11話 好奇心には敵が多い
定期終わりました!
長い道のりだったなぁぁ。
転ばぬよう先生の入った部屋に俺はめでたくゴールインした。
入った先の部屋は俺が寝ていた部屋に似ている。
変わっているのはベッドがあるかないかくらいだ。と言うか部屋にはなんもない。落書きはあるが。
(あれ?先生はどこにいるんだ?)
俺が先に部屋に入ったはずの先生を探していると、後ろでドアを閉める音がした。
何事かと後ろを見た俺の目の前に、先生は微笑みを浮かべながら立っていた。
な、何だと。この人眼鏡かけたらニコポが現実で発生するぜ。強烈な方だ。
「よし、魔法の練習を始めようか。」
が、俺のくだらぬ妄想は先生の一言で打ち消される。
なんたって魔法が今から教わることが出来るのだ。こんな妄想などどっかに飛んでしまえ。
「――――と言いたいところなんだけどね。僕は君に幾つか聞きたいことがあるんだ。」
先生の目つきが鋭くなる。と共に表情から笑みが見える。
怖えええええええええ。先生メサ怖ええええええ!!
てか今問題なのはそんなことじゃない。魔法の練習が後回しだと?
俺のことが聞きたいだと?
なんでだっ!魔法は男のロマンだろっ!
ネトゲで後方支援職しかしなかった俺をナメんじゃねえっ!
魔法よりも1歳児の方が興味があるだと?ふざけんな!
いつから貴方は幼児趣味に魂を売ったんだ!
いや、1歳時はまだショタに分類されないか?まあそんなことは関係ない。
大事なのは。
(魔法をないがしろにするなああああああ!!!!)
そんな気持ちを込めて先生をしっかりと見る。
絶対ここだけは譲れな―――――
「なんか君絶対変な勘違いしてるだろうから言うけどね?君は常識の範囲を超えているんだ。第一こんなほぼ言葉のない環境で言葉を簡単に覚えられるのはおかしい。しかも君はふらふらしながらも転ばずに歩けた。それだけでなく今君はきちんと理性のある目で僕を見た。」
そこまで言うと先生は一度口を閉じた。一呼吸おいて、また彼は語り出す。
「僕はね、そんな君が不思議でたまらない。いや、普通だったら不思議に思うはずだ。リーダー達は教える時間が省ける、て喜んでいたけどね。」
苦笑しながらも先生は続ける。
「だから、教えてほしい。君が今どんなことができて、どんな過程でそのようになったかを。」
ここまで言い終えると、俺の方をしっかりと見た。
あたりが静かになった。ドアの向こうの音が聞こえてくるほどに。
そんな中、俺は焦って何とか言い訳を考えていた。
今回は完全に俺のミスだ。
人恋しさにクルトに舌足らず言葉ではなくきちんとした言葉で話しかけてしまい、更にはそのノリでリーダー達に話しかけてしまった。
やっちまったZE☆!これで解決するなら言ってやりたい。
ていうかそもそもクルトと同じノリでいかなければよかったのだ。
くそ、恨むぞクルト。てか何言い訳考えてんのに自分に言い訳してんだよ。
いや、これは言い訳というのか?多分こういうのは押し付けっていうんじゃないだろうか?って何変に冷静になっているんだ俺!?
ああああ!!もうわけわかんねええええええ!!!
こうなったら伝家の宝刀上目遣いだ!これで萌え殺すしか無い!
先生が変な趣味であることを祈って!
俺が全力で上目遣いをしていると、先生は突然笑いだした。
俺がおいうちとばかりに首を傾げると、先生は口を開いた。
「アッハッハッハ。やっぱりね。君は自分がどれほど凄いかがイマイチ理解できていないみたいだね。そこは一歳児相応てことかな。」
上目遣いが聞いたのかは不明だが、先生は見事な勘違いをしてくれた。
ラッキー。そのままこの流れで押し通そう。
「そんなに凄いいことですか?」
「ああ、普通じゃこんな受け答え自体が出来ないよ。」
う、言葉に詰まる。なんて言えば不自然じゃないだろうか。
「ハハハ。すまなかったね。変な緊張をさせちゃって。
あ、そうだ。忘れてた。自己紹介がまだだったね。覚えてると思うけど僕の愛称はウィル。君を森の前で拾ったものだよ。」
な、なんですとー。
このことを知ったからにはやることは一つ。
「ありがとうございます!」
俺は勢い良く土下座した。そういえば謝罪の王様って映画あったな。
死ぬ前にツタヤで借りてきたかったぜ。まあでもこの場合俺の土下座は感謝の土下座だ。なんせ命の恩人だからな。
「う、うん。どういたしまして。うん。」
うわ、引かれた。なんかちょっとやるせない。
でもここまで話したのだ。少しは親密な関係になったはずだ。
という訳で今回は俺から切り出す。
「で、魔法の学習についてですが…………」
そう、これこそ本命なのだ。これを差し置いて前になど進めない。
特に俺の好奇心が。
「あ、うん。そうだね。じゃあ、こんどこそ魔法講座始ようか。」
落ち着きを取り戻した彼はそういった。
が、現実とは無情なものだ。今まで気が付かなかったが、段々体が重くなってきている。そりゃこんな長時間気が張り詰めっぱなしだったからなあ。
どうやらまだ一歳児の俺の体は限界なようだ。
俺は悔しいと感じながらも睡魔には抗えず目を閉じた。
起きてみたら一人の少年の膝に乗っていた。
前世のネッ友の変な趣味を持っていたやつなら興奮したかもな。
、てそうじゃなくて。なんで俺こんなことになってんの?
そんな意味あいを持って俺を膝に乗せている少年の顔を見る。
その瞬間、彼は少し顔を赤くして俺を見た。
待とう。ちょっと待とう。
まさか俺が寝る前に命がけで放った捨て身技が少年を
変な趣味に目覚めさせてしまったのか?
だとしたらヤバイ。俺の貞操と先生の趣味、2つの方面で。
危機を感じたら即逃走。俺は膝から飛び降りる。
そして、先生を見て話しかける。
「大丈夫ですか?」
その瞬間先生が顔を赤らめて顔が歪んだ。
良かった。今の自分がヤバイ事に気づいているようだ。
もしいま萌えて顔を赤らめたのだったら襲ってきただろうからな。
「な、何でもないよ。」
良かった。正気は取り戻したようだ。
もう上目遣いは禁じ手にするか。少年趣味軍団とか洒落にならん。
兎に角、話題を変えよう。彼に後悔とかで悶え死なれても困るしな。色々。
「ではすみませんが魔法講座を始めてもらってもいいですか?」
「うん、いいけどさ?敬語はやめてくれないか?後さっきのことは忘れてくれ。」
最後の方を強くして言われた。
それにしても失敗したな。クルトの時も失敗したばっかじゃないか。
これから敬語も厳禁で行こう。
「わかりやした!」
「ぷっ!あ、ごめんごめん。じゃあ始めようか。」
「わかりました、先生!」
といっても敬語でいくがな。俺まだ一歳児だし。年下だし。
一歳児らしくないとかで突っ込まれても気にしないようにしよう。もうここは100年に1度の天才的設定でいくかな。
「まずは魔力が何たるかについてだね。
魔力ってのは意思や願いの力だと考えられているんだ。
で、その願いを魔力に変えられる人のことを世間では魔力持ち、つまり僕達のことを言うんだ。
あ、言うの忘れていたけど僕ら結構珍しい部類に入っているからね?
まあそんな僕達を忌み嫌う人もいるけど。」
本気か。やっぱり魔力持ちは珍しいんだな。俺が捨てられた理由は魔力で間違いなしだな。つーか魔王さん。転生させてくれるならもうちょっとマシなところにして欲しかったよ。
「じゃあやっぱり僕が捨てられたのって魔力のせいなんですかね?」
「多分そうだと思う。もしかしたら金欠だったのかもしれないけどね。
というかよくそんなにあっさりと現状を認められたね。物心がついた時には
もうここに居たからかな?」
「そうかもしれません。で、続きをどうぞ。」
「でね、意思や願いの力によって魔力はその形状を7つに分けるんだ。
世間はこの分類を属性って読んでるけどね。
まずは何かに対する怒りや曲げない意思。こういうのは火をおこす。
2つ目は何かを助けたり、楽にしたい、という思い。これは水を出す。
3つ目は正義感や、リーダー感。これは雷をだす。
4つ目は何かを守りたい思いや安定を望む願い。これは土を動かす。
5つ目は焦りみたいな速さを求める思い。これは風を生み出す。」
「ここまでは基本となる属性だよ。
で今から言う2属性は特殊なものでね。殆ど見られない。まあ縁がないものと考えていいよ。
1つ目は極端なまでの協調性?みたいな感じ。これは光を出す。
2つ目は極端なまでの悪感情。憎しみとかね。これは闇を作る。
属性はこれで全部だ。質問ある?」
へー。ゲームでいくと火、水、雷、土、風、光、闇ってところか。
ということは少なくとも俺は3属性あんのか。発光はまだわかんないし。
あれ?そういえば俺って誰かを助けたいとか全く思ってないのに水とかでてたよな?なんでだろ。もしかしてこれもチートか?
「えーと、もしその属性の魔力を使いたい時は必ずその願いとかをしないといけないんですか?」
「いや、違うね。僕達の魔力は属性が決まっているから。あとで訓練するときに魔力の流れを感じてもらうからその時わかるよ。」
「あのー。答えになってないんですけど……………。」
「あ、ごめん。簡潔に行っちゃうと属性は最初っから決まっているから
魔力を出そうとするときに勝手に出る。だから願いとかな必要ないよ。」
「え………?じゃあ願いとか全く関係ないじゃないですか?」
「説明不足だったね。属性が決まるときにその人がどのような思いを抱きやすいかによって別れるんだ。だから願いとかは属性が決まる時に左右するものとなる。」
すげえな、魔力って。その人がこれからどんなことを考えるようになるかわかるのかよ。未来予知能力でもあるのかな?
「なるほど…………。」
「あとは魔力量だね。これも属性みたいに願いや思いによって決まるんだ。これはどれ位の量の魔法が使えるかを左右する。あ、魔法は魔力を使って起きる現象ね。あと魔力が切れると倒れたりするから気をつけて。」
え、ちょっと待て、属性みたいに決まるってことは………―――――
「魔力量は魔力を持った時からずっと変わらないってことですか?」
「そうだよ。」
オーマイゴッドオオオオ!俺がずっと魔力の練習をしてた理由の一つに
よく小説にある幼少期から魔力を使っていると魔力が増える!的展開を
望んでた、てことがあったのに……………。
「他に聞きたいことはある?」
「無いです。」
もうこれで十分な情報が得られたし。
というかもう面倒くさくなるくらい魔力って深いのな。
「じゃあ、次は君の魔力測定をしようか。」
お、遂に来たか。
大抵の主人公はここで魔力測定器とかぶっ壊すんだよな。
俺も壊せるかもしれん。
なんたって一回も魔力切れを起こしたことがないしな。
チートもらえてよかったわ。
チート付き転生に、感謝!
そんなことを思っていた頃もありました。
「あー。魔力量は少ないんだね。僕の五分の一くらいかな?」
俺は自分のチートっぷりに期待して、先生の水魔法『マジックサーチャー』の凝縮バージョンで魔力量を測ってもらったのだが、結果は無残だった。
ちなみに『マジックサーチャー』は本来、魔力を持つ人に反応する索敵魔法だそうだが、凝縮すると魔力の鑑定が出来るらしい。
ってそこが問題なんじゃなくて。個性的すぎるだろ?チートが。
珍しい魔力持ちなのに魔力が少ない。しかもチートのせいで捨てられる。
こんなのがあるかああああああ!!!
絶対アイツ俺のことを弄り倒して暇つぶしにしようとしてるだろ!
せっかくの2度目ライフなのに!現代知識とかがあんまし活かされねええ!!
てことはまさか俺が魔力切れを起こしたことがないのはしょぼい魔力の使い道しかしてなかったからってのか?
魔力を物質化させるのも魔法使いでは当たり前かも知れんな。ショックだ。
「じゃあ次は属性だね。『マジックサーチャー』!」
ああ、そうだった。属性があった!もしこれで半端じゃない何かが起きてくれたら挽回できる!頼むぜチート!
「おおっ。凄いね。水に土に風か。まさかトリプルだとは思わなかったよ。
あれ?雷がないな。あ、これなんだろう。
とりあえずさらに凝縮するかな。」
独り言がでかいですよ、先生。
それは兎も角、結局属性でチートだったか。良かった。
このまま何もなかったら俺自殺を図ったかもな。
「くっ!なんだこれは?うわあ!」
えええええええ!?気絶してますよ先生!
何か俺の属性に凄いところがあっただろうか。そうだったら俺的に嬉しいけど。でも凝縮に失敗したとか魔力切れかもしれないしなぁ。てかそっちのほうが可能性は高いな。
で、肝心の先生をどうするかだが、まあ起こす以外に選択肢はなさそうだ。
問題は起こし方なのだが、俺が平手打ちとかして先生の少年趣味が発動しても困る。
魔力の手――――中二病とかは言わないでくれ――――を
使うってのもあるけどなんか引かれるかもしれない。
考える事約5分。突然俺の頭に名案がひらめいた。
魔力で出る光で起こすってのはどうだろう?もう光はバレてるっぽいし。
思いついたら即実行。後ろを向いて、後頭部に全力で魔力を凝縮する。
うん。いい感じ。じゃあ早速フラッシュ!
ロイドのフラッシュ! ウィルは目を覚ました。
(ありえません)
「う?のああああああ!目がっ目があああああ!」
よくぞ言ってくれた先生よ。これで貴方もム○カ大好き軍団の仲間入りだ。
「先生?何があったんですか?」
「あ、ああ。ものすごくびっくりしたんだが………。」
何故か先生は一拍置く。
あれ?なんか俺この後の言葉が予知できるぞ?
「君は光属性も持っている。つまり、君はクアトロなんだ。」
やっぱりいいいいい!やっぱし光属性か。もうチートの定番だよな。
魔王がくれたチートなのに光ってのが腑に落ちないが。
「クアトロってのは凄いんですか?」
「ああ。かなり凄い。普通じゃ1,2個なんだ。僕も水と土のダブルだしね。」
きたわー。魔力量では裏切られたけど属性マジチートだわー。
「じゃあ光属性の利点は?」
「光属性は魔力の自然回復量を上げるんだ。他にも怪我が治りやすくなったり治癒魔法がすごくなる。ちなみにこれらは全部、総魔力量における光属性の比率が高いと効果が上がるんだ。、で君の光属性の比率ってどんぐらいだと思う?」
「3割くらいですか?」
適当に答えておこう。ていうか光属性やべえ。
「逆だよ。7割だ。つまり、君は魔力量を超えた魔法を使わない限りほぼ魔力切れを起こさない。」
えええええ!?いや、今日は驚いてばっかりだけど、これはやばい。
ネトゲとかではじっくり考えないといけなかったMP管理とかがチャラかよ?
すっげえええええ。
「しかも光属性は僕達の生活にもメリットが有るんだ。」
「どういう?」
「支援魔法ってわかる?簡潔に言うと身体能力を上げるみたいな魔法なんだけど。それって使うときに持続的に魔力を消費するんだ。つまり言いたいことは何かって言うと、物を盗って逃げるときに長時間支援魔法を使ってもらえるから生存率が上がる、てことなんだ。」
うっひょー!最高だわ。チート最高。
「しかも君は風魔法が使える。風の支援魔法は走る速さを上げるんだ。」
「じゃあ僕はこれから支援魔法を覚えるってことですか?」
「正解。じゃあ早速練習を始めようか。」
やったな、こりゃ。
前世では超絶インドア派だったからこれは嬉しい。
憧れていた運動神経が俺のものになると考えると楽しみで仕方がない。
俺は興奮しながらも、極力冷静に先生の言うことを吸収する。
支援魔法 俺の体に 革命を
皆もポ○モンゲットじゃぞ!
字数合ってないとかは言わないでくれ。
出来れば早く更新します。
モンハンがあるから出来ないかもしれません…………