自然消滅…
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
その知らせは、事件でも異常でもなかった。
星舟に届いたのは、
ただの――生活報告だった。
「対象地域:佐賀県某市」
「事象:地域行事の中止」
ルーナが首を傾げる。
「……お祭り、ですよね?」
「はい。理由は“人が集まらなくなったから”」
マリアが、詳細を読み上げる。
「治安問題なし。
資金不足でもない。
単に――」
一拍置く。
「誰も必要だと思わなかった」
哲人が、思わず声を上げる。
「そんな理由で……?」
「最近、増えてます」
ルーナは、唇を噛んだ。
「中止じゃなくて、“自然消滅”」
星図に、小さな光点が表示される。
派手でも、重要でもない。
ただの、町の夏祭り。
憂は、その光点を見つめていた。
「……私」
小さく呟く。
「そこ、行ったことある」
全員が、彼女を見る。
「子どもの頃。
夜店で、金魚すくいして……」
言葉が、途中で止まる。
「……楽しかった、はずなのに」
憂は、困ったように眉を寄せた。
「楽しかったって、思い出してるのに……
胸が、動かない」
マリアが、静かに確認する。
「記憶はある。
感情だけが、希薄」
「……うん」
その瞬間、哲人の中で何かが切れた。
「それ、ダメだろ……」
拳を握る。
「事件じゃないとか、
死んでないとか、
そんなの関係ない」
ルシアンは、何も言わなかった。
ただ、憂を見ている。
憂は、しばらく黙ってから――
はっきりと言った。
「……これ、放っておいたら」
声は震えていない。
「私、
世界を守りたい理由を、忘れる」
その言葉は、決定的だった。
沈黙が落ちる。
「……つまり」
ルーナが、恐る恐る言う。
「これは、
“選ばされる”形じゃない」
マリアが、頷いた。
「自分で選ばないと、間に合わない」
ルシアンは、ゆっくりと立ち上がった。
「方針を、更新する」
全員の視線が集まる。
「我々は、
“意味が削られる前”に動く」
星図が、再設定される。
標的は、教団でも、世界でもない。
「人が、人である理由が消える場所」
憂は、胸に手を当てた。
怖さは、ある。
でも、それ以上に――
「……行く」
小さく、しかし迷いのない声。
「今度は、
呼ばれたからじゃない」
顔を上げる。
「私が、行きたいから」
ルシアンは、静かに頷いた。
「了解した」
星舟ノア・レムリアは、
ついに進路を変更する。
それは、戦争への出撃ではない。
救済でもない。
意味を、取り戻すための航行だった。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




