表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧宙の星のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/147

【第5章】判断する星舟

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

 星舟が動き出したのは、朝が完全に定着してからだった。


 霧はすでに消え、空は高く澄んでいる。

 それなのに、船内の空気だけが、わずかに張りつめていた。


 ブリッジでは、ルーナが計器を確認している。


「外部異常なし。重力・気圧・空間歪曲も通常範囲」


「なのに、落ち着かないな」


 タケルが椅子にもたれながら言った。


「こういう時って、大抵ろくなことが起きないんだよ」


「それは、あなたが余計なことを言うからです」


 マリアが淡々と返す。


 だが、その視線はモニターから離れていなかった。


 彼女も感じている。

 “何も起きていないのに、進んでいる”という感覚を。


「進路は?」


 ルシアンの声が、ブリッジを引き締める。


「予定通り。次の調査地点へ向かっています」


 マリアが答える。


「ただし……」


「ただし?」


「星舟が、わずかに先読みをしています」


 哲人は、その言葉に反応した。


「先読み?」


「通常は、人の判断を補助する程度ですが……今は違う」


 マリアは言葉を選ぶ。


「まるで、“これから起きること”を前提に航路を整えているようです」


「星舟が、勝手に?」


 タケルが眉をひそめる。


「正確には、“自律判断”です」


 ルシアンは静かに言った。


「星舟は、状況が複雑になるほど、独自の最適解を導く」


「でも、それって――」


 哲人は言いかけて、言葉を止めた。


 考えたくなかったが、浮かんでしまった。


「……俺たちが、選ばされてるみたいだ」


 ブリッジが、一瞬だけ静まる。


 誰も否定しなかった。


 憂は、少し離れた場所で窓の外を見ている。


 彼女は、星舟の動きに身を委ねるように、静かだった。


「憂」


 哲人が声をかける。


 彼女は振り向き、少し考えてから言った。


「星舟は、正しいよ」


「正しい?」


「うん。正しいけど……優しくはない」


 その言葉が、胸に残った。


 正しいが、優しくない。

 それは、今まで何度も向き合ってきた現実だった。


「だからこそ、私たちがいる」


 ルシアンが言う。


「星舟は道を示す。だが、進む理由を決めるのは人だ」


 マリアが、別のモニターを開いた。


「反応を検知しました」


「無貌教団か?」


「断定はできません。ただ――」


 映し出されたのは、都市部から少し外れた地点。


 古い遺構と、新しい建造物が入り混じった場所だった。


「“人が集まり始めています”」


 ルーナが補足する。


「理由は不明。でも、噂が動いてる」


「都市伝説、か」


 哲人は小さく呟いた。


 ここに来て、原点に戻るような響きだった。


「哲人」


 ルシアンが彼を見る。


「行くか?」


 問いかけだった。


 命令ではない。


 哲人は、一瞬だけ迷い、そして頷いた。


「行きます」


 理由は、はっきりしている。


 知らないまま進むより、確かめたい。


 星舟が減速し、進路を微調整する。


 外の景色が、少しずつ変わっていく。


 都市の喧騒。

 その裏に潜む、静かなざわめき。


 哲人は、胸の奥にあった違和感が、形を持ち始めるのを感じていた。


 まだ、名前はない。


 だが、確実に――

 次の出来事は、もう目の前まで来ていた。


この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ