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8話 VSドア

主人公が奮闘(?)します。

転生してから1年が経つ。

ここ半年は魔力の修練よりも体を鍛える事に専念した。

その御蔭で俺は移動ができるようになった。

なんと!俺は10歩に一回は転ぶ二足歩行、木の葉も揺れぬ弱小パンチ、

そしてDS一個分(薄い方)のジャンプが出来る様になったのだ!

うん。しょぼい。


でも仕方がないのだ。なんたって毎日のミルクは少なすぎるし、

最近出るようになった離乳食っぽいのも結構硬くて飲み込みづらいのだ。

体がちゃんと成長するわけがない。


しかし、これらは半年の成果の中ではそんなに凄い方ではない。

俺がここ半年で出来るようになったことで一番大きいこと。

それは―――――



――――――――――話せるようになったことだ。



これは結構すごい成長だと思う。

話せる、ということは異世界の情報がえられる、ということだ。

つまり、今までできなくってもどかしい思いをしたことが出来るようになるかもしれないのだ。


が、俺はまだ飯を運びに来る少年にすら話しかけたことがない。

どうしても、人が目の前にいるとキョドってしまうのだ。

ここ1年人と話していないから耐性が減ってしまったのだろう。

ぼっち歴1年とか真性ぼっちの仲間入りできるレベルだし。

なので、俺は未だに会話できないでいる。


しかし、俺は転生してから1年が経ったことに気づいた。

このままではいけない。

こんな状況が続いてしまえば俺の異世界デビューはどんどん先送りになって

しまうだろう。それはあまりにも悲しい。

遂に、俺は話しかけることを決めたのだ。


まず、部屋から出よう。そう考えて俺はドアの前に立った。

そしてドアノブに手をかけようとしたした時、俺は重大な事実に気づいてしまった。

手が届かないのだ。


ぽくぽくぽくチーン。

ああ、久々に聞いたな俺の脳内木魚。


、とそんなことをいつまでも悲観視している場合ではない。

早急にこのドアを開けなければならないのだ。

さもなくばこの世界に出るのがまた遠くなってしまう。


よし、まずはドアを押してみよう。

腕力は非常に小さいが、俺は全力で押してみた。


シーーーン


が、何も置きなかった。

ならば魔法で押してみよう。

そう思いたち、強風でドアを押してみる。

が、ドアはガタガタ言うだけで開かなかった。


ここまできて、俺は作戦を変更することにする。

引くことにしたのだ。

よく言うじゃないか。押してダメなら引いてみな、てさ。


そう考えてまたドアノブに手をかけようとした時、俺はまた思い出した。

手、届かないんだった。

しかし、ここで諦めるほど俺は甘くはない。

俺が今ドアノブに手が届かない理由は身長が足りないからだ。

なら、身長を増やしてやればいい!

どうしたら身長が増やせるか。普通な人からしたら頭を疑うような議題を

俺は考え始めた。



そして、考え始めて3分後、俺は素晴らしいことを考えついた。

足に魔力の塊を付けて立てばいいじゃないか!

考えついたら即実行。

魔力の塊を足の裏につけて立ってみた。

が、魔力を球状にしていたから倒れてしまった。

おお、痛ぇ。

だが、体にはなんの怪我もなかった。良かった。

でも魔力が球状にしかならないのはヤバイな。立てないだろ。

よし、特訓だ。魔力の形を変える特訓をしよう。

俺は黙想を始めた。












体感で数時間後、俺は遂に完成させた。

今、俺は魔力の上に立っている。

魔力を長方形にすることに成功したのだ。

魔力は透明だから俺は浮いているようにみえるかもしれない。


あとはドアノブを下げて引くだけだ。そう思い、俺はドアノブを下げた。

いや、下げようとした。が、いくら頑張ってもドアノブは下がらなかった。

俺の腕力が低すぎたのだ。

…………


がちょーーーーーーーーーーん。


結構古いネタを持ち出しながら俺は現実に叩きのめされた。


しかし、ここで諦めるほど俺は甘くない(2回目)

自分の言葉(内心)は曲げない、それが俺の忍道だ!

某忍者漫画の言葉を借りる時は今だろう。

そう、俺は諦めてはいけないのだ。

せっかくの2度目の人生だ。有効に生きたい。

だからこそ、俺はこの壁を乗り越えてみせる!

ドアを開けるという決意を新たにし、俺は予め考えておいた手に移る。


今回は足を伸ばして失敗した。なら今度は手を伸ばせばいい!

我ながら素晴らしいアイデアを出した俺は、また特訓を始めることにした。

今度は、魔力を自由自在に動かす練習を。



が、ここまで結構無理をしていたので眠くなってきた。

一旦寝るか。
















目が覚めると、俺は手元に離乳食があるのに気づいた。

ちなみに、非常に量は少ない。しかも硬くて飲み込みづらい。

だが、今はそんなことはどうでもいい。

重要なのは何故か俺がベッドの上にいる、ということだ。

俺が寝た時は確かにドアの前で寝たはずなのだ。

俺はまだ筋力が低いので自力でベッドに上がるのは難しいし、

ついさっき覚えた魔力を長方形にするのは結構集中しないといけないので

寝ながら出来るはずがない。

まさに気分は推理ゲーム。

突破不可能なはずのベッドの厚み()を乗り越えた1歳児。

一体彼はどんなトリックを使ったのか!?真相をつかむのは君だ!





……………………

いや、もうだいたい気づいているよ?

ただ現実を直視したくなかっただけで。

でも認めるしかない。応とも、認めるよ。


「飯運びの少年が来たことくらいっ!」


思わず叫んでしまった。

だって会話をするためにドアを開けようとしたのに

それで寝ちゃってお陰で会話のチャンスを逃すとか本末転倒だろ!

ああ、くそっ!この飯の量とか隣の子が泣いても何もしないとか

おむつ(布)を取り替えるのが一週間おきについてとかいろいろ

言いたいことがあったのにぃ!

しかも聞きたいことはもっとあったのにぃぃぃ!

大体俺はいっつも注意力とか運が低いんだよ!

前世では掃除を忘れてすっ転ぶし、宿題は忘れるし、ポ○モンに関しては

急所食らいまくるし!

ああもう自分に腹が立ってきt――――――――――



―――――ガコン。



ん?俺はどうやら焦りすぎてたようだな。

落ち着こう、落ち着こう。Calm down。

よし、じゃあこれからどうするかを考えるか。

目的は外部の人と話そう、でいいかな。


1、ドアを開く。

2、少年を待つ。


結局はこの2つが最善策かな。

前者はうまく行けば早く外に出れるし、地味に俺のパワーアップになる。

後者はほぼ確実に会話ができる。

どっちがいいだろうか。うーん。






悩み続けること約十分間。

俺はドアを開けることにした。

ここが異世界であることがわかっている以上、力はつけておきたいからだ。

というわけで思いついたら即実行。

俺は再びドアの前に降り立った。

前回は腕力が足りなかったので失敗したが、今回は工夫することにした。

腕力が足りないのなら他のものでドアノブを下げればいい。

そして、他のものとは……もちろん、魔力だ。

さっきは魔力の形状を変えることに成功したので今回はリアルタイムで

コントロールしてみよう、という結論に達したのだ。

具体的にいうと魔力をフックのようにして伸び縮みさせながらドアノブを下げる、という感じだ。

じゃあ、特訓を始めるか。

俺は瞑想を開始した。











今、俺の目の前で、離乳食が浮いている。

もしもこの状況だけで全てを理解した人がいるなら、その人は余程の天才だろう。

というわけで現状を説明すると、今離乳食は俺が魔力で作った手で持ち上げている。

最初はフックでも十分だと考えていたのだが、イメージさえできれば簡単だったのでいろんな形を試してみたら成功したのだ。

長さに限界があるが、そこは魔力の足場も使って乗り切る。

途中で好奇心が爆発して変な方向に行きかけたが、なんの問題もない。

なんの問題も無いのだ。




魔力の手が使えるようになったので、俺は最大の強敵(ドア)に挑むことにした。

作戦は次のとおりだ。


1、魔力の足場を作る。

2、魔力の手でドアを開ける。

3、華麗に滑りこんで外に出る。

4、完璧!


これが一番シンプルでナイスな作戦だと思う。

さあ、始めるか。



まず、足場を作る。これは結構簡単だ。

次に、足場を維持したまま魔力の手を作る。

これは難しい。なんたって足に集中しながら手にも集中し、

なおかつ魔力が崩れないようイメージをしないといけない。

多分普通の人だとできない。

が、俺には奇妙な特技がある。

それは、たくさんのことに集中できることだ。

この特技は前世で身につけたものなのだが、結構便利なのだ。

どんくらいかって言うと、PCいじりながらポ○モンを育成&バトルをし、

更にはタブレットまで使える、みたいな感じだ。

今考えると俺ってオタニートロードまっしぐらだったんだな。

今回こそはならないぞ。電子機器なさそうだから引きこもりすらできなさそうだけど。



思考が前世の後悔へそれてる間に魔力の手が完成した。

あとはドアノブを下げるだけだ。

俺はリベンジを果たすべくドアノブに手をかけた。

がちゃり、とドアノブがなる。

さあて。ここからは俺とドアの綱引きだ。

魔力の手を縮めてドアを開けようとする俺。

開くまい、と抵抗(?)するドア。

両者の力は互角かのように見えた。

しかし、俺の踏ん張りによってドアはギギ、と悲鳴をあげる!

俺は勝利を確信し、一気にドアを引っ張った。



―――――ガチャン。


遂にドアが開いた。

なんという達成感なのだろう。俺は思わず涙を流した。

しかし、次の瞬間俺は絶望する。



―――――バタン。



そのままにしてしまったのでドアが閉まってしまった。


………神様、俺って呪われてんですか。


とてつもない落胆に俺は倒れた。が、神は俺を見捨てなかった。



―――――ガチャ。



一度は閉まったドアだったが、また開き始めた。

そして、そこから現れたのは―――――



―――――俺が待ちに待った少年の顔だった。














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