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107話  ヒ、ヒーローは遅れてくるものさbyギルマス

ギルドには、こんなルールがある。

自分のランクよりも高いダンジョンに潜る時、ギルドから許可を受けないといけない。


何が言いたいかって言うと、


「はあああああ!?『食人樹林』に行くだとぉ!?

止めとけって、あそこはDランクダンジョンでも最高難易度だぜ?

まず、お前があそこに行く理由がねえだろ!」


俺、ゴム作り早くも断念するかもしれん。


「いやいや、『食人樹林』にしか生えていないっつう木があってさ。

ソイツを使ってゴムってのを作りたいんだ。」


「お前の作るもんだからなんか凄そうではあるんだが……………。

それでもダメだ。

ぶっちゃけお前らに死なれると滅茶苦茶困る。

そんなにその木がほしいってんなら依頼出せ、依頼。」


「無理だ、『食人樹林』って木の種類が多すぎるからそう簡単に採取できない筈。実物を知ってる俺が行かないと。」


「あとEランクのモンスターじゃ物足りなさそうだからよぉ、Dランクのモンスターを狩ってみてえんだ!」


遂に、さっきまで黙っていたギルも参戦した。


「確かに昨日の戦果からしてちょっとくらいならDランクダンジョンも行けそうなんだけどな。

『食人樹林』の厄介な所はトラップなんだよ。

こればっかりは冒険者成り立てのお前らじゃ対処できねえ。

せめて誰か同行者としてついて行ってくれるならありがてえんだが……。」


「なに!同行者がついてくれりゃあいいんだな!?」


「お、おう。但しCランク以上で頼むぜ。」


「ロイド、なんかツテでもあるの?」


「一応は、な。」


「そうか、じゃあ同行者と一緒にまた来てくr――――――――




――――――――ジリリリリリリリリリリ!!!!!!!



「「「!?」」」



今のは確か……………………


「Aランク超え出没警報!?」


そうだ、Aランク超えが都市の近辺に現れた時だけ、

この都市に設置されているでっかいベルが鳴るんだった。


確かAランクを超えるのは確か中位以上のドラゴン、呪いが使える上級悪魔、

魔物の突然変異種、あとは……………。


ん?呪いが使える上級悪魔(・・・・・)

あいつ(俺の悪運の象徴)か。


「グランさん、これって多分アイツだよな?」


「目撃情報が来ねえからまだ断定はできねえが…………。

多分、アイツだな。」


「ロイド、アイツってロイドが撃退した上級悪魔のこと?」


俺達が雑談をし始めた所で、チャンネーがビビった様子で走ってきた。



「皆さん!!!!落ち着いて聞いて下さい!!!

出没したのは『呪いの使える上級悪魔』、眷属の所属はサキュバス、ゴースト、また下級悪魔と中級悪魔が数体いる模様!!!

魅了耐性、精通を済ませてない方、女性の冒険者の方は参戦願います!!」



「サ、サキュバスだとぉ!?」


「ゴーストにサキュバスとか厄介すぎねえか!?」


皆は上級悪魔が来ること自体は俺の話から覚悟していたようだが、

その眷属の厄介さに驚いていた。

つか、サキュバスって精通を済ませてない奴は魅了できないのな。

俺等イレギュラーオルフェンにとっては飯ウマ以外の何物でもない。

サキュバス自体は弱いらしいし。


あと、この世界のゴーストが異常に厄介だった。

ただの物理攻撃じゃ殆ど効かない。

戦士がコイツを殺すには豪気を一定以上使って攻撃しないといけないのだ。

要するに、大量のゴーストを相手にする時は何度も何度も豪気を使わされるので、最終的に体力切れしてしまう、というわけだ。

無論、魔法ならなんの制限も無しにダメージを与えられる。


「そ、そうだ!ギルマスは何処行った!?

あの人ならなら素手でゴースト殺すし、魅了も効かねえぞ!」


「確かに!おい、ギルマスを出せぇ!」



確かにそうだ。

ギルマスさえいればこの状況、何とかなりそうだな。



「申し訳ございませんっ!今、ギルドマスターは「俺、ちょっと観光行ってくるわ」と置き手紙を残して何処かへ行ってしまいまして……………。」


「「「はあああああああああああああ!!!!???????」」」



「どこまで働かなかったら気が済むんだあのクソギルマス!!!」


「しかも行く宛も教えずに観光行くって自由すぎんだろ!」


「とりあえず一発殴る!」


「「「おう!」」」


すげえ、冒険者が変な方向で一致団結してんだが。


「本当に申し訳ないのですが、戦える人は早めにこの緊急クエストを受注し、戦闘準備を整えて下さい!」


おっと、そうだった。

なんか周りのノリのせいで上級悪魔のことを忘れるところだった。

どんだけ緊張感無いんだ俺。


「シュウ、ギル。このクエスト、受けるぞ。オーケー?」


「「勿論!!」」


「つーことでグランさん、『イレギュラーオルフェン』も参戦するから。」


「了解。

本当はランクが低い奴には危険なクエストを受けて欲しくないんだが……。人手不足だし、仕方がねえか……………。」


グランさんはあまり気乗りしない感じだった。

それほどこのクエストは危険なのだろう。

よし、これは火薬を使うハメになるかもしれない。


俺は二人に待つように言って、家へ火薬を取りに行った。

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