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mercy rain  作者: 塔子
17/57

【16】

マンションの近くを散策する事になった。


綺麗な緑溢れる公園。


駅まで行く途中に有るスーパーに、コンビニ。


もしもの時にと、内科医院。


そして、私が転入予定の高校。


休日ということもあり、校内から聞こえてくるのは運動部の掛け声とブラスバントの演奏。


マンションから近いという事と、何より県内では有名な進学校。


レベル的に転入出来るかどうか、不安ばかりだけどここまで来たら、後には引けない。



そして、もう一つ。



引けないものは、ヒロ兄への想い。


宙ぶらりんのまま、放置するには大きくなり過ぎて見て見ぬ振りも出来ない。


かと言って、告白するまでもなく失恋は確定されている。


告白すると決めてはみたものの、このまま会えず離れてしまった方が良いかも、と弱気な気持ちにもなる。


ううん。


それでは、ダメ。


哂われてもいい、厭きられてもいい。


この想いを、無かった事になんて今更出来ない。








晩ご飯は、お父さんのマンションで3人で食べる事になった。


食事には少し早いけど、ママと二人でキッチンに立ち、あーでもないこーでもないと言いながら食事の準備をする。


お父さんが、リビングで雑誌のページを捲りながら、ご機嫌に鼻歌を歌っているのが微かに聞こえてくる。


ママに「あの歌、何?」って聴くと「何でも、昔のアイドルの曲だって」と教えてくれた。



「レコード、見せてもらったら?」

「れ、レコード?!」



食事中、話題はお父さんが歌っていた昔のアイドルの話になった。


当時の話も加えながら、お父さんが10代20代の頃の話をしてくれる。


レコードも初めて見た。


私にしてみれば、タイムトリップものだ。





楽しいひと時は、あっという間に過ぎていき――。



私は、アパートに帰る事にする。


明日はいつも通りに学校があるから。


ママも「一緒に帰る!」と言うけど、お父さんと一緒にここに泊まるように説得する。3人で暮らすまで、2人の時間も大事にして欲しい。


それならと、お父さんは家まで送って行くよ、と言ってくれる。


けれど、せっかく覚えた駅までの道のりを自分で歩いて行きたい事を伝える。


時間もそれほど遅くない、7時半を過ぎた頃。


駅まで歩いて電車に乗っても、家に着く頃には9時にもならないと思う。


着いたらすぐに電話をする事、お父さんに言い付けられエントランスで別れる。





電車を降りて、改札を出るとぽつぽつと雨が降り始めていた。


家路に向かう人たちは傘を差す人も居れば、傘を持っていても差さずに早足で行く人も居る。


慌ててコンビニ入って、ビニール傘を買わなくてはいけないほどでもないし、冷たい雨という感じでもない。


アパートまで急いで行けば、10分も掛からない。


私も行き交う人に倣って、早足で飛び出した。









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