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魔法の解像度を上げたら、世界が快適になりすぎた  作者: 茗子


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第55話 輝く黒豆とモチモチの死闘

「……あけまして、おめでとうございます!」

 エデンの東の空が白み始め、神々しい『初日の出』が顔を出した。

 屋敷の屋上で、アルリックと仲間たちが並んで太陽を拝む。

 キリッと冷えた空気が、新しい一年の始まりを告げていた。

「うむ。……めでたい。実にめでたいのう」

 国王オスワルドが、朝日を浴びて目を細める。

 その横で、カエデとジンは正座をし、深々と太陽に頭を下げていた。

「……今年も、美味い飯と良い戦いに恵まれますように」

 拝み終わった一行は、コタツのあるリビングへと戻った。

 そこには、昨日のうちにアルリックが仕込んでおいた、漆塗り(風の魔法加工)の重箱が積まれていた。

「さあ、朝ごはんはお正月料理の定番、『おせち』だよ」

 パカッ。

 蓋を開けた瞬間、宝石箱のような色彩が飛び出した。

 ・ツヤツヤに輝く『黒豆』。

 ・黄金色の『栗きんとん』。

 ・伊達巻だてまき

 ・紅白のかまぼこ。

 ・数の子。

 ・海老のうま煮。

「……おおぉぉ……! 美しい……! まるで芸術品ですわ!」

 エレノアが感嘆の声を上げる。

 レオナルドは、黄金色の栗きんとんを指差した。

「おい、これは金塊か? 食えるのか?」

「『栗きんとん』だよ。……金運を呼ぶ縁起物さ。甘くて美味しいよ」

「マジか! 金運!」

 レオナルドがパクっと一口。

 ねっとりとしたサツマイモの甘みと、栗のホクホク感が広がる。

「あめぇ! スイーツみてぇだ! これで金持ちになれるなら一生食うぞ!」

 カエデは、黒く光る『黒豆』を箸で慎重につまんだ。

「……シワひとつない。見事な炊き上がりだ。……これには『マメ(勤勉)に働き、健康に暮らす』という意味があるのだな?」

「その通り。……あと、この『数の子』は、プチプチした食感と、子孫繁栄の願いが込められているんだ」

 アルリックの説明を聞いて、国王が反応した。

「子孫繁栄……! ううむ、ルディウス(息子)にも食わせねばならんのう。……早く孫の顔が見たいわい」

 国王が切実な願いを込めて数の子を噛みしめる。

 ポリポリ、プチプチ……。

 心地よい音が響く。

        ***

 おせちを楽しんだ後は、いよいよ本丸。

 醤油ベースのすまし汁に、鶏肉、小松菜、そして香ばしく焼いた『切り餅』を入れた椀物が運ばれてきた。

「……『お雑煮ぞうに』だよ」

 湯気と共に、焼いた餅の香ばしい匂いが漂う。

 エレノアがお椀を覗き込む。

「この白い四角いものが……『お餅』ですの?」

「そう。……もち米を蒸してついた、粘り気のある食べ物だ。よく噛んで食べてね。……喉に詰まらせると、天国が見えるから」

「えっ!?」

 不穏な注意書きにビビりつつ、エレノアは箸で餅を持ち上げた。

 ビヨ〜〜〜〜〜ン。

「きゃっ!? 伸びますわ! 生きてますわ!?」

 どこまでも伸びる白い物体。

 なんとか口に運び、ハムッと噛み付く。

「……んぐっ、んぐっ……!」

 強い弾力。

 だが、噛めば噛むほど、米の甘みが滲み出してくる。

 それが、鶏の出汁が効いた汁と絡み合い、絶妙なハーモニーを奏でる。

「……んっ、ん〜〜〜っ!(美味しいですわ!)」

 口の中が餅でいっぱいで喋れない聖女。

 一方、ブランも専用の小さなお餅と格闘していた。

「キュッ! キュ〜〜〜ッ!」(離れない〜ッ!)

 前足でお餅を押さえようとするが、ビヨーンと伸びて鼻にくっついてしまった。

 神獣vs餅。

 ほっこりする攻防戦だ。

「……餅か。……これは戦場の携帯食にも良さそうだ」

 レオナルドは餅の腹持ちの良さを評価しつつ、5個目の餅を汁に放り込んでいた。

        ***

 食後の団欒だんらん

 満腹になったエレノアとブランがコタツで丸くなっていると、アルリックが小さなポチ袋(封筒)を配り始めた。

「はい、これはみんなへ。……『お年玉』だよ」

「オトシダマ?」

 カエデが不思議そうに受け取る。

 中に入っていたのは、現金……ではなく、

 ・『温泉入り放題パス(1年間有効)』

 ・『好きな料理リクエスト券』

 ・『魔石製の肩たたき券』

 などの、プライスレスなギフト券だった。

「……これは、金貨よりも価値があるかもしれん」

 カエデが真剣な顔で「リクエスト券」を見つめる。

 何を頼むか(寿司か、天ぷらか、それとも未知の料理か)、侍の脳内会議が始まった。

 すると、国王オスワルドが「ハッ」とした顔をした。

「……し、しもうた! わしが最年長じゃというのに、若者に気を遣わせてしもうた!」

 本来なら、目上の者が渡すべきもの。

 王としてのプライドが刺激されたオスワルドは、懐から本物の『王家の金貨(国宝級)』をジャララと取り出した。

「ええい! わしからのお年玉じゃ! 取っておけぇ!」

「ええっ!? 陛下、これ1枚で城が建ちますよ!?」

「いいんじゃ! 孫にお小遣いをあげるお爺ちゃんの気分を味わわせてくれ!」

 こうして、エデンの正月は、餅とお年玉(超高額)が飛び交う賑やかな幕開けとなった。

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