表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧宙の星のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/147

即席の同盟、歪んだ真実

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

裂け目は、音を立てずに開いた。


空間そのものが裂ける感覚。

石も、空気も、光さえも、そこでは意味を失っている。


「……あれは」


参謀の男が、息を呑む。


黒い影が、ゆっくりと形を成す。

触手のようで、獣のようで、しかしどれにも似ていない。


――旧支配者の残滓。


僕は、そう名付ける前から理解していた。

本能が、拒絶していた。


「哲人、下がって!」


シャーロットが叫ぶ。


「説明は後! 今は、私たちを信じて!」


信じる?

数分前まで、僕たちは追われていたのに?


「……哲人」


憂が、小さく僕の名を呼んだ。


その瞳に、恐怖はなかった。

あるのは――決意にも似た静けさ。


「……わかった」


理由はわからない。

でも、彼女がそう言うなら。


僕は、頷いた。



「前衛、私とマックス!」


シャーロットが即座に指示を飛ばす。


「了解!」


体格のいい男――マックスが、豪快に笑う。


「後方支援、レオ!」


「承知」


眼鏡の男――レオが、素早く端末を操作する。


「理事長、空間歪曲値、急上昇!

 このままだと遺跡ごと崩壊します!」


「上等よ!」


シャーロットは、腰のホルスターから武器を抜いた。


銃――いや、見たことのない構造。


「哲人!」


「はい!」


「君は彼女を守る!

 ――それだけでいい!」


「……!」


理屈より先に、身体が動いた。



マックスが、影の塊に突っ込む。


「おらぁ!」


拳が、あり得ないほどの衝撃を伴って叩き込まれた。


「……人間じゃない」


思わず呟くと、シャーロットが一瞬だけ笑った。


「企業秘密よ」


旧支配者の残滓が、悲鳴とも唸りともつかない音を発する。


その瞬間。


「憂!」


レオが叫ぶ。


「ペンダント、反応してる!」


憂の胸元で、碧い宝石が強く光っていた。


「……っ」


彼女が、苦しそうに胸を押さえる。


「やめ……て……」


彼女自身が、何かを拒んでいる。


――それでも。


空気が、白く染まった。



一瞬。


ただの一瞬。


光が走った。


「……ッ!」


旧支配者の影が、消し飛んだ。


音もなく。

痕跡すら残さず。


「……今の」


マックスが、呆然と呟く。


シャーロットも、言葉を失っていた。


「……“裁きの光”じゃない」


レオが、震える声で言う。


「でも……似てる……」


憂は、その場に崩れ落ちそうになり、僕が抱き留めた。


「大丈夫!」


「……ごめん……なさい……」


彼女は、涙を浮かべていた。


「何か……してしまった……」


「違う」


僕は、必死で首を振った。


「憂は、何も悪くない」



沈黙。


遺跡が、ゆっくりと静けさを取り戻す。


「……確信したわ」


シャーロットが、深く息を吐いた。


「あなた達は――

 この争いの中心にいる」


彼女は、憂を見る。


「そのペンダント。

 ただの鍵じゃない」


そして、僕を見る。


「少年。君は偶然ここにいたんじゃない」


「……え?」


「“選ばれた”のよ。

 ――彼女に」


その言葉は、重かった。



「提案がある」


シャーロットは、はっきりと言った。


「私たちと、行動を共にしなさい」


「なぜ……」


「あなた達を守るため」


一拍置いて、こう付け加える。


「そして――

 世界を壊させないため」


僕は、憂を見る。


彼女は、少しだけ困ったように笑って、頷いた。


「……一人は、怖い」


「……僕も」


だから。


「……わかりました」


僕は、答えた。


「一緒に行きます」



即席で。

歪んでいて。

不完全な。


――それでも、確かに結ばれた同盟。


遺跡の奥で、

神話は、静かに歯車を回し始めていた。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ