第70話 ファストフード革命! 古龍も唸る超特大バーガーセット
エデンのラウンジには、強炭酸サイダーの泡が弾ける音と、それ以上に暴力的な、香ばしい肉の焼ける匂いが充満していた。
「……パーツは揃った。温室で収穫した瑞々しいレタスとトマト。さらに進化した強炭酸サイダー。……ならば、これらすべてを一つにまとめ、最高に不健康で最高の満足感を得られる『完全食』を生み出すのが僕の役目だ」
アルリックが調理台の上に並べたのは、自慢のスチームコンベクションオーブンで焼き上げた、表面にゴマを振った黄金色のバンズだ。
「……バーガーか! 以前、古龍様が来た時に作った、あの伝説の肉塊だな!」
脳筋騎士レオナルドが、期待に胸を膨らませて身を乗り出す。
「ああ。だけど今回は、温室の野菜と強炭酸サイダーを組み合わせた『究極のセットメニュー』として提供するよ」
***
まずは主役のパティだ。
牛の粗挽き肉に、少量の牛脂を加え、あえて練りすぎずに成形する。
「(解像度を上げろ。……メイラード反応を最適化。……表面はカリッと香ばしく、中は肉汁を閉じ込めたミディアムレアに焼き上げる)」
ジューーーッ!!
鉄板の上で肉が踊り、弾ける脂の音が食欲を直撃する。その上に、とろけるチェダー風の濃厚チーズを二枚乗せ、余熱でとろりと溶かす。
次に組み立てだ。
軽くトーストしたバンズの底に自家製マヨネーズを塗り、温室で採れたばかりの、シャキシャキとした食感が自慢のフリルレタスを敷く。その上に厚切りの完熟トマト、肉厚なパティ、そして飴色になるまで炒めた玉ねぎを高く積み上げる。
「仕上げに、ジャガイモを細長く切り、二度揚げで外をカリカリに仕上げた『フレンチフライ(フライドポテト)』を添えて……」
ドンッ!!
目の前に現れたのは、もはや塔のような高さの『エデン・ダブルチーズバーガー』だ。
「……これ、どうやって食べるんですの? お口に入りませんわ!」
エレノアが目を丸くする。
「……行儀なんて気にしなくていい。こうして紙に包んで、上からギュッと潰すんだ。……さあ、いって」
***
実食の時が来た。
レオナルドが、巨大なバーガーを両手で掴み、大口を開けてかぶりつく。
ガブリッ!!
「…………ッッ!!!」
レオナルドの口から、溢れんばかりの肉汁が滴り落ちる。
「……美味ぇ!! なんだこれ、肉の塊を喰らってる満足感がすげぇ! そこにレタスのシャキシャキ感とトマトの酸味が混ざって……全然重くねぇぞ!」
「わたくしも……んっ、んんっ! このポテトの絶妙な塩気と、お肉の濃厚な脂……。なんて背徳的なお味ですの。でも、手が止まりませんわ!」
エレノアも、口の周りにソースをつけながら夢中で頬張っている。
「……ここで、強炭酸のサイダーを流し込んでみて」
アルリックの言葉に促され、二人はキンキンに冷えたサイダーを一気に煽った。
ゴクッ、ゴクッ……プハァァァッ!!
「……っ!! これだ!! 肉の脂を、シュワシュワの刺激が一瞬で流し去ってくれる! そしてまた次の『一口』が欲しくなる!」
レオナルドが絶叫する。
炭酸の刺激が、ジャンクな味をより鮮烈に引き立てる。このループこそが、ファストフードの魔力だ。
***
その時。
ドォォォォォン……!
屋敷が大きく揺れた。
「キュウゥー!(僕にもちょうだいー!)」
庭に降り立ったのは、香りに釣られて飛んできた古龍のベビーと、その巨大な影だった。
「……やれやれ。ドラゴンサイズを焼くには、また火力を上げないとね」
アルリックは苦笑しながら、再び鉄板に向かった。
温室の野菜、耐圧瓶のサイダー、そしてこのバーガー。エデンの「食のインフラ」は、一つの完成形を迎えたのだった。




