153話 強すぎワロエナイ…………
「ロイド。どんな感じで分かれりゃあいいんだ?」
頭の中で「マズイ」をエコーさせている俺に、ギルが緊張した声で聞いてきた。
んな事言われてもなぁ。
「この二人、強すぎるから分けたら即死するぜ?」
「だよねぇ………。」
シュウは薄々気づいていたみたいで、頷いていた。
マジであの二人強いんだもん。二人共対上級悪魔の時は大活躍してたし。
「では、皆も待ちくたびれてきたようだし、そろそろ始めようかぁ!
3!2!1!」
「お前ら、ノープランで行くぞ。
臨機応変に個々で対応しよう。」
「「了解。」」
「「「ゼロ!!!!」」」
「早速行くよ。
我が水の力集いて彼の者を求め、凝結し、穿て、『フリーズ・バレット』。」
「「「『ブースト』!」」」
戦闘開始とともに、3人が『ブースト』を使い、先生から回転する氷の弾丸が飛んでくる。
(魔手装甲、『ウィンド・ブースト』!)
「『オープン』。」
そしてそのまま、ストレートを氷の弾丸に叩きつける。
――――――――ギャリギャリギャリ、パキン!
氷の弾丸は俺の魔手装甲を貫こうとしたが、あっけなく壊れた。
氷だし、耐久力はあまりないな。
「っと、ヤベエ、この姐さんメッチャ強え!」
「お前たちも十分に強いぞ!楽しいねぇ!」
ビックリして振り返ると、シュウとギルがシオンさん相手に踏ん張っていた。
畜生、もう分断か。
これで俺は一人で先生の相手をしないといけなくなった。
「さて、ロイド。近づいてこないのかい?」
先生が、俺に誘いをかける。
ん?今一瞬先生の輪郭がぼやけたような…………。見間違いかな。
とりあえず、俺からすれば近づかないと勝てないので、遠慮なく接近戦に持ち込ませてもらう。
罠かもしれないけど。
先生は、俺が一気に距離を詰めるのを見て、呟いた。
「詠唱破棄、『アース・ホール』。」
「やっぱ罠だったッ!」
足元は凹み、バランスが崩れる。
が、とっさに魔手装甲から魔手を一本分出して体を支える。
「詠唱破棄、『水蛇』。」
が、それより早く水の蛇が俺の足に纏わりつく。
でも、水のバインドなんて実体がないから殆ど効かない。
「詠唱破棄、『フリーズ』」
「!?」
しまった、水を凍らせるのか!
マズイな、足が動かない。
手で壊すか。
幸い、体は柔らかいのでつま先まで手が届く。
俺が氷を壊そうと体をかがめた瞬間。
「詠唱破棄、『流水』、『アクア・ムイ』改造魔法『ウォーター・カッター』。」
「!!!『セイクリッドガード』!!!!」
急いで魔手装甲を解除し、『セイクリッドガード』分の魔力を確保して発現させる。
因みに、『ウォーター・カッター』は俺と先生の改造魔法だ。
性能は、まあ前世のものと変わらない。
要するに、魔手装甲じゃ切られる、という訳だ。
――――――――キィィィィィン!!!!!
甲高い音が一体に響く。
「――――――――ット』。」
「ガアァッッ!!!!」
氷の弾丸が、脆くなっている俺の体を貫く。
クソ、足も固定されてるし、『セイクリッドガード』も使っているから魔手も出せない!!
こうなりゃ切り札を使うしかない。
「『セイント・ブースト』ォォォォォ!!!」
『セイクリッドガード』を解除し、自身に『セイント・ブースト』を掛ける。
瞬間、『ウォーター・カッター』が俺の方を切る。
が。
「うおっとぉ!ロイド選手、謎の動きぃ!
『ウォーター・カッター』をモロに喰らい、振りぬかれたというのに無傷だ!!!!!」
原理は簡単。
回復魔法は、確かに体が欠損していると使えない。
だが、逆に言うと途中まで切られていても皮膚1枚でも繋がっていれば回復できる、という訳だ。
だから、俺は『セイント・ブースト』を一番最初に『ウォーター・カッター』に当たる場所に全力で凝縮することで、ギリギリ四肢切断を免れたのだ。
(ッッッ!『ヘイレン』!!)
が、四肢切断を免れたとは言ってもギリギリで繋がっている状態なので、急いで『ヘイレン』で治す。
先生は、ビックリしたままあまり動いていない。
(さあ、魔手一斉発射だ!)
氷の蛇を魔手で強引に叩き壊す。
よし、開放された!
魔手カタパルトで距離を取ろう。
それにしても、『ウォーター・カッター』はヤバイな。
あれに耐えられるのはシュウくらいだろう。
チラッとシュウとギルの方を確認する。
シュウがキツそうだな。
シオンさんは拘束技が多いから、シュウじゃキツイんだろう。
「シュウ!」
「何!」
「交代だ!お前が先生の相手をしてくれ!」
「わ、分かった!」
シュウも自分が不利なののが分かっていたのかすぐに引いた。
「死ぬなよ!」
「無理かも!でも、頑張る!」
「はは、じゃあ遠慮なく試させて貰うかな。
詠唱破棄、『タイダル・ウェーブ』。」
「うわああ!!!?」
何だかんだ言ってアイツ無傷じゃねえか。
流石だな。これなら大丈夫そうだ。
俺が安堵していると、ギルが振り向いてアドバイスをくれた。
「ロイド!気をつけろ!この姐さん、豪気を伸ばして攻撃してくる!」
「アタイはそれを全部回避するお前さんに惜しみない賞賛を送りたいね………。」
豪気を伸ばす!?
何じゃそりゃ!?
と思ったら、こっちにも白い何かが飛んできた。
びっくりしながらも、それをサイドステップで躱す。
「これのことか!」
「正解正解。さて、素早い奴二人になったし、そろそろお前さん達からも攻撃が来るかな?」
「言われなくても!『リザードクラッシュ』!」
「『片手白刃取り』。そいよっと。」
シオンさんが片手でギルの一撃を掴み、もう片方の手でギルを殴ろうと振りかぶる。
が。
「『セイクリッドガード』!」
この程度、余裕で防げる。
そんな俺のドヤ顔(内心)は、シオンさんにコンマ1秒で崩された。
「来ると思ったよ。『通拳』。」
「ゴフッ!?」
ギルが拳を鳩尾に喰らい、吹っ飛ぶ。
「!?」
(何が起こったかよくわかんねぇけど、とりま『ヘイレン』だコンチクショウ!)
それより、『セイクリッドガード』が通過されるって初めてだな。
今までそんなことはなかった。
「これがアタイの豪気の扱う技術。
安心しな、『通拳』は多分アタイだけの技術だよ。
ギルマスでも使えないだろうね。」
「いやいやいや!?強すぎでしょ!?」
これでBランクかよ!?
先生もシオンさんも強すぎるだろ。
俺は、このまずい状況を打破するために思考をフル回転させた。
ちょっとキリが悪いかも知れませんm(_ _)m。




