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mercy rain  作者: 塔子
16/57

【15】

お父さんの車でやって来たのは、私達3人が新しく生活する街。


目の前にそびえるのは、高級マンション。


ここがお父さんの住んでいる所。


一体、何階まであるの?と思わず数えたくなるけど、途中で数えるのが嫌になるほど高い建築物。


お父さんは、マンションのエントランスに入り、セキュリティを解除する。



「ここの、最上階なんだよ」

「!」



最上階という言葉に、かなり分かり易くビクっと反応してしまった。



「もしかして、高い所、嫌い?」

「平気です」



エレベーターに乗り込み、慣れた様子で25とあるボタンを押すのはママ。


もう何度もここへ足を運んでいるのは知っている。


エレベーターが上昇するにつれ、母娘ともワクワクするのが止められない。



高所恐怖症ではなく、まさにその逆。


私もママも、高い所が大好き。






今まで、一人で暮らして居たなんて信じられないぐらい広い部屋。


洗練されたお洒落なモデルルームのよう。


でも、既にところどころママの物が置いてあったりして、戸惑う事無くここで生活が始めれそう。


リビング、キッチン、主寝室、バスルームやトイレと順番に見て回る。



「ここが、美雨ちゃんの部屋だよ」



そこは、何も置いてない部屋。唯一は有るのは淡いピンク色のカーテンだけ。



「広い…、でも広過ぎだよ」



ピカピカのフローリング。スリッパを履いているとは言え、入室するのにちょっと躊躇してしまいそう。



「そうかな?でも、机やベッドを置いたら、それほどでもないよ」



部屋を案内してくれたお父さん。


ママはキッチンの方へ行ってしまっている。


他の部屋も見て回る。ちょっとしたお宅訪問気分。


凄過ぎる、5LDKなんて!



「ここは、ペットも飼えるから」

「!」



また、何とも分かり易く反応してしまう。


さすがに、お父さんも分かったらしく「引越しして落ち着いたらペットショップに行こう」と柔らかな笑みを浮かべる。



「世話なんて出来るの?美雨」



ママはトレイに紅茶セットを載せて、リビングにやって来た。


ソファに座って、ゆっくりと3人で紅茶をいただく。



「う~ん、仔犬も可愛いと思うけど、まず先に妹とか弟が欲しいかな~」



ぶっ!


真っ赤な顔をして、紅茶を噴出しそうになるお父さん。



がちゃ!


カップを割れそうなほどの勢いで、ソーサーの上に置くママ。



「からかわないの!美雨!」


「別にそういう訳じゃ……」


「俺、頑張って、産むよ!!」



「「えっ??」」



私とママの声が重なった。勿論、視線の向く先も…。


両拳にグっと力を込め、気合の入ったお父さん。


“頑張る”のは、まぁ分かるけど…。


“産む”のは……?



「あ、いや、あの、こ、子育て!頑張るのは、子育ての方だから!!」



必死になって言い訳をするお父さんが可笑しくて、ママと一緒に笑い合う。


そんなに笑わなくても…と照れて、かなり恥ずかしそうにお父さんも笑う。


これからの新しい3人の生活が、こんな風に笑い声が絶えない毎日が続けばいい。



きっと、近い将来もう一人家族が増えるのを思い浮かべながらー―。





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