【11】
朝ごはんを済ませ、洗濯物も干し、お弁当も作り、ママの分のご飯も用意して、学校へ行く準備をする。
眠っているママの事を気遣いながら、そーっと靴を履き玄関を開ける。
「――っ?!」
扉の向こうに、実結が少し俯き加減で立っていた。
「――おはよう、美雨」
「お、お、おはよ…」
一瞬言葉が出なかったほど、ビックリした私に実結は「少し話ししてもいいかな?」と覇気が無く言う。
明らかにいつもの実結とは違う。いつもは、明るくて元気なサバサバとした感じなのに。
並んで学校へ向かう通学路。
時間に余裕があるので、ゆっくりと歩きながら、実結の言葉を持つ。
なのに、難しい顔をして何をどう言おうか考えてるのが、手に取るように分かる。
「何か有ったの?」
「な、な、何か、有ったのじゃないでしょう!!美雨!!」
話し辛そうだったから、掛けた言葉なのに、実結に思い切り怒鳴られる。
「あ、え、ご、ごめんっ」
「だから!!どうして、美雨が謝るの!!謝らないといけないのは、こっちなのに!!」
「………」
「………」
お互い、しばらく口を閉ざす。
「――美雨、ごめん」
先に沈黙を破ったのは、実結だった。
「昨日、私が美雨の部屋に泊まれば良かったんだ」
「…それは――」
それは、違うよって言いたかったのに、実結は私の言葉を遮って話を続ける。
「兄貴も、バカだよ…。あんな事…」
「――実結、聞いて!昨日の事、ちゃんと話すから」
昨夜の出来事を、そのまま話す。
隣のヒロ兄の部屋から、呻き声が聞こえてきた事。
“水”と言われ、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを渡そうとした事。
寝惚けていたヒロ兄が、私に抱き付いたきた事。
その瞬間を実結が見て、激怒した事。
私の話を聞き終えた実結は、少し考えて――。
「もしかして、兄貴、完全に寝てた?」
「うん、夢と現実がごっちゃになってみたい」
「………」
「………」
また、二人して沈黙。
でも、先に言葉を発したのは私。
「ヒロ兄は、悪くないんだよ。夢を見ていただけだもの」
「……そ、そうね。夢か~。アハハハ」
どういう訳か、実結はぎこちなく笑う。
そんな実結を不思議に思うけど、私は「ヒロ兄の事、怒らないであげてね」と言うと――。
「実はさ、しばらく“美雨接近接触禁止令”出しちゃってさ」
……え?何?…それ?
“美雨接近接触禁止令”って?
「確かに、昨日は一方的に兄貴の事、怒ったけどさ。でも、夢を見ていたと言っても兄貴が悪い」
「…実結?」
「例え、寝惚けててもアレはダメ!!」
「………」
「美雨が許しても、私は許さん!!」
「………」
朝、玄関先で俯き加減でしおらしく立っていたあの実結は、もう居ない。
あれは一体、誰だったの?って訊きたくなるぐらい。
元気ないつもの実結に戻ってくれたのは嬉しいけど、まさか、こんな展開になるなんて思いも寄らなかった。




