表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
mercy rain  作者: 塔子
15/57

【14】

昨夜、降っていた雨が嘘のように上っていた。


雲間から望む太陽の眩しい日差しが、雨に濡れた全ての物を照らし煌かせている。


今日は、そんな清清しい朝。




日曜の朝、久し振りにママと一緒に遅めの朝ご飯を食べた後、出掛ける準備をする。



「美雨、10時になったら和也さんが迎えに来るからね」

「はーい」



のんびりもしていられない。時計を見ると丁度9時半。


ママと二人して着替えを始める。


“和也さん”というのは、高梨さんの事。


いつの間にかママは“和也さん”と呼んでいる。


そういう私は未だに“高梨さん”だ。そろそろ私も――変わらなければと思う。


いろんな意味で…――。









私から見る高梨さんは、おっとりした優しそうな男の人。


眼鏡がとても似合う、柔らかな笑みを見せる俳優さんみたい。


なのに、乗り付けてきた車は、黒のスポーツカータイプ。


イメージと合わない。



「ご、ごめんね、美雨ちゃん。やっぱりレンタカーにすれば良かったかな」

「……いえ」



申し訳なさそうに後頭部に手を当てて、謝ってくれる高梨さん。


ちょっと、絶句気味な私。


だって、後部座席があるにはあるんだけど、おまけ程度で普通に座れないんですけど。



「別に良いわね、美雨」

「……うん」



私にしか分からないママの圧力に、否定の言葉は出て来ない、でも――。



「私、こういう車、大好き!だから、次は助手席に座らせてね」



と言うと「え?」と、ちょっとびっくりする高梨さん。



「私を、ドライブに連れてってという意味です」



私の言いたい事を理解した高梨さんは、目じりを下げて照れまくり。



「あ~~!美雨だけズルい!和也さん!勿論、私も連れてって!」



ママと二人で、まるで友達のように、姉妹のようにはしゃぐ。



「こんな素敵な奥さんと、可愛い娘に言われるなんて嬉しいというか、幸せ」



二人だったのが三人になって、きっとこんな事がこれから日常になって幸せが積み重なって行けば良いと思う。



「仕方ないな、ママは!最初はママに譲ってあげるから、ママの次にお出掛けようね。お父さん」



その瞬間、ママと高梨さん私を見つめてくる。


まだ、きちんと入籍はまだって聞いているけど、もう私達は親子で家族だから。



「た、高梨さんの事“お父さん”って呼ぶのはダメ?」



戸惑いがちに尋ねると。



「だ、ダメじゃないよ!!」



と、お父さんが必死になって答えるから、それが可笑しくてまた笑い合う。





区別を付けるのは、良くないかもしれないけど、記憶はおぼろげで曖昧だけど、パパの事ずっと忘れたくない。



私の中で、高梨さんはお父さん。


たった一人、私の父親は、パパ。





どんなに晴れの日が続いても、雨の降る日の事もいつも大事にしたいの。



それが、とても悲しく辛い想い出でも……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ