表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧宙の星のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/144

追う者、追われる者

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

「――走って!」


憂の声に背中を押されるように、僕は遺跡の奥へ駆け出した。


背後で靴音が跳ね、石に反響する。

迷いなく、正確だ。追跡に慣れている足音。


「待ちなさいって言ってるでしょ!」


シャーロットの声が飛ぶ。苛立ちよりも、どこか楽しそうなのが腹立たしい。


「理事長、右ルート塞ぎます!」


眼鏡の男――参謀役だろう――が冷静に指示を出す。


「左は僕が!」


体格のいい男が笑いながら追ってくる。


――完全に、狩りだ。



通路は枝分かれし、壁の文様が増えていく。


「哲人……ここ、変……」


憂が息を切らしながら囁く。


「うん、わかってる」


空気が、揺れている。


音が遠く、近く、歪む。

時間の流れが一定じゃない感覚。


まるで――遺跡そのものが、憂に反応しているみたいだった。


「っ……!」


足元の石板が沈み、床が回転する。


「うわっ!」


僕はとっさに憂を抱き寄せ、壁に背を打ち付けた。


直後、背後で大きな音。


「……チッ」


シャーロットが舌打ちするのが聞こえた。


「遺跡が、彼女を守ってる?」


参謀の男が、驚きを隠さず呟く。


「そんな報告、聞いてないよ」



行き止まり。


天井の高い円形の部屋に出た瞬間、僕は悟った。


――逃げ場はない。


「終わりね」


シャーロットが、悠然と歩み出る。


「安心して。命までは取らない」


「……信じろと?」


僕が睨み返すと、彼女は肩をすくめた。


「信じなくていい。

 でも、彼女――そのペンダントは、世界にとって危険すぎる」


その言葉に、憂がぴくりと反応した。


「……危険?」


「そう」


シャーロットの視線が、一瞬だけ、真剣になる。


「それを巡って、もう人が死んでる」


空気が、凍った。


「嘘……」


「本当よ」


「じゃあ、何で……!」


僕の声は震えていた。


「何で、そんなものを奪おうとするんだ!」


シャーロットは少しだけ目を伏せ、次に、はっきりと言った。


「奪うためじゃない。

 ――守るため」



その瞬間。


部屋の中央にあった石柱が、低く唸り始めた。


「……来る」


憂が、胸元を押さえる。


碧い宝石が、淡く光り始めていた。


「これは……」


参謀が顔色を変える。


「理事長、反応値が想定外です!」


「……やっぱり、ね」


シャーロットは、僕と憂を見た。


「聞きなさい、少年。

 私たちは敵じゃない――少なくとも、本当の敵は別にいる」


「本当の……敵?」


「あなた達を、もっと酷いやり方で狙ってる連中よ」


その言葉を裏付けるように、天井の影が――歪んだ。


黒い裂け目。

そこから、何かが覗く。


――人ではない。


「っ……!」


シャーロットが即座に叫ぶ。


「総員、戦闘態勢!

 話は後! 今は――」


彼女は一瞬だけ、憂を見た。


「生き残るわよ」



僕は、憂の手を強く握った。


逃げていたはずなのに。

敵だと思っていたはずなのに。


気づけば、同じ方向を向いている。


――これが、立場反転の始まりだった。

この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ