表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧説・碧宙の星のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/167

静かな介入の終わり

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

最初に動いたのは、世界の片隅だった。


南米の山中、観光地図にも載らない遺跡群。

かつては「奇妙な音が聞こえる場所」として、都市伝説好きの間で囁かれていたが、今は誰も近づかない。


そこに、少人数の調査班が入っていた。


「……何も、起きてないな」


通信越しに、現地協力者の声が届く。


「儀式跡はあるが、活動は停止している。

 信者らしき人物も見当たらない」


マリアはその報告を聞きながら、静かに頷いた。


「想定通りです。

 “見せるための痕跡”だけを残して、引いています」


「嫌なやり方だ」


ルシアンが低く呟く。


同時刻、東欧の小都市。

廃教会の前には、すでに警察と自治体が入り、封鎖線が張られていた。


だが、混乱はない。

むしろ、妙に静かだった。


「住民への聞き取りを終えました」


別の回線が割り込む。


「全員が同じ夢を見たと言っています。

 ただし……内容は曖昧で、細部が一致しません」


「恐怖の方向性だけ、揃えている」


マリアの分析は即座だった。


「具体像を持たせないことで、

 “自分で想像させる余地”を残しています」


哲人は、ブリッジの隅でそのやり取りを聞きながら、落ち着かない気分になっていた。


戦っている。

確かに、動いている。


だが、敵の姿は見えない。

手応えもない。


「……追いかけても、捕まらないですね」


「追わせるのが目的だからな」


ルシアンは短く答えた。


「こちらの注意と資源を、広く薄く使わせる。

 その間に、別のことを進めている」


「別のこと、って?」


哲人の問いに、ルシアンはすぐには答えなかった。


代わりに、マリアが新しい情報を投影する。


「アジア沿岸部。

 存在しない島影の報告が、急激に減っています」


「消えた?」


「ええ。

 ――“確認された”後で、です」


ブリッジに、短い沈黙が落ちる。


「……つまり」


哲人が言葉を探す。


「見せるものは見せ終わった、ってことですか」


「その可能性が高いですね」


マリアは淡々としているが、その声には緊張が滲んでいた。


「彼らは、こちらの反応速度と判断基準を、すでに把握したと考えられます」


星舟ノア・レムリアは、まだ動かない。

だが、動かない“選択”そのものが、敵に情報を与えている。


憂は、ブリッジ中央から一歩離れた場所で、静かに立っていた。


「……近づいています」


誰に言うでもなく、彼女が呟く。


「何が、だ?」


ルシアンが問う。


「“使うべき時”が」


その言葉に、哲人は思わず彼女を見る。


憂の表情は落ち着いていた。

だが、そこには微かな覚悟の色があった。


「まだだ」


ルシアンは即座に否定しなかったが、釘を刺す。


「今はまだ、向こうの狙いがはっきりしない」


「……分かっています」


憂は小さく頷く。


「だから、怖いんです」


その一言が、場の空気を引き締めた。


各地の異常は、次々と沈静化していく。

だが、それは解決ではない。


“確認された”という事実だけが、世界に残されている。


無貌教団は、確実に次の段階へ進んでいた。


そしてこちらもまた、

見えないカウントダウンの中に立たされている。


静かな介入は終わった。

次は、より明確な衝突が――避けられない。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ