拒絶される光
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
朝は、
奇妙な静けさを伴って訪れた。
雨上がりの空気は澄んでいるはずなのに、
町全体が、どこか息を潜めている。
僕は、
研究施設へ戻る道を歩いていた。
足元に残る水たまりが、
空を歪めて映す。
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(……何か、起きている)
根拠はない。
ただ、
世界が昨日とは違う。
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交差点の角。
人だかりが、できていた。
パトカー。
救急車。
サイレンは鳴っていない。
それが、
かえって不安を煽る。
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「……どうしたんですか」
近くの人に、声をかける。
「……見たんだよ」
ひそひそ声。
「昨日の“奇跡”の場所でさ……」
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視線の先。
舗道の中央に、
奇妙な焦げ跡が残っていた。
円形。
正確すぎるほど、正円。
(……雷?)
違う。
そんな雑な痕じゃない。
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「……裁き、だって」
誰かが、呟く。
「神様の……」
その言葉に、
胸が締め付けられる。
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同時刻。
隔離区画。
憂は、
窓のない部屋で立ち尽くしていた。
レムリアは、
首元で静かに眠っている。
――眠っているはずなのに。
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(……使ってない)
(……私は、何も……)
それでも。
焦げ跡の映像が、
頭から離れない。
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『否定するな』
影の声。
『力は、君の中から溢れた』
『意思とは、無関係に』
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「……違う」
震える声。
「私は……そんな事、望んでない」
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『だが、世界は望んだ』
『祈りが、集まった』
『君は、それに応えただけだ』
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憂は、
首元のレムリアを掴んだ。
強く。
「……なら……」
息を吸う。
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「二度と、使わない」
はっきりとした声。
「裁きの光なんて……」
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空気が、
張り詰める。
一瞬。
何かが、
逆流した。
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憂の視界に、
眩い光が走る。
だが――
途中で、砕けた。
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「……っ……!」
膝をつく。
胸が、
焼けるように痛い。
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『愚かな選択だ』
影は、
低く囁く。
『拒絶すれば、代償は増える』
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「……構わない」
息を切らしながら、
憂は答えた。
「……誰かを……傷つけるくらいなら……」
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影は、
しばらく沈黙した。
やがて。
『……やはり』
『君は、神として欠陥だ』
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その言葉に、
胸が締め付けられる。
だが――
後悔はなかった。
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一方。
町では、
噂が広がっていた。
「奇跡の次は、裁きだ」
「逆らえば、消される」
恐怖が、
信仰へと変わる。
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テントには、
さらに人が集まり始めていた。
祈りは、
より強く、
より歪に。
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研究施設・会議室。
シャーロットは、
報告書を机に叩いた。
「……想定より、早い」
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「拒絶反応が出ました」
レオが、静かに言う。
「対象Aは、
神性の行使を明確に拒否しています」
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マックスが、
腕を組む。
「……それで、どうなる?」
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「不安定化します」
レオは、
淡々と答えた。
「神性と人格の乖離が、
臨界点に近づく」
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「……最悪だな」
マックスが、
吐き捨てる。
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シャーロットは、
目を閉じた。
「……それでも」
ゆっくり、開く。
「私は、彼女の選択を支持する」
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「理事長……?」
⸻
「神であることより」
声は、
静かだが強い。
「人であろうとする意志を」
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その頃。
僕は、
町の外れに立っていた。
焦げ跡を、見下ろす。
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(……憂……)
理由は分からない。
でも。
彼女が、泣いている気がした。
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風が、
焦げた匂いを運ぶ。
空は、
やけに高い。
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裁きの光は、拒絶された。
だが。
神話は、
それで終わらない。
むしろ――
ここから、歪み始める。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




