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115話 対上級悪魔 8

身動きの取れなくなった俺は、とりあえず『マジックサーチャー』を使ってメイスの人の位置だけでも特定することにした。


(俺の右後ろか……。)


けど、煙に阻まれて一歩も動けていないようだ。

つか、逆にこの状態で俺を探知できるんだったら状況は最悪だった。


一応、状況を把握すると

俺、一人探知可能。

相手、俺探知不可。

煙が晴れるまで約3分。


こんな感じか。

一応、足音とかは聞こえてこないから他の二人もあまり動いていない筈。

意外と状況はこっちに有利だった。


よし、今も3人は分散してると仮定してメイスの人の所から突破しよう。

まずは『マジックサーチャー』でメイスの人の位置を細かく特定。


うーん、ちょっと『マジックサーチャー』を凝縮させよう。

少々離れているみたいで完璧に探知できてない。


(ってあれ?何だこの人の魔力。

頭の魔力の流れが変だぞ!?)


元から頭の魔力の流れって変だっけ、とか思いながら自分の魔力の流れを調べてみたが、おかしくなかった。

と、いうことは。


(チャームにかかると頭の魔力の流れが変になるのか!)


魔力を持ってない人もチャームにかかってるのだから逆はありえないだろう。

ということは、チャームが治ると頭の魔力の流れが正常になる訳か。

なら、メイスの人で色々実験してみよう。制限時間は3分だ。


まず、光属性の魔手で触れてみる。


………。

効果なし。


次、『デコラーレ・ピュリファイ』(簡易ver)。

うん、何も引っ張り出せなかった。

「フィ(ry」の再来はなかったようだ。


次、『ヘイレン』。

『ヘイレン』先生ならなんとかしてくれる筈!


(『ヘイレン』!!)


「っ!!」


あれ!?反応ありか!?一瞬頭の魔力の流れが正常になりかけたんだけど。


(もう一発、『ヘイレン』!!!)


「っ!!」


やっぱり。

回復魔法には反応するようだ。

けど、『ヘイレン』じゃどうしても威力不足。

ならあれを使おう。


「『ヒネトヘイレン』!!!」



――――――――シーーーーーン。



「「「!!!!!」」」


くそ、やっぱり何も起きなかったか。

まあ、仕方がない。

それより今の声、聞こえていたみたいだ。

『マジックサーチャー』の反応と、足音が近づいてくる。


どうするか。

『ヘイレン』と『ヒネトヘイレン』以外俺、汎用性のある回復魔法知らねえんだよなぁ。


………ん?

ちょっと待てよ、『マグナ・ヘイレン』を忘れてた。

一応魔力はそれなりに練ってあるし、使うだけ使ってみよう。


メイスの人に照準を合わせ、唱えた。


「『マグナ・ヘイレン』!!」


「っ!?ちょ、ここ何処だ!?何だこの煙!」


「よっしゃ!成功!」


上手くいった!

練った魔力が殆ど残ってないからもう一度『マグナ・ヘイレン』は使えないけど、チャームへの対抗策は出来たぜ!


「おーい、メイスのおっさん、ちょい何が起きたか説明するから来てくれ。」


『ウィンド・ロール』で煙を吹き飛ばしながら話しかけてみた。

まだチャームにかかったままの2人が襲いかかってきたけど、『マジックガード』と魔手で8本で防ぎきる。


「ロ、ロイドか?

それより、どういうことだよ。モンスター共に突進してからの記憶がねえんだが。」


「だろうな。今説明する。」


俺は、早口でいきさつを説明した。














「なるほど、なら俺はお前が魔力を練る時間を稼げばいいんだな?」


「そういうこと。

多分、1回チャームにかかったからおっさんは『魅了耐性』を得ていると思う。

頼んだぜ。」


「任せろ。詠唱省略、『フレイム・ブースト』。『ブースト』。

こんぐらいありゃあ十分防げるな。」



俺は、メイスのおっさんが二人を上手く足止めしているのを確認して魔力を練ることに集中する。

『アクア・ブースト』で集中しているお陰で効率は段違いだ。

2分程で練った魔力と元の魔力総量が同じになる。



「おっさん、準備完了!

『マグナ・ヘイレン』!」


「っ!?あれ、何で俺マルクを攻撃してんだ!?」


「おい、アル!今から説明すっからとりあえず落ち着いてくれ!

ロイド、てめえはもう1回『マグナ・ヘイレン』を頼むぜ!」


おお、メイスのおっさん(マルクさん)、要領がいい。

俺は安心してもう一度魔力を練ることにした。















3人をチャームから抜けださせた俺は、次にD、Eランクの方を襲撃している残りの二人を先に回復することにした。


さて、さっきからそっち方面から何も悲鳴とかあがってないし、腕の良い冒険者が捌いているんだろうな、なんて思ってたんだけど。



「ギル!後ろ!」


「わーってるって!っておい!?いつの間にアンタ槍に持ち替えてんの!?」


「………………。」


「やっぱり無言かよ!おい、シュウ、もうそろそろ俺の体力切れそうだからお前の盾の下で休ませろ!」


「了解!」



………………。

結局お前らか。

つか、他のD、Eランクはビビっちゃってんじゃねえか。

まあ、大半が精通を済ませてない奴らだからしゃーない。

とりあえず、2人に『マグナ・ヘイレン』を教えないと。


「おい、シュウ、ギル!

チャームを回復する魔法が見つかったぞ!」


「本当!?これでなんとかなる!」


「今の声ロイドか!盾で見えねえけど!」


「つー訳で早速行くぞ、『マグナ・ヘイレン』!!」


「っ!?あれ、何で俺こんなトコにいるんだ?」


「説明は後でだ、おっさん!

シュウ、ギル!ちょっくら魔力練り終わるまで俺を守ってくれ!」


「わかった!ロイドを守ればいいんだね?」


「俺はもうちょい休んでる。シュウ、頼んだぜ!」


「え、僕一人!?ねえ、ギル!寝ないで!?うわあ、『絶壁』!!!!

本当にこの人が豪気使わなくて助かったぁ。」


「お、おい、何が起きたんだ、割りとガチで。」


割と周りの雰囲気がカオスだったが、俺は気にせず魔力を練った。


前の方から「ギル、頼むから起きて!『絶壁』『絶壁』『絶壁』!!!!」

とか聞こえてきたけど、キニシナイキニシナイ。

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