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166話 ギル視点

シリアス(?)って書くもんじゃないですね。

自分にはとことん向いていないみたいです。

王都に来てから、どうも変なことばっかり起きている気がする。


まず、クルト兄ちゃんと会うために入った盾専門店で、ロイドを追いかけ回す変な爺さんに会った。


ここまではなんつうか、まだいい。

俺等にとっちゃあこういうのは日常茶飯事だ。


けど、その後元孤児の皆がいるスラムに行く途中で急にシュウが変な発言をしたり、スラムの近くに住んでる人がシュウに変なことを話し始めた時、俺はことの重大さを感じた。


極めつけは、あのクソ強くてムカつくおっちゃん貴族だ。

ロイドの『セイクリッドガード』を押したり、変な魔法を使ったり、魔力切れでもムカついた俺の全力の一撃を回避する身体能力。

正直言って、化けもんだ。

こんな強い奴が俺等に一体何用だよ、と思った。

狙いはシュウだったっぽいけど。

話の流れからするに、あのクソ強いおっちゃん貴族はシュウと元家族だったんだろう。


もう何が何だか訳わかんねえ。

俺らは只々護衛依頼をこなしていただけだったのに、何でこんな変なことが連続するんだ。

こんなヤバイことって前にロイドが「ちょっと強そうな上級悪魔に目をつけられちまった☆スマソ~~」って言ってた時以来だと思う。

後は、クソ勇者が来たとき以来か。

嫌な予感しかしなくなってきたし、このことを考えるのはやめるか。


つーか、あのクソ強いおっちゃんて『地帝』て言うのな。

一回全力で勝負してみてえ。

あ、でも『氷帝』のおっちゃんも強そうだったな。

俺ももっと強くならねえと。


そう思いながらシュウの隣で素振りをしていると、急に建物の呼び鈴が鳴った。

建物を管理しているおっちゃんがそれに答えた瞬間、俺の頭の中にある声が響いた。



――――――――その贈り物をシュウに渡すな。


「!!」


これは、いつものあれだ。

俺は『勘』って呼んでるけど、皆曰く『アレスの加護』っていうらしい。

どっちでもいいと思うけどな。


ともあれ、俺は基本的にこの声を信じることにしている。

この声のお陰で何回も命が救われてるからな。

だから、俺はおっちゃんに向かって叫んだ。


「おっちゃん!ソイツを受け取っちゃダメd「何を受け取っちゃダメなの?」おい!?起きたのか!?」


シュウが、気絶する前のことなど忘れているかのような顔をして起きてきた。

畜生!タイミングワリィな!!!!


「おーおー、やっと起きたか。ほれ、今届いた手紙だぞ。」


「ちょ、待て………ッ!!!」


手紙を盗ろうとした俺の手は虚しく空を切り、シュウへと渡ってしまう。


「ギル、悪戯が過ぎるよ……。

で、何が書いてあるんだろう。」



――――――――今すぐ、その木刀でも何でもいい、手紙を潰せ!



ある声の言う通り、さっきまで素振りをしていた木刀を手紙に向かって投げつける。

つか、ちょっと待て!?このままだとシュウに直撃だぞ!?

ぐあああ!!もっとよく考えればよかったァッ!!!


俺が後悔してる間にも、木刀はシュウへと向かっている。

まあいいや、手紙が破れさえすれば、と俺が開き直った瞬間、木刀の軌道がちょっと右にずれた。


「うっそ!?」


「ギル、危ないって。

で、何々?『イレギュラーオルフェンの諸君。いや、シュウよ。』

え、僕に直接来たの!?」


「やめろ!」


俺の叫び声もシュウは悪戯だと思ったのか、手紙を読み進める。

そして、手紙を読み終えたシュウは、なにか大事なこと――――多分、シュウガ気絶する前のことだろう――――を思い出したかのような顔をし、

俺に対して一言告げた。


「行ってくるよ。」


「は!?何処にだよ!?」


シュウは、何も答えずに建物を出て行った。

瞬間、頭の中にまたある声が聞こえた。


――――――――彼は『地帝』の家に向かって行ったぞ。


「畜生!」


嫌な予感しかしねえ!

そう心の中で叫びながら手紙を呼んだ俺は、シュウが決闘を受けに行ったことに気づいた。


「おっちゃん!シュウを呼び戻してくる!!」


「おう!何がなんだかよく判らねえが、お前に任せるぜ!」


俺は、半ば諦めながらも『地帝』の家がある方向に駆け出した。

ロイド、頼むからどうにかしてくれ!















俺が諦めて建物に戻ってきた頃、ロイドがシュウを引き連れて戻ってきた。

ビックリする俺に、ロイドをこう告げた。


「『地帝』め。よろしい、ならば戦争だ。

ギル、明日丸一日を使ってシュウを強化するぞ。

とりあえず、『慈愛の心』に戻って一休みだ。」


「シュ、シュウを強化ぁ?」


訳がわからないまま、俺は『慈愛の心』へと連れてかれた。

ホント、王都に来てから変なことが続いてばっかりだ。



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