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mercy rain  作者: 塔子
25/57

【24】


ヒロ兄に会えた。


少しだけだけど話も出来た。家にも戻ってくれた。


ホっとした気持ちと共に、あまりにも強い眠気に襲われ、何とか着替えだけしてベッドに潜る。


もう今は何も考える事もせず、ただ眠りに身を任せる。


明日になれば、ちゃんとヒロ兄に会って、今までと変わらす実結と3人で過ごせばいい。


引越しするまで、転校するまで、楽しい思い出をいっぱい作ろう。




――あれほど、決意したのに…。


――ママの応援も有ったのに…。




やっぱり、私は私。


そう簡単には、変われない。


結局、平穏がいい。私のせいで周りのみんなを巻き込みたくない。


私が、ほんの少し頑張って諦めれば良いだけの事。


今までと同じ。何も変わらない。









額に心地良い冷たさを感じて、ゆっくりと目を開ける。



「…ママ」

「気分は、どう?」



そんなママの言葉に、思わず“どうして?”と思う。


あ、そうか、私、風邪を引いて学校休んだ事になってるんだ、という事を思い出す。



「…ママ、私」

「鼻声ね。何か食べた?」



ゆっくりと首を振ると「分かったわ」と言って、ママはキッチンに向かう。


今朝は、インスタントのカップスープだけ。お昼は何も食べずに寝てしまった。


机の上の時計を見ると、3時半を過ぎた頃。学校は6時限目の授業が終わった頃。


お粥と薬と体温計が載ったお盆を持って現れたママは「昨日、やっぱり一緒に帰れば良かったわね」と申し訳なさそうに部屋に入ってきた。


体温を測ると37.6℃。


少し頭と喉が痛いのと、だるい感じがする。


自業自得というのかな、雨に濡れて、そのまま眠れずに起きていたのだから。


しかも、風邪だと嘘を付いたのが、本当になって……。



「…ママ、仕事は?」

「今日は、早退しちゃった」


「ごめん、なさい…」

「ふふ、いいのよ、今まで母親らしい事してこなかったんだもの。私が早退しないと、和也さんが早退するって言うから…。さすがに、それはね」



食事をした後、薬を飲んで、もう一度眠りに付く。






夕方、実結が様子を見に来てくれた。



「今朝は、ありがとう」



先にお礼を言うと「本当に風邪ひくって、美雨って凄い」」と感心される。



「風邪もそうだけど、怪我した所はどう?」

「う~ん、平気。普通に、擦り傷だもん」


実結は「それより、はい」と言ってノートを渡してくれる。


「きちんと授業も聞いて、ノートも取ったから」

「実結~、ありがとう!!」


「久々に真剣に授業聞いたから、疲れたわよ~」

「私が言うのもなんだけど、普段からちゃんと勉強しておいた方がいいよ」


「ま、コレを機に頑張ってみますか」

「期末試験もあるからね。追試になって夏休み返上は嫌でしょう?」


実結との和やかな時間。


あと何日?あと何回?こんな風に実結との時間を過ごせる?


実結は、私の体調を気遣って早々に帰り支度をする。


「ちゃんと休んでないと、熱も下がらないぞ」

「大丈夫、明日には治ってるよ。ちょっと微熱が出ただけ」


「美雨は頑張るのもいいけど、我慢はダメだからね!!」

「いつも気に掛けてくれて、ありがとう。実結」


「じゃあ、明日」

「うん、明日ね」



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