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mercy rain  作者: 塔子
41/57

【40】

実結の事だから、根掘り葉掘り矢継ぎ早に訊かれて、何をどう答えればいいのか分からないと、いう風になるんだろうって思っていたのに…。



「話は、放課後」



私も何をどんな言葉にして実結に尋ねれば良いのか、考える時間が出来た。


結局、何事もなくいつもと同じ日常を過ごす。


構えていたのは私だけで、実結はいつもと同じ態度で接してくれる。


だから、私も放課後まで変わりなく授業を受ける。








放課後は、思っていたよりも早くやって来た。


実結が「ゆっくり、話がしたいから家に寄ってね」と、既に決定事項だという風に話す。


ここで拒否なんてしようものなら、実結に拉致られて強引に監禁でもされそうな勢いだ。


仕方なく実結と並んで、下校する。


つい先週まで、この道を通って通学していたのに、目に見える景色がどこか異なる世界に迷い込んだように見えるのは、何故だろう?


今まで一度もこの道を長いと感じた事なんて無かったのに、今日に限ってとても遠く感じる。


見えてきたアパートに視線を上げる。


ちゃんと足を付けて歩いているはずなのに、ふわふわとした浮遊感を感じながら、実結と私はエレベーターに乗った。








鞄からカギを出して玄関を開ける実結の後ろに立つ私は、その様子をぼんやりと見ていた。


玄関が開き、私も続いて中に入る。


実結がカギを掛けたと同時に、腕を捕まれる。


「え?!な、なに?実結」

「昨日の事、何が有ったか詳しくは知らないけど、兄貴の様子を見れば分かる」


「………」

「美雨には悪いけど、ここは兄貴の為にも悪者になって欲しい」



実結の言いたい事が、私には伝わらない。


何がしたいのか、私を悪者にってどういう意味?


よく分からないという風な表情で実結を見つめると「私の言う通りにしてくれればいいから」と何故かにっこり笑った実結が居る。


ただ素直に頷けば良いのか、それとも頑なに拒否をすればいいのか。


何も言わない私に、実結は言う。



「“私には、好きな人が居る”」

「え?!」


「“だから、ヒロ兄の気持ちは迷惑なの”」

「っ?!!!!」


「えーっと、ついでに“ヒロ兄なんて、嫌い!大っ嫌い!!”」

「!!!!!!」



唖然とする。


私に、今、実結が言ったセリフを、そのままヒロ兄に言うの?


そんな事、出来ない!


例え、嘘でも私には言えない。




「美雨には、ほんとに悪いと思う。でも、兄貴には、美雨の事一日でも早く忘れさせたい」

「え?」


「それに兄貴の事“嘘つき”って、言ったんだって?かなり、ヘコんでるんだよね」

「………」




待って。


今、実結は――「兄貴には、美雨の事一日でも早く忘れさせたい」って、言ったよね?




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