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mercy rain  作者: 塔子
46/57

【45】

「おかえり、早か…って、美雨?!何で?」



実結が、驚くのも無理は無い。


帰ると言って、出て行ったのにまた戻ってきたのだから。しかも、雨に濡れて。


結局、降り出した雨のせいで、引き返すしかなかった。



「いつまでも、そんな所に居ないで上がりなさい」



と言って、華江おばさんがタオルを渡してくれる。



「美雨ちゃん、先にお風呂入って。実結、着替え貸して上げなさい」



玄関を上がって、少し強引に華江おばさんに脱衣所に連れてこられた。



「あ、あの、おばさん」

「話は、後で。ふふふ」



着ていた制服を半ば奪うように取られ「乾かしておくから」と言われれば、「お願いします」と言うしかない。



温かなお湯の中で考える。


自分の気持ちを後先考えず、言ってしまった。もう幼馴染みには、戻れない。


妹として、存在する事も出来ない。


でも、もうこれ以上兄として見る事も出来なければ、妹として見られるのも嫌だ。


自分の気持ちを後先考えず、言ってしまった。


ただ言えるのは、もう迷わない!誰に何を言われても、私の気持ちは変わらない。


誰に何を問われても、私は心を偽らない。


誰に何を訊かれても、私の想いは消えはしない。





「…――う、みう!美雨!!」




名前を呼ばれてる事に気が付いて、驚いて湯船から立ち上がってしまった。




「え?な、なに?」

「着替え!置いとくね!」


「うん!ありがとう」

「私も入るから!」



それなら、私はもう出るから、と言おうとした所に実結はお風呂場に入ってきた。



「実結、まだお風呂入ってなかったの?」

「そういう事。たまには、美雨と一緒に入りたいじゃない」


「うん、小さい時はいつも一緒だった」

「こんな風に、湯船に入ってさ」



あの頃と比べると、私達二人は大人になった。


広く感じていた湯船もお風呂場も、今ではとても狭く窮屈だ。



「美雨には、訊きたい事もあるし」

「うん…」



逃げないと決めたばかりなのに、もうココから逃げ出したい気分になる。


でも、今、また逃げてしまっては何も変わらない。


進むと、決めた。


その道が、例え辛く悲しい道であっても。



「兄貴が、馬鹿じゃないのってぐらい浮かれて帰って来た」

「――うん」



うん?


言葉では、肯定の返事をしておきながら、心の中では、疑問形。


なので、何故?と首を傾げてみると、実結は――。



「しかも、あのバカ兄貴!嬉しそうに枕を抱き締めて、部屋中を悶え転がってるのよ!」

「……」



まさか!私には、ちょっと想像出来ないんだけど。



「兎に角、はっきりさせたいから、順序立てで訊くね」

「うん」


「兄貴は、美雨に告白したよね?」

「うん」


「まさかと思うんだけど、美雨はOKしたの?」

「?」



OKの意味が分からない。


何を私はOKするの?



「有り得ないと思うんだけど、付き合ったりするの?」

「えっ?!」



実結の付き合うと言った言葉に、過剰に反応してしまう。


OKって、そういう意味なの?



「そうよね~!美雨には、他に好きな人が居るんだもんね!!」



よく理解出来ていない私をよそに、実結は一人勝手に納得している。



「美雨の兄貴に対する気持ちって、兄妹愛、家族愛だもんね!!!」





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