103話 謎の語彙力
あれから何日か経ち、遂にシュウとギルが稽古から帰ってくる日になった。
どんな感じに強くなっているんだろうか。
帰ってきたら手合わせしてみるのも面白いかもしれない。
光属性の訓練も兼ねて。
あ、因みに一応図書館で魔力消費を抑える方法を調べてみたけど、
大した物がなかった。
唯一使えそうだったのは「魔法の規模を小さくする」だったが、
生憎俺は光属性のコントロールを上手く出来ていない。
『セイクリッドガード』は殆ど大きさを変えられないし、
『セイント・ブースト』は出力を最小限にしないと魔力回復を上回られるから調節の仕様がない。
『カラドボルグ』に関しては制御を諦めている。
使ってみて判ったが、あれは振り下ろすだけで精一杯の代物だ。
調節なんて出来る筈もない。
まあ、『デコラーレ・ピュリファイ』と『マグナ・ヘイレン』はどうにかなりそうだったけど。
要は、さっさと杖みたいな武器を手に入れて、魔法関連の称号を取ったほうが手っ取り早い、と言う結論に達した。
俺の筋力じゃあ杖を持ったらほぼ機動力無くなりそうだけど(自嘲)
割と真面目に。
毎日筋トレはしてるんだけどなぁ。
ちょっと待てよ、毎日筋トレしてるから身長が伸びないんじゃないか?
ぐあああああああああ!!!!!!!!
筋力と身長、どっちを取ればいいんだああああああ!!!????
――――――――コンコン。
「お!?」
今のはドアノックの音だな。
シュウとギルか?
俺は蹲るのをやめて、ドアを開けた。
「フハハハハハハハ!!!!庶民よ、もう一度この高貴なる私に仕える機会を与えよう!!!!」
………………。
「お帰り下さい。」
「なぜだぁ!!??」
え、誰かって?
あれだ、俺が昇格試験の時に勧誘に来た貴族の一人だ。
ただ、この人は口調がクッソ偉そうなのを除けば非常にフランクな人だ。
俺が今あっけらかんとした口調で答えたのが証拠である。
普通の貴族なら不敬罪だの何だのほざくらしいし。
「せっかく容姿端麗、眉目秀麗、気宇壮大な私が来てやったのに何たる言い草か…………。」
「でもどうせ俺の勧誘でしょう?
何度もいいますが俺はあまり人の下には付きたくないんで。
諦めて下さい。」
「その程度で私の不撓不屈、確乎不抜の精神は折れたりはしないのだよ!
君のその当代無双な才能を活かすには私のような博学卓識な男の援助が必要!君が雇われてくれた暁には博学才穎な私の頭と全知全能の象徴とも言える私の研究所を貸してやるぞ!」
うわあ、なんか凄いことになってる。
何じゃこの四字熟語のオンパレードは。
「しつこいですよ。
俺はこれから友人を迎えないといけないので早めに帰っていただけると有難いのですが。」
「本当にツレナイ奴だな君は!
まあ、今日はこのくらいにしといてやろう!
明日は覚悟しておくが良い!」
「もう来なくていいですよー。」
「フハハ!だが断る!!!!!」
貴族さんはそのまんま謎の高笑いをあげながら帰っていった。
全く、本当に嵐のような人だぜ。
俺が溜息を付いていると、またドアが鳴った。
今度こそシュウとギルだと思って勢い良くドアを開けた俺は、硬直した。
「お、ロイドか。稽古終わったぞ。」
目の前にいたのは何とギルマスだった。
「って、何でシュウとギルを背負ってんだ!?」
「ああ、体力切れだ。ちょっとベッドまで運ばせてもらうぞ。」
おいおい、どんだけおまいら頑張ったんだよ…………………………。
「稽古、そんなに厳しかったんか。」
「おう。何度も何度も実戦を繰り返したからな。
睡眠時間はたっぷり取らせたんだが。
流石に9歳にはキツかったみてぇだ。」
「成る程。じゃあ、戦力は期待していいよな?あ、二人のベッドはそこだ。」
「わかった。
期待していいぞ。もしかしたらお前に勝てるかもな。」
「フッフッフッ、強くなったのは二人だけじゃねえぜ?
俺も光属性魔法が使えるようになったからな。
まだまだ負ける気はしない。」
「お、光属性が使えるようになったのか。
そういえば上級悪魔を目をつけられたとか言ってたな。
それも原因は光属性か?」
「多分な。
まあ、当分はそんなのを気にせずダンジョンに潜ってみようと思う。」
「そうか。気をつけろよ。」
「勿論。あと、運んできてくれて有難う。助かった。」
「そりゃどうも。
んじゃ、俺は帰るぜ。じゃあな。」
「じゃあな。」
ギルマスが帰ったのを見届けて、俺は寝ることにした。
本当はダンジョンについて二人と話しあおうと思ってたんだが、寝てるんじゃあ仕方がない。
俺は蝋燭を消して目を瞑った。




