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mercy rain  作者: 塔子
12/57

【11】

朝ごはんを済ませ、洗濯物も干し、お弁当も作り、ママの分のご飯も用意して、学校へ行く準備をする。


眠っているママの事を気遣いながら、そーっと靴を履き玄関を開ける。



「――っ?!」



扉の向こうに、実結が少し俯き加減で立っていた。



「――おはよう、美雨」

「お、お、おはよ…」



一瞬言葉が出なかったほど、ビックリした私に実結は「少し話ししてもいいかな?」と覇気が無く言う。


明らかにいつもの実結とは違う。いつもは、明るくて元気なサバサバとした感じなのに。


並んで学校へ向かう通学路。


時間に余裕があるので、ゆっくりと歩きながら、実結の言葉を持つ。


なのに、難しい顔をして何をどう言おうか考えてるのが、手に取るように分かる。



「何か有ったの?」

「な、な、何か、有ったのじゃないでしょう!!美雨!!」



話し辛そうだったから、掛けた言葉なのに、実結に思い切り怒鳴られる。



「あ、え、ご、ごめんっ」

「だから!!どうして、美雨が謝るの!!謝らないといけないのは、こっちなのに!!」


「………」

「………」


 

お互い、しばらく口を閉ざす。



「――美雨、ごめん」



先に沈黙を破ったのは、実結だった。



「昨日、私が美雨の部屋に泊まれば良かったんだ」

「…それは――」


それは、違うよって言いたかったのに、実結は私の言葉を遮って話を続ける。



「兄貴も、バカだよ…。あんな事…」

「――実結、聞いて!昨日の事、ちゃんと話すから」



昨夜の出来事を、そのまま話す。


隣のヒロ兄の部屋から、呻き声が聞こえてきた事。


“水”と言われ、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを渡そうとした事。


寝惚けていたヒロ兄が、私に抱き付いたきた事。


その瞬間を実結が見て、激怒した事。



私の話を聞き終えた実結は、少し考えて――。



「もしかして、兄貴、完全に寝てた?」

「うん、夢と現実がごっちゃになってみたい」


「………」

「………」


また、二人して沈黙。


でも、先に言葉を発したのは私。


「ヒロ兄は、悪くないんだよ。夢を見ていただけだもの」

「……そ、そうね。夢か~。アハハハ」


どういう訳か、実結はぎこちなく笑う。


そんな実結を不思議に思うけど、私は「ヒロ兄の事、怒らないであげてね」と言うと――。



「実はさ、しばらく“美雨接近接触禁止令”出しちゃってさ」



……え?何?…それ?



“美雨接近接触禁止令”って?




「確かに、昨日は一方的に兄貴の事、怒ったけどさ。でも、夢を見ていたと言っても兄貴が悪い」

「…実結?」


「例え、寝惚けててもアレはダメ!!」

「………」


「美雨が許しても、私は許さん!!」

「………」



朝、玄関先で俯き加減でしおらしく立っていたあの実結は、もう居ない。


あれは一体、誰だったの?って訊きたくなるぐらい。


元気ないつもの実結に戻ってくれたのは嬉しいけど、まさか、こんな展開になるなんて思いも寄らなかった。







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