154話 肉弾戦は強い(迫真)
――――――――『通拳』。
対俺にでも作られたんじゃないかって言うほど、この技は俺に対して相性がいい。
『マジックガード』は当然のごとくすり抜けられるだろうし、魔手装甲も実質『マジックガード』と中身が変わらないから、すり抜けられるだろう。
となると、防ぐには『アース・ホール』で石の壁を作るしかなくなる。
1秒でぶっ壊されそうだけど。
「ギル、全力で行くぞ。アレをやってくれ。」
「いいのか?」
「逆に、やらないと負ける。」
「了解。」
「ハハッ、面白そうじゃないか。よし、待つよ。そっちが準備を終えるまで。」
「ありがてぇ!『オープン』!『フルパワー・ブースト』!」
ギルが異空間から『餓狼牙』を取り出し、最高の筋力増強必殺技『フルパワー・ブースト』を使う。
どういうことかというと、
「大剣を双剣のように使うのかい。コリャまた面白いものが見れそうだ。」
「つー訳で、喰らえ!『ダブルリザードクラッシュ』!」
「『片手白刃取り』『片手白刃取り』!!!!
そして、『通拳』!」
シオンさんが、両手を使ってギルの一撃を防ぐ。
更に、シオンさんが豪気を伸ばしてまたギルの腹を殴ろうとする。
が。
「次こそは止める!ハァッ!
そこには護身用のナイフを携えた俺がいる。
魔手装甲で覆っているので筋力はバッチリだ。
次は、ナイフを使って『通拳』に対抗する。
「!」
案の定、『通拳』はナイフを通過できなかった。
どうやら『通拳』は質量を持つものは通過できないようだ。
(やっと突破口が見えたッ!)
俺のナイフが、『通拳』を叩き切る。
流石おっさんの一品。耐久、切れ味共に非常にいいな。
「早いねぇ、アタイの『通拳』の突破口をすぐに開く魔術師はウィル以来だよ。」
「そりゃまたどうも!」
そう言いながら、ナイフを突き出す。
十分な速度を持ったそれは、あっけなく豪気に『片手白刃取り』された。
「うーん、速度は十分だけど、いかんせん技術が足りないね。
動きが丸見えだよ。」
「「ぐぬぬぬぬぬ。」」
俺とギルは、『片手白刃取り』を壊そうと力を入れる。
が。
「可愛いねぇ。ほら、『通拳』のラッシュだよ。どうやって躱すんだい?」
ビクともしねえぞこの人。豪気強すぎるだろ。
「ギル!全力で両断しろ!俺が全部防ぎきる!」
「了解!『最大重量』、『ドラゴンスマッシュ』!!!!!!」
「ッ!良い力だッ!!!これがまだDランクなんて惜しいねぇ!!!!」
(『アース・ホール』『アース・ホール』『アース・ホール』『アース・ホール』『アース・ホール』…………………!!!!)
『通拳』を無力化するには石の壁二枚が必要だ。
キツイ、キツすぎる。
魔力の方は持つけど発現してる俺のほうが持たないかもしれない。
「早く、ぶっ倒せ!!!!『フレイム・ブースト』『マジッククラッシュ』!!!」
拉致があかないので、量の少ない火属性を全力投入する。
「うらああああああああッッッ!!!!!」
「くっ、『瞬歩』!」
――――――――ズガアアアアアアア!!!!!
「ギリギリで躱されたか……………。」
「まだだ!もう一発!」
――――――――バコッ。
筋力が飛躍的に向上したギルが地面を蹴ることにより、ものすごい速さでギルが肉薄する。
「もう一発、『最大重量』、『ドラゴンスマッシュ』!!!!!!」
「マズイねぇ、『練気弾』『拳聖掌』!」
豪気の弾と強力無比な拳が、ギルの2本の大剣にぶつかる。
――――――――パキッ。パキッ。
力と力がぶつかり合い、二人の立つ地面が割れていく。
そんな中。一つの魔法が発現した。
「……………『グレイブ・ミスト』。」
瞬間、辺りに霧が舞う。
「「「!?」」」
視界が潰される。
(『ウィンド・ロール』。)
急いで霧を払おうとしたが、霧が濃密すぎて全然吹き飛ばない。
マズイな、これでは皆の支援が出来ねえ。
俺が途方に暮れていると、霧の向こうから何かが来た。
「ハハ、『マジックサーチャー』は頼りになるねえ!!終わりだよ!『通拳』『拳聖掌』!!!!」
「―――ッ!?」
(『アース・ホール』!!)
なんとか『アース・ホール』を使い、しゃがむことでギリギリ回避する。
つうか、何でこの人『マジックサーチャー』が使えるんだ!?
この魔力はないはずなのに!
「何でアタイがお前さんを見つけられたのか気になってるのかい?」
「!」
「簡単な事さ。ウィルが魔法を共有する魔法『マジック・ティラン』を使ったんだよ。お陰でウィルの使っている『マジックサーチャー』が共有されたって訳だ。」
「そんな魔法、聞いたことがないぞ!?」
しかも、その魔法は多分攻撃魔法じゃない。俺でも使える可能性が高い!
「そりゃそうだろうさ!最近開発された魔法だからね!」
「羨ましい限りで!くっ!!」
拳を何とかナイフで防ぐ。
が。
――――――――ピキッ。
(マズッ………………!)
ナイフにもそろそろ限界来てしまったようだ。
こうなりゃ、一か八かの勝負にかけるしかない。
「『死拳』『破掌』『通拳』!!!!」
「『カラドボルグ』!!!!!!!!」
シオンさん全ての攻撃を叩き切る。
クソ、肩がボキッつった。痛え。
けど、やっぱり質量のある『カラドボルグ』なら『通拳』を切れるようだ。
なら、勝負に出れる!
「『拳聖掌』『通拳』!!!」
シオンさんが怯まずに攻撃してくる。
「さて、成功すればいいんだけどな…………。
ウラアッ!」
(魔手装甲)
一瞬で『カラドボルグ』の制御を離す。
そして、直後に魔手装甲を使う。
こうして制御を失った『カラドボルグ』は――――――――
――――――――暴発した。




