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mercy rain  作者: 塔子
11/57

【10】


結局、一睡も出来ないまま、朝を迎えた。


昨日の豪雨が嘘のように、太陽が眩しい光を私の部屋に届けてくれる。



「…ただいま」



物音を最小限にして、家の中を伺うように小さな挨拶をしてママが帰って来た。



眠っていても、起きていても、ママは必ず自分の部屋ではなく私の部屋を先に見に来てくれる。



「…起きてたの?美雨」

「眠れなくて…」


「まだ、雷、ダメなの?」

「………」



確かに、この歳になって、雷がダメというのも少し恥ずかしいような…。


でも、今回の事は雷が原因ではない。


ママは、ベッドに上で膝を抱き、何も答えない私をそっと抱き締めてくれる。



「それとも、何かあったのかな?」

「………!!」



こんな朝方まで仕事をして大変なのに、いつも私の事を一番に考えてくれているのが、伝わってくるから、自然に涙がホロリとこぼれてしまう。



「ヒロくんと、何かあったのね」

「――っ!!!!」



ママが、いとも簡単に正解を当ててしまって、俯いてた顔を上げる。



「どんな気持ちも、言葉にして伝えないと苦しくなるばかり」

「……ママ!どうして、知って――」


「美雨は、私の大切な娘だもの」

「………」


「好きだと伝える事が出来る人が、居るって素敵な事よ」

「ママ……」



誰にも内緒にしていた、実結にさえ気付かせずに隠してた気持ちは、ママにはあっさり見破られていた。



「ママは、どんな時でも美雨の味方」

「わ、私!――っ」



ふわりと微笑むママ。




二人っきりの家族だからこそ、目に見えない家族の絆は強いと改めて感じた。









ママは、小さな欠伸をして「お昼まで休むわ〜」と部屋を出て行く。


机の上の置時計を見ると、5時45分を過ぎたところ。


朝食の用意をして、洗濯をして、学校へ行く準備をしても時間には余裕がある。


眠ってしまうには時間が少ないと思い、洗面所で顔を洗い鏡の中に居る自分自身に気合を入れる。









ヒロ兄に、この想いを伝えよう。


100%、振られると分かっていても、逃げてばかりでは何も始まらない。


ヒロ兄は困った顔をするだろう。


実結は私の事、どう思うかな?


 



そう考えると、怖くてたまらない。


でも、もう何もかも限界に達している。

 

いつまでも、閉じ込めて、隠し続けて、見ない振りをするなんて出来なくなってきている。





――どんな気持ちも、言葉にして伝えないと苦しくなるばかり。





ママの言葉を、呪文のように繰り返した。












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