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mercy rain  作者: 塔子
27/57

【26】


午後の日差しの中、一人学校の正門を通り過ぎる。


昨日の事、特に問題が有ったようでもなく、ほっとする反面、担任は何を言いたかったのか、という事を思いながら歩く。


確か…、ママが…、電話で…?


自分の事ばかり考えていたから、担任の話なんてこれっぽっちも聞いていない。


後でママに話を聞けば分かるかな?


案外、聞かない方がいいかもね。


今、この時は、この程度にしか考えていなかった。







何となく、足の向くのは華江おばさんが経営する美容院。


勿論、ヒロ兄も一緒に働いている訳で…。


さりげなく外から中の様子を見入る。


こんな昼間から、制服を着た高校生がウロウロしてるのは不自然なので、立ち止まる事はせず歩くスピードをほんの僅かだけ緩めてヒロ兄の姿を探す。



――い、居た!!



モップを持って床を掃除しているヒロ兄。


思わず目を細め、小さな吐息が漏れる。


ドキドキする胸の鼓動を抑えるように、両手で鞄を抱き締める。


普段と変わらず、いつもと同じ風景だ。


華江おばさんの下で一人前の美容師になる為に、一生懸命頑張ってる姿を見るのが一番好き。


勿論、ご飯を作ってるヒロ兄も、テレビを観て笑ってるヒロ兄も――。


誰よりも、好き。


でも、もう決めた。もう、諦めるって。


告白しようって決心したけど、あっさり揺らいでしまう自分にも、うんざりだ。


このまま、消えてしまいたい。







結局、家に帰っても何もする事が無く、一応風邪を引いている訳だし、病み上がりだし、眠れないけどベッド中でぼんやり過ごす。



「美雨、起きてる?」

「…ママ!」



「具合は、どう?」と尋ねられて、「…うん、まぁまぁかな」と曖昧に答える。


ママが言うには、学校から早退したと会社に電話連絡が入り、仕事を切り上げていつもより早く帰ってきたと話してくれる。



「熱は、無いの?」

「…うん」


「それとも、何か有った?」

「?」


「逆に、何も無かった?」

「っ?!」


「…それで、いいの?」

「………」



一言も喋ってないのに、ママは「ふ~ん、そうなの」と一人勝手に納得している。


呆れているようで、怒っているようで。



「美雨って、普段はしっかりしてるのに、自分の事になるとダメよね~」



ママの言う事は、もっともで。いつも自分の事は後回しにしがち。


それは、性分なので仕方ないじゃない!



「そんな美雨だから、ついママも頼ってしまうと言うか、甘えてしまうのよね~」



小さな頃から、一人で出来る事は全て自分でしてきた。


我慢出来る事は、誰にも何も言わずやり過ごした。



「美雨は、もっと我儘になってもいいと思う。ママに対しても、言いたい事が有るなら言ってもいいのよ」







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