか?」


「何を?俺達の快適の睡眠時間を減らした理由を、だよ。」


早っ!状況把握早っ!くそ!逃げられねえ。

いや、待てよ。思いだせ、クルトを。

アイツは俺の危ないところを(一方的に)引き受けてくれたじゃないか!

リンさんだって出来る筈!いや、(一方的に)押し付けてみせる!


「リンさんが襲いかかって来きたんですよ!」


「ほう……リン。なんでだ?」


「コイツが私の裁縫道具を取ってきたからよ!べ、別に抱きたいとかそんなやましいことは考えていなかったんだからね!」


いや、明らかに考えていただろ。


「つまりお前も俺らの快眠を邪魔した一人だと?」


「あ……。」


「よし、あいわかった。皆準備はできてるな?」


「応!」


「んじゃ、我らの快眠のじゃまをするものに…………。」


「「「制裁を!」」」


「やめてえええええええ!」


「うっせえええええ!」



――――――――――ぼこぼこぼこぼこ。


数分後、そこにはボロボロの少女と必死で自らの傷を癒やす幼児がいたとかいなかったとか。



………………。いくらなんでもさ、一歳児をフルボッコにするのは外道すぎると思うんだ?














朝の騒動のおかげで、裁縫道具をまんまと隠し通すことに成功した俺は、

ひっそりと見つからないよう魔力の手で布と布をつなげて服を作っていた。

最初の頃は慣れなかったが、慣れると案外器用に動かせる。

魔力手のいいところは、間違えてはりを手にさした時でもほとんど痛覚がないところだ。ここ一年裁縫をやってないし、そもそも体が変わっているので、針を何回刺せばいいのだとか考えていたからこれは朗報だ。


それにしてもミシンがないのは面倒だな。ミシンがほしい。

こんなことなら仕組みを覚えときゃあ良かった。あ、でも材料ないか。


こんな他愛もないことを考えながら俺は目の前の布を繕っていく。









「出来たぞおおお!」


「「「!?」」」


裁縫を始めてから2日めの昼、俺は遂に服を完成させた。

大きさは少しデカイぐらいだが、これから成長するので問題なし。

しかも下着まで作れた。俺やべえ。


「本当に作りやがったなテメエ!?」


!!ああ、何だ、リーダーか。めっちゃ怖かったんだけど。


「どうですか、証明できたでしょう!」


「本当にやっちまうとは………。お前マジなにもんだよ!?」


「通りすがりの―――――孤児ですよ。(キリッ」


キマった。これは間違いなくキマった。


「………。」


ひかれた!?ドン引きされた!?すげえ悲しいんだけど!


「そ、それはともかく。これからはお前にも裁縫を任せてもいいよな?」


「どうぞどうぞ。なんぼでも引き受けますよ!」


魔力の手の練習になるしな。


「わかった。じゃあまずは…………。」


「「「「「「「俺(私)の服を直してくれ!」」」」」」



なんか一斉に言われた。なんか普通に20人くらい居ないか?



「「「「「「てことで、頼んだぜ(よ)!」」」」」」」


一気に大量の服が目の前に積まれる。ていうか女子の方々。あんたらに恥という言葉はないのか?


…………………。そのまま皆去っていった。


残されたのは俺と大量の服。


「ハハハハハハハ!もういいや。全部俺の修行の糧となれエエエエエエ!」



何かが俺の中で外れた。


改良点があれば指摘をお願いします。

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