9話 ロイドは、異世界の知識を拾った!
説明回になっちゃいました。
すみません。
少年の顔を見た瞬間、とりあえずなにか話さなければ、と直感で思った。
ちなみに言うのを忘れていたが、少年は10歳くらいなので聞きたいことには答えてくれるだろう。
「こ、こんにちは?」
疑問詞になってしまったがとりあえず話しかけてみる。
おお、驚いているな。
「な、なんで話せんの?」
し、しまった。そこから来たか!
なんかいい言い訳無いかなぁ。
「な、なんとなく?」
「なんとなくで話せんのかよ!まあ、いっか。どうせ後で教えることだし、
手間が省けていっか。」
いいのかよ!?多分コイツは大雑把なのか頭が悪いのかのどっちかなんだろうな。
でもこれでやっと会話が成立するようになったし地獄の質問攻めを喰らわせてやるか。
「で、あのー。色々と聞きたいことがあるので時間取れますか?」
「す、すげええ!敬語話せるとか!まじ凄いな、お前!」
訂正。会話が成立していなかった。てか敬語って話せない人いるんだな。
でも今は会話をそらす訳にはいかない。とりあえず敬語は止めるか。
「お、おーい。それで聞きたいことについてなんだが。」
「あ、ああ。スマン、取り乱した。それで何について聞きたいんだ?」
「まずは、君の名前を教えてくれないか?」
「俺か?俺に名前なんて無いぞ?つうか孤児なんだから親いないしな。
面倒みてくれる奴もいないから名前はないぞ?」
ちょっと待て。面倒見てくれる人がいないってどういうことだよ。
しかも名前無かったらどうやって呼び合うんだよ。
「じゃあどうやってお互いに呼び合うんだ?しかも面倒を見てくれる人が
いないってどういうことだよ。」
「一度に2つのことを聞かないでくれ。頭がこんがらがる。」
「ご、ごめん。まずは名前無しでどうやって呼び合うのか教えてくれ。」
「愛称で呼び合うんだ。さっきも言ったとおり名付け親がいないからな。
それに、名前があったとしても捨てられたことについてショックを受けた奴も居るしな。そういうのに配慮するのも含めて俺らは愛称で呼び合うんだ。」
まぎわらしいな、おい。もう別に愛称を名前にしちゃえばいいやん。
でもまぁ、そういう心遣いができる集団、ってのはいいな。どう考えても過酷な世界なのに、他人を思いやれるのはいいことだ。
「んじゃ、君の愛称は何なんだ?」
「俺の愛称は『クルト』だ。というわけでよろしく。」
ふう、ここまで聞くのに結構かかったな。このペースじゃあどんぐらい掛かるかわかったもんじゃないぞ。
それにしてもなんだよ、クルトって。デ○エマの最弱モンスターじゃん。
「他に聞きたいことはあるか?」
いや、さっき聞こうとしてただろ、俺。お前どんだけ忘れっぽいんだよ。
「さっきも言ったが面倒を見てくれる人がいないってどういうことだ?
ここは孤児院じゃないのか?」
「孤児院が何なのかは知らないが、俺らは道端でものを盗りながら生活してるんだ。食料が手に入らないからな。」
うっそおおおおおん!?!?!?
まじかよおおおお!?ストリートチルドレンか!?キツイぞ?
超安定大国日本でぬくぬく育った俺がストリートチルドレン!?
やばい。泣ける。いや今実際に泣いてるよ、俺。
「お、おい。大丈夫か?落ち着け。生きることはできるから落ち着け。
あと安心しろ。俺らみたいな境遇のやつは何人かいるから。
だから落ち着こう、な?」
良かった。仲間もそれなりにいるみたいだし生きることはできそうだ。
飯が少なかった理由はこれか。これじゃあ文句は言えねえなぁ。
それにしてもクルト凄いな。とても10,11くらいの少年とは思えない。
まあ俺も人のことは言えんが。
「ありがとう。お陰でだいぶ気分が良くなった。
話が変わるがその仲間たちはどこにいるんだ?」
「あいつらか。あいつらはまだ食料を盗りに行ってる最中だ。
夜には帰ってくるだろうけどまだまだ時間は掛かるぞ?」
そうか。そういえば食料は盗らないと行けないんだったな。
日本に住んでた俺が盗みなんて出来るんだろうか。
めっちゃ不安だ。
「帰る?ここには拠点とかがあるのか?」
「あるぜ?というかこのドアの向こうが集会所なんだが。」
確かに偶にドアからワイワイ聞こえることがあったな。
「んじゃ俺はやることがあるから行くぜ。じゃあな。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!まだ聞きたいことがある!」
「嘘だろ?まあいいぜ。教えてやるよ。」
おk。仲間たちが帰ってくるまでコイツを質問攻めにしてやろう。
実際知らないことが多すぎる。
眠気をも吹き飛ばす勢いで俺は質問を始めた。
俺の知的欲求を満たすためだ。多少の犠牲は仕方があるまい。
―――――チリン。
俺がクルトに地獄の質問攻めをしている最中に、ドアの向こうで鈴がなった。
それと同時に、クルトの顔に命が戻った。
「た、助かった~~。」
おい、助かったとはどういうことだ。
てかまだ質問したいことあるんだけどな。
「なんでだ?」
「!?あ、ああ。言うのを忘れていたがここの拠点には防犯に鈴が仕掛けられていてな、誰かが通ると鈴がなるんだ。」
いや、普通に考えてお前ら泥棒だから。それ防犯じゃなくて防警だろ。
「もしかしたら警官かもしれないぞ?」
「警官?警備兵だろ?それはともかく警備兵だったらもっとドタドタと入ってくるからな。こんなふうに鳴るのは同胞が帰った時だけだ。」
「そうか。じゃあ質問は一回中断だな。」
「一回中断って後でまたやる気かよオオオオオオオオ!!!!」
目の前でなんか言ってるクルトは無視するとして、
もうすぐ他の孤児が来るらしいし、一度今まで聞いたことを整理しとくか………
まず、この世界はユニベールという世界らしい。
この世界は5つの大陸から出来ているようなのだが、クルトはこの大陸である
『トイチュ大陸』しか知らなかった。でもまあ学校とかにも行ってないし、
当たり前か。逆に知っていたらクルトを尊敬しなければな。
そして、この大陸は2つの大きな国と大量の小国で出来ているらしい。
ちなみにこの国は2大国家の1つ『ネゴチオ帝国』というらしい。
次に、人種だが、定番通り魔族、亞人、獣人、人族で別れるようだ。
魔族は戦闘能力、賢さが高いが数が少ない。亞人は種族によって異なるらしい。獣人も亜人と同じように種族によって異なるが、どの種族も身体能力は高く、魔法は絶対使えないらしい。最後に人族についてだが、人族は全体的に見ると、戦闘能力は低いが賢く、数が多い。
というか、このトイチェ大陸はほぼ人族で埋め尽くされているらしい。
ちなみに大体の異世界ものでは主人公がエルフとキャッキャウフフしたり、
獣人をモフったり、撫でたりしているが、俺にそんな予定はない。
断じて無い。
次は動物、魔物についてだ。
この世界には、俺を襲ったような狼みたいに地球と変わらない生物が生息しているらしい。
が、この世界では魔物、と呼ばれる存在がいる。
魔物は、動物が何らかの原因で凶暴化したものらしく、強い。
とても一般人じゃあどうやっても太刀打ち出来ないらしい。
しかも、魔物化する理由がまだ解明されてないらしい。
出来れば出会いたくないものだ。
しかし、そんな魔物どもが街にほとんど襲ってこないらしい。
理由は、冒険者なるものや警備兵たちが定期的に数を減らすからだそうだ。
ここまで聞いて「ロイドが冒険者になるぜ、キターーー」とか考えた君、現状を見なさい。俺は孤児なのだ。生きるために必要な物は金や名声では無い。
必要なのは食料なのだ。当然俺だって冒険者をしたかったんだが、
ここは涙をのんで諦めるしかないようだ。
チートの使い道がわかんねぇ。
最後に、最近の孤児事情。これは結構大事だ。なんたって生死に関わるからな。
まず、何故仲間と組んで生活するか、だ。
普通に考えたら仲間がいれば、食料の奪い合いになるし、見つかりやすい。
どう考えても損の方が大きい。
が、そこには異世界ならではの理由があったのだ。
この国では、孤児が生きることに対する敵対組織が多い。
警備兵や冒険者、さらには町の人ほぼ全員が敵だ。
なので、安心して眠ることさえ叶わない。
かと言って森のなかで寝れば動物に襲われるかもしれない。俺みたいに。
なので、寝るときには見張りが必要なのだ。
他にも、俺が今いるみたいに拠点で寝る、という手段もあるが、
この拠点自体がある一人の孤児の持ち物らしいので、どうやっても協力しないといけない。
だからといって食料の奪い合いがないわけではないのだが、
夜が安全かどうかは食料以上に生死に関わるので余程のことがない限り
仲間と組むらしい。
次に、この拠点は、スラムの地下に立っている。なので、警備兵がここに来る可能性は少ないそうだ。いくら孤児のものと言えども拠点と胸を張って言えるぐらいの性能はあるようだ。
ちなみに、拠点はここだけではないらしい。スラム内でポツポツと地下に埋まっているそうだ。
ちょっと待てハイレベルすぎだろ?とツッコミした所、
どうやら俺と同じ理由で捨てられた奴らが魔法で作ったらしい。
魔法パネェ。
そういえば魔法についてだが、孤児の中で使える人がいるから探せ、といわれた。人混みの中から探すとか『ウォー○ーを探せ!』よりむずいだろ。
というか結構孤児がいるのがなぁ。この世界結構ハードな気がする。
俺が教えてもらったことはここまでだ。
ここまで、と言っても案外クルトが色々知っていたので結構なことがわかった。
あとは魔法についてだけだな。
できればドアの向こうにいる仲間に魔法が使える奴がいるといいんだが。
そんなことを考えながらクルトのあとに続いて部屋から出た。
クルトはこれからもバンバン出ます。