142話 ゴム売れすぎワロスwww
「さあさあさあ!!!
今日から発売の新商品『ゴム』だよぅ!!!!」
ダルファさんの弟子の客引きに、ドンドン客が反応する。
開始一時間にしてもう3分の1が売れている。
「いやー、ダルファさん。物凄く売れているねー。」
「何で他人ごとみたいに言うんですか……………。作ったのは貴方でしょうに………。」
まさか血眼なってまで買い求めてくれるとは思わなかった。
でも何に使うんだろうな。服以外に思いつかんわ。
「むっほお!これはこれは!素晴らしい鞭の素材だ!これで叩かれたらキモチイイだろうなぁ…。」
「………どきどきわくわく。」
SMプレイ用デスカ。チックショウ!
いや、それだけじゃない筈。それだけじゃない筈!!!
「ロイドさん、どうやらゴムは女性に人気ですねぇ。」
「えっ?」
ゴムを買っていった女性を視線で追ってみると、何と彼女はヘアーバンドを作り始めたのだ。
「成る程。ヘアーバンドですか……。」
「良かった、平和的な利用法で。」
というか良くこんな短時間で利用法を思いつくな。
女性の美意識は無敵、てか。
「おい!?あれロイドじゃね?」
「ホントだ!おーい!」
冒険者の人達もなんか集まってきた。なんでやねん。
「何で皆ここに来たんだ?」
「依頼だよ、依頼。」
「依頼?手紙でも配達してんのか?でも手ぶらだしな…………。」
「お前、少しは察しろよ……………。」
「?」
察しろ、て何をだよ。
「コイツマジで気づいてねえぜ………。」
「しゃあない、教えてやるか。
あれだよ、あれ。貴族サマが「服に使うからゴムを買ってこーい」つって俺等をパシらせてる、て訳だ。」
ああ、煙玉の時みたいな感じか。
あの時は俺のストレスがマッハだった。
金は結構貰えたけど。
「納得したみてぇだな。さてと、じゃあ本題に入ろう。いっせーのーで」
ちょっと待て、何故そんなニヤニヤしてる。
というか何言いたいかちょっと予測できた。
「「「ゴムうっt「だが断る。」
キマった。今間違いなくキマった。
クリティカルヒット。
急所にあたった。
会心の一撃ぃ!
「何でだよ………。横入りくらいやったっていいじゃん。」
「こんだけ並んでる人がいるから、流石に横入りさせるのはこっちとしてもなんか申し訳ない。」
「「「ちっくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」
おいおい、叫ぶな。不審者の集団を見る目でショタとロリが見てる。
って、ちょ、おまいら!俺とダルファさんまで不審者扱いするな!
「もうさっさと諦めてお前等は列に並べよ………。」
俺とダルファさんが不審者みたいに見られるし。
「わかったわかった。横入りは諦めますよーっと。」
「何か言い方がムカつく…………ッ!」
冒険者帯は手をヒラヒラさせながら列に並び始めた。
うおお、ムカつく。煽り耐性低いからなぁ、俺。
俺が内心自分の弱さを再認識していると、肩をぽん、と叩かれた。
この手の大きさ、ギルか!
まさかこれは人差し指を出しながら肩を叩くことによって、振り向いてきた相手の頬に大ダメージを与えるあの巧妙な罠ではッッッ!
前引っ掛けてやったら物凄く怒ってたし、逆襲をしてきたに違いない!
ならば振り向くのは肩が叩かれた方とは逆方向。
うおおおお!!!!
――――――――ダン!!
「ロイド………。お前、何やってんだ?」
「イグニスかよ!?」
「ロイド様…。申しわけございませんがお忍びで来ていますので声を下げてもらえますか?」
執事さんもいるし。
何だかんだ言って会うのは久しぶりだなぁ。
「そうか。ごめん。」
「ホント、貴族って面倒くせぇよな……。」
「イグニス様!!」
「あー、はいはい。」
叱るときも声を潜めながら言える辺り執事さん凄いな。
「まあ、それはともかく。ゴム、すごい人気だな。」
「だよな。あ、もう少しで半分切るぞ。」
「ほえー。
お前、ヘタしたら貴族よりも金持ってんじゃねえの?」
「持ってるな、多分。」
「そこの商人さんも儲かってんだろ。」
「はい。ロイドさんのお陰で今月の売上はいつもの10倍はいきそうです。」
「それはそれは。家計も潤いますね。」
「妻が大喜びですよ。」
「「ハハハハハハハ。」」
「「…………。」」
駄目だ、大人の会話を理解するのは俺等にはまだ早かったようだ。
「そうだ、金が沢山あるってさっき話してたけど、それの使い道についてイグニスに相談があるんだ。」
「なんだ?」
「孤児院を建てたい。」
「は!?何でだ!?」
うーん、愚直に「俺が孤児だったからだZE☆」っつうのもなんだしな。
「こんなに金があっても俺には使い道がないし。
だったら生活に困っている人に使ってあげるのが道理だ、て思ってな。」
よし、ここで俺が人格者的なイメージを植え付けておこう。
すぐ剥がれるだろうけど。
「何とも素晴らしい考えだな……。お洒落ばっかやってる貴族共にも見習わせたいぜ。
でも、何でそんなことを俺に頼むんだ?」
「ヒント、俺が子供。」
「ああ、成る程。相手にされないってか。
わかった、親父に話しをつけとく。」
「イグニス様!ご主人様をそのような言葉で呼んではいけません!」
「ああ、うん。お父様に話をつけとく。
じゃあ俺は帰るわ。元々ゴムがどんなものか見に来ただけだし、じゃあな。」
「頼んだぜ。じゃあな。」
イグニスが執事さんと一緒に帰っていった。
いやー、執事さん相変わらず武芸者の雰囲気がする歩き方だ。凄い。
「では、私も弟子に指示を出しに行きますので。」
「わかった。俺も帰るよ。」
因みに、ゴムはその日のうちに完売し、売上は19億メルにもなった。
あの量でこんな利益が出るとか。ダルファさんどんな腕前してんだ。




