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旧説・碧宙の星のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


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マリアが見たもの…

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

――彼女は、すでに見ていた


眠りは、突然落ちてきた。

星舟ノア・レムリア。

休息区画で、マリアは解析端末を閉じたまま、椅子に身を預けていた。

ほんの数分、目を閉じただけのはずだった。

けれど――

意識は、別の場所へ滑り落ちる。


そこは、地球だった。

だが、見慣れた青ではない。

色はある。

空も、海も、街も存在する。

それなのに――

意味が、薄い。

人々は歩いている。

会話もある。

笑顔さえ、浮かべている。

それでも、マリアの胸は締めつけられた。

「……違う」

声が、震える。

誰も、何かを“大切にしていない”。

失ったわけではない。

奪われたわけでもない。

ただ――

大切にする理由が、世界から抜け落ちている。

市場の真ん中で、花が踏まれていた。

誰も気に留めない。

子どもが転んだ。

手は差し伸べられない。

人々は悪くない。

冷酷でも、無関心でもない。

「……これは……」

マリアは、息を呑む。

「世界が、理由を忘れた姿……」


視界が、切り替わる。

今度は、星舟のブリッジ。

だが、そこにいるはずの仲間が――

誰もいない。

計器は動いている。

航行も、観測も、続いている。

それなのに。

「……ルシアン?」

返事はない。

「哲人……?

 憂……?」

名前を呼ぶたび、

その名前が、少しずつ軽くなる。

まるで、

呼ぶ意味が摩耗していくように。

マリアは、端末に手を伸ばす。

解析を始めようとした瞬間――

画面に、ひとつの数値が表示された。

【世界意味密度:臨界以下】

「……そんな……」

声にならない。

次の瞬間、

映像が切り替わった。


憂が、立っている。

場所はわからない。

光も、影も曖昧だ。

「憂!」

マリアは、駆け寄ろうとする。

だが、距離が縮まらない。

「来ないで」

憂の声は、優しかった。

責めても、拒んでもいない。

「……マリア」

その名を呼ばれた瞬間、

胸が締めつけられる。

「私、ここにいる理由が……

 もう、わからなくなってきてる」

「そんなこと……!」

叫ぼうとして、言葉が詰まる。

解析官として、

彼女は知っていた。

意味は、外から与えられない。

「世界が……

 私を思い出さなくなってる」

憂は、微笑もうとする。

けれど、その表情は――

輪郭が曖昧だった。

「でもね」

かすれた声。

「マリアだけは……

 最初から、知ってたんでしょう?」

胸が、強く痛む。

「世界が、こうなる可能性……

 ずっと、計算に出てた」

否定できない。

マリアは、唇を噛みしめる。

「……ごめんなさい」

憂は、首を振った。

「謝らなくていい」

そして、はっきりと言う。

「だから――

 今度は、見ないふりしないで」

その瞬間。


マリアは、跳ね起きた。

息が荒い。

額に、冷たい汗。

周囲は、いつもの休息区画。

星舟は、静かに航行している。

「……夢」

そう呟いてから、

自分の手が震えていることに気づく。

ただの悪夢ではない。

解析官として、

彼女は確信していた。

「あれは……

 未来予測が、感情に落ちてきたもの」

端末を開く。

先ほどまで存在しなかったログが、

ひとつだけ記録されている。

【警告:世界意味密度、減衰傾向】

マリアは、深く息を吸った。

「……見ないふりは、できない」

立ち上がり、ブリッジへ向かう。

教団は、破壊を選ばなかった。

だからこそ――

時間は、静かに奪われていく。

「ルシアン……」

廊下を歩きながら、

彼女は小さく呟く。

「あれは始まりじゃない」

胸の奥で、

あの言葉が反響していた。

――今度は、見ないふりしないで。


この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

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