127話 俺の運×食人樹林=カオス
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有り難うございます!
俺達は御者さんに礼を言うと、『食人樹林』に足を踏み入れた。
因みに、帰りは今の御者さんを頼れないので近くの村から馬車を出して貰う予定だ。ふう、出費がかさむ。
本当は『食人樹林』でテントを張ったりして長時間滞在したかったのだが。
『食人樹林』は熱帯雨林なので、熱中症とか蜂とかが多くて滞在には向かないらしい。一応回復魔法はあるけど、俺が即効性の毒にかかっちゃ終わりだからな。
「うへえ、暑いな………。」
「仕方ねえ。言っとくけど、汗もあまり蒸発しねえからずっと蒸し暑い感じになると思うぞ。」
「ベトベトになるのか………。」
まあ、タオル10枚持ってきてるけど。
収納袋マジ便利。
「まあ、文句言ってても仕方がない。進もう。」
「そうだね。ここを突破すれば石鹸とゴムでガッポガッポだ!」
「そうだな!」
そう言ってギルが走りだそうとした所で、急にギルが転んだ。
「へブッ!?」
「おいおい、ドジだなぁ。」
張り切り過ぎだって。
「いや、待ってくれ!よくよく見たらツルが大量にぶら下がってる!
これに引っ掛かっただけだ!」
へ?ツル?
「あ、ホントだ。へー、どんな植物のなんだろう。」
シュウがツルの伸びている先を見た。
おお、普通の木だな。目と腕がついてる以外は。
………………………。あれ?
「それってまさか………。」
「「トレントォ!?」」
「…………。」
やべっ、こっちに向かってきた!食欲全開だぞコイツ!食われる!
木に擬態してたのかっ!
「逃げるぞぉぉぉ!!!!」
「「了解っっ!!!!」」
(『ウィンド・ブースト』!!!)
「「「うわああああ!!!!!!」」」
――――――――ノッシノッシノッシ。
速いぞコイツ!!!いや違うな、俺達は植物とかのせいで速く走れないからか!
つーかコイツメッチャ怖い!根がかさかさ動いてんだけど!ゴキブリか!
「って、おい!お前勘とかで何も感じなかったのか!?」
ギルの勘って予言じみてるだろっ!?
「勘は何にも告げてくんなかったよ!」
くそ、『アレスの加護』の発動基準ってなんなんだよ!?
「そんなことより、普通に迎え撃ったほうがよくない?」
シュウが一気に叫ぶ。
そうだった。トレントは確かCランクのモンスター。
エルダーゾンビと戦った時のことを考えれば余裕な筈。
生まれた時から逃げまくってたせいで、追いかけられたらとりあえず逃げる、という行為が体に染み付いちゃってるな、俺達。
「殺るか?」
「俺は大丈夫だ!」
「僕も!」
「なら、シュウは注意を引きつけてくれ!いつも通り行くぞ!」
「わかった、『タウント』!!」
シュウが立ち止まり、『パラディンシールド』をトレントに向ける。
すると、それまで追いかけていたトレントが腕で横薙ぎをしてきた。
「『カウンタークレイヴ』!!」
シュウがトレントの一撃を『やられたらやり返す、倍返しだ!』にした。
ゴメン。もう古いなこのネタ。
「喰らえ!『フルスマッシュ』!!!」
ギルの一撃がトレントを粉砕する。
良かった、魔石は無事だ。
いや、ちょっと落ち着け。
「あれ、弱くね?」
俺の出番なしじゃねえか。
「多分トレントは攻撃力が高いからCランクなんだろうね。」
実際に攻撃を受けたシュウがそう言うから、そうなのだろう。
その割にはお前、ピンピンしてるけどな。でも一応『ヘイレン』は掛けておこう。
「ま、どんな奴が来たって俺がいれば一撃だぜ!」
「だろうな。お前、上級悪魔の魔石をぶった切ったってるし…………。」
ギルは正直火力がおかしいと思う。
これでもまだ9歳なんだから怖い。成人したらどうなるんだろうか。
改めて俺のパーティの規格外さを再認識した俺は、『食人樹林』攻略のために足を動かそうとして――――――――そのまま動けなくなった。
「は?」
「今度は何が起きたの?
ってうわああああ!!!????ロイド、沈んでいくよ!?」
「泥沼だ!引き上げるぞぉ!『ブースト』!」
ちょ、痛い!手、もげる!
(『グラウンド・ブースト』ォォォォ!!!!)
「「「フィィィィィィッシュッッッッッ!!!!!!」」」
三人でハモりながら、俺は泥から釣られた。
そして、そのまま木へ衝突。
まさかまたトレントが擬態してるとかねえよな、と思って顔を上げた俺は、顔の着いた木を視界に収め、そのまま顔をひきつらせた。
「GUOOOOOO!!!!!」
「チックショウ!熱帯の中にいるのにさっきから冷や汗かきっぱなしだ!
『カラドボルグ』ゥゥゥゥ!!!!!」
もうヤケだ。
肩がゴキッて鳴ったけどもう気にしない!
「コンチクショオオオオオオオオオ!!!!!!!」
――――――――ドガアアアアアアアアンッッッッッッ!!!!!!!
…………………。
「なんだこれ。」
「俺の『ドラゴンスマッシュ』より全然強えぞ…………………。」
「肩がっ、肩がアアアアアア!!!!!!!」
何だこの場所。
トラップ多いし、トレント沢山いるし、俺等の雰囲気がカオスになるし、暑いし。
「嫌がらせの宝庫かっ!絶対Dランクのダンジョンじゃねえだろこれ!!!
何で俺はこんな所に来ようと思っちまったんだ………………………。」
因みに、『カラドボルグ』の轟音と俺に絶叫によって蚊の魔物が大量に来たのは別の話。




