表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の解像度を上げたら、世界が快適になりすぎた  作者: 茗子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/110

第53話 激怒する古龍と規格外のジャンボ・バーガー

 ピザパーティーの後、平和な昼寝タイムを過ごしていたエデンに、突如として「夜」が訪れた。

 太陽が遮られたのではない。

 空を覆い尽くすほどの「巨大な影」が降りてきたのだ。

 ゴゴゴゴゴゴ……!!

 大気が悲鳴を上げ、強烈な暴風が木々をなぎ倒す。

 アルリックたちが空を見上げると、そこには――。

「……で、デカすぎる……!」

 レオナルドが震える声でうめいた。

 全長100メートル。

 深紅の鱗はダイヤモンドよりも硬く、その双眸そうぼうは灼熱の太陽のように燃えている。

 伝説のSSランク魔獣、『古龍エンシェント・ドラゴン』だ。

『――人間よ。我が子をどこへやった』

 脳内に直接響く念話。

 その声だけで、心臓が止まりそうになるほどのプレッシャーだ。

 古龍は、アルリックの膝の上で眠るベビーを見つけると、カッ! と目を見開いた。

『貴様らァァァッ!! 我が子を捕らえ、あまつさえ盾にするかァァァッ!!』

 勘違いだ。

 完全に誘拐犯扱いされている。

 古龍の口元に、街一つを消し飛ばすほどの「龍の息吹ドラゴンブレス」が収束し始めた。

「まずい! エデンが消滅するぞ!」

「アルリック様、逃げてくださいまし!」

 エレノアとカエデが武器を構えるが、相手が悪すぎる。

 だが、アルリックは動じなかった。

 彼はすっと立ち上がり(ベビーをそっと芝生に寝かせて)、巨大な母親に向かって手を掲げた。

「……お待ちください、お母さん」

『……なんだ? 命乞いか?』

「いえ。……お子さんは今、お腹いっぱいで寝ているだけです。そして、お母さんも……お腹が減っているのでは?」

 アルリックは鼻を動かした。

 古龍からは、焦げた匂いと、空腹特有のピリピリした魔力が漂っていた。

 子供を探して飛び回り、食事もとっていないに違いない。

「……15分だけ待ってください。貴女あなたにふさわしい、最高の肉料理を出します」

『……15分だと? 我を愚弄するか。この空腹、貴様らごときの食料備蓄で満たせるものか』

「満たせます。……もし満足できなければ、僕を焼いて構いません」

『……よかろう。ただし、1秒でも過ぎれば、この地を焦土とする』

        ***

 交渉成立。

 ここからは、時間との戦い(RTA)だ。

「総員、戦闘配置! ……じゃなくて調理配置につけ! レオナルドは肉庫からバイソン肉を全部持ってこい! ガリンは鉄板の用意だ!」

 アルリックは杖を振りかざした。

 通常の手順では間に合わない。

 ならば、魔法チートで工程をすっ飛ばす。

「――解体ディスマントル。……細断ミンチ

 シュバババババッ!!

 風魔法の不可視の刃が、運び込まれた100キロの肉塊を一瞬で挽肉に変える。

「――圧縮プレス。……成形」

 重力魔法で肉を押し固め、直径2メートルの円盤状にする。

 同時に、隣では生地の発酵を「時間加速魔法」で強制的に進める。

 ジュウウウウウウッ!!!

 巨大な鉄板の上で、肉が悲鳴を上げた。

 ガリンたちが耐熱服を着て、巨大なコテ(シャベル)でひっくり返す。

 ドスン!!

 肉汁が噴水のように溢れ出す。

「パンだ! 焼き上がったバンズを持ってこい!」

 ふかふかの巨大パンの上に、

 ・焼き上がった巨大ハンバーグ。

 ・レタス畑1つ分の葉っぱ(カエデが居合で収穫してきた)。

 ・スライスしたトマト100個分(ジンが手裏剣でスライスした)。

 ・チーズのカーテン(スライスチーズ1000枚)。

 そして、特製のBBQソースとマヨネーズを、バケツでドバドバとかける。

 最後に、もう一枚のバンズで蓋をする。

「……14分50秒。完成! 『エデン特製・ギガント・チーズバーガー』!!」

        ***

 目の前に置かれた巨大なバーガーを見て、古龍の殺気が揺らいだ。

『……なんだ、この山は。……肉の匂い……麦の香り……』

「どうぞ。……ワンハンド(片手)でいけますよ、貴女なら」

 古龍は疑いつつも、その巨大な口を開け、ハンバーガーに噛み付いた。

 ガブッ!!

『――――ッッ!!!?』

 時が止まった。

 カリッと焼かれたバンズの香ばしさ。

 その直後に、ダムが決壊したかのように溢れ出す肉汁の濁流。

『……ぬ、ぬおおおおぉぉッ!!』

 古龍が唸った。

『柔らかい! 肉が解ける! そして、この酸味のあるソースと、濃厚なチーズが……肉の野性味を極上の旨味に変えている!』

 シャキシャキのレタスと、ジューシーなトマトが、脂っこさを中和する。

 これは、ただの肉塊ではない。

 計算され尽くした「味の要塞」だ。

 バクバクバクッ!!

 古龍は夢中で巨大バーガーを平らげた。

 その表情は、怒れる龍から、至福の母へと変わっていた。

『……うむ。……美味であった』

 満足げに息を吐く母親の横で、ようやく目を覚ましたベビーが「ママ〜」と鳴いて擦り寄った。

『……すまぬ、人間よ。早とちりをしたようだ。……我が子が世話になった』

 古龍は、巨大な前足でアルリックの頭を優しく撫でた(重い)。

 そして、去り際にこう言った。

『礼だ。……これを受け取れ』

 ジャララ……。

 古龍が落としていったのは、自身のうろこ一枚と、大量の「竜の牙(抜け歯)」だった。

 これらは、オリハルコンをも凌ぐ最強の素材であり、加工すれば国宝級の武具になる。

『また来る。……次は「ポテト」とやらも頼む』

 そう言い残し、古龍はベビーを背に乗せて飛び去っていった。

 エデンの空に、平和な夕焼けが戻る。

「……助かった」

 アルリックはその場に座り込んだ。

 伝説の最強種族すらも、「ジャンクフード」の魅力には抗えなかったようだ。

 こうして、エデンは「古龍公認のレストラン」という、とんでもない称号を手に入れてしまった。

 だが、季節は巡る。

 秋が深まり、冬が近づくにつれ、人々の心に灯る「ある悩み」。

 それは――「年末の大掃除」と、一年のあかを落とす「年越しそば」の準備だった。

 次回、エデン初の大晦日!

 除夜の鐘(代用品)と、温かい天ぷら蕎麦が待っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ