168話 作戦会議
「アヤツと勝負ですかな?
それなら、魔力切れを待つのが一番確実ですぞ。」
俺達の話を聞いた『氷帝』さんは、聞き終わるなり直様アドバイスをくれた。
「おっちゃん、何で魔力切れを待つのがいいんだ?」
「あやつは『地霊ノームの加護』を持っているからですぞ。」
「ラヴィーネさん、よくわからないんだけど。どういうこと?」
「精霊系の加護の能力は、『常に魔力を一定数吸われる代わりに魔法の威力を格段に引き上げる』ですからな。
要するに、魔力消費量が異常に高くなるのですぞ。」
「ということは、相手が魔力切れを起こせば相手が長時間目眩を喰らってくれる、ってことでいいんですか?」
「そうですな!かくいう私も『氷霊フラウの加護』を持っているのでわかりますが、あれはなかなかにキツイですぞ!もう慣れましたがな!」
「道理であの野郎、魔力切れを起こしているのに平気で動けた訳だ………。
魔力切れに慣れるとかどういう神経してんだよ………。」
「ハッハッハ!まあ、アイツは大型魔法を連発したがるので基本的には躱していれば勝てますぞ!」
「え、でもあの人『シーシュポスの岩』っていう魔法を使ってくるけど……。」
「そうですな。アレは厄介ですぞ。
ですが、アレにも弱点がありますぞ。」
「「「おお!!!」」」
だよな。あんな『前に進めない』なんて馬鹿げた魔法、弱点の一つや2つあったっておかしくはない。
でも、どんな弱点なんだ?
まさか某忍者さんみたいに「この術の弱点とリスクは・・・この俺の存在だ!」みたいなこと言わねえよな?
「あの魔法の弱点は……………………ズバリ!足を地に付けないこと、ですぞ!」
「「「はい!?」」」
足を地面に付けない?無理ゲーだろそれ。
あ、でも俺出来るわ。『マジックガード』あるし。
「あ、じゃあ僕大丈夫だね。『弾壁』を空中で縦に展開して横っ飛びすれば一気に接近できると思うし!」
「チクショウ!俺だけ空中で歩く手段がねえ!!!」
「戦うのがギルじゃなくて本当に良かったぜ………。」
「ハッハッハ、私も苦労しましたな、あの魔法には!」
「因みに、『氷帝』さんはどうやって勝ったの?」
そういえば、『氷帝』さんは『地帝』とよく学生時代競ってたっつってたな。
要するに、勝ったことがあるって訳か。
どうやってだよ、ホント。
「結局、あちらの魔力切れを待つ以外に方法がありませんでしたな。
大抵魔力を切らさなかったほうが勝っていましたぞ。」
「うへえ。きっと凄え魔法がポンポン出てたんだろうなあ。
おっちゃん、今度勝負しねえ?」
「いいですぞ。」
「いやいや、二人ともちょっと落ち着こう。今、話題、シュウ、おk?」
「「大丈夫ですぞ(おk)。」」
まあ、ギルはともかく『氷帝』さんには協力して貰う義理はないんだけど。
この人の教えてくれることは滅茶苦茶有用だし。
悪いけど、遠慮なく頼らせて貰おう。
「あと、問題は………。」
「『クリスタ・ルーン』だな!
あれは強烈だったぜ!ロイドの『セイクリッドガード』を押す奴なんて初めてだ!」
「おお、遂にあやつもあの魔法を完成させたのですな!」
「あれ?『地帝』って学生時代にあの魔法完成させて無かったんですか?」
「一応使うこと自体は出来てましたぞ。ただ、あやつは実践では焦ってコントロールをミスっておりましたな。」
「そんなに難しいの?」
「そうですぞ。あの魔法は、地面から砂や鉄の粒を取り出して槍を形成し撃つ物なのですが、その際に砂や鉄の粒と粒を擦るように魔力で回転させることで、貫通させるだけではなく相手を擦り潰すという凶悪な魔法ですぞ。」
「駄目だ、実感湧かねえ………。」
「俺にはただの黒光りする槍にしか見えなかったぞ……………。」
「多分、あまりの回転に熱で透明化し、黒光りしたのでしょうな。
まさかその次元まで達しているとは…………。あやつ、かなり腕を上げましたな。」
いやいやいやいや!?摩擦熱でガラス化ってどういうことよ!?
温度が原爆並だぞ!?
逆によく持ったな『セイクリッドガード』……………。
「うわあ、僕そんなの耐えられないよ………。」
「まあ、これは躱すしかありませんな。
又は、あやつの集中力を乱して魔力操作を失敗させるという手もありますが…………何方にせよ賭け、ですな。」
「あれ?ちょっと待とう。あれって一応魔力使ってんですよね…………?」
「ん?そうですぞ。それがどうかしましたかな?」
「じゃあ、これって使えたりします?」
そう言って俺が取り出したのは、ついさっきMVPレベルの活躍をしたアダマンチウムの針。
「……………!!!これはまさか!」
「アダマンチウム、だよね?それ。なんだっけ、魔力を中和するんだっけ?」
「正解。」
「確かに、それなら『クリスタ・ルーン』を無効化出来ますぞ。
ただ、あやつは『地帝』ですからな。
『アース・ホール』でただの岩などを落とされる、というような魔力を間接的に使う魔法を使われればひとたまりもないですぞ?」
「おっちゃん?シュウを舐めないほうがいいぜ!素手でも剣を止めるからよ!」
「成る程、何かしらの耐久系の加護を持っている、ということですかな?
ならば、彼の魔法を全て捌き切れば勝てると思いますぞ。
後は、良い盾がほしいですな。」
「そろそろこの『パラディンシールド』も消耗が酷いからね…………。
じゃあ、明日『戦乙女の守護盾』に行って盾を見繕ってこようか。」
「それがいいと思いますぞ。
では、私はもう眠いので寝ますぞ!」
「すみません、付きあわせてしまって。」
「ハッハッハ、大丈夫ですぞ!」
そう言いながら、『氷帝』さんは自分の部屋に行った。
さて。
「作戦とやることも決まったし、寝るか。」
「そうだな!」
「じゃあ、おやすみ。」
そうして、俺等はそれぞれのベッドに入っていった。




