表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧説・碧宙の星のレムリア -The First Story That Vanished-  作者: 久遠 魂録


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

149/167

世界の応え

この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。

星舟ノア・レムリアは、有明海上空の観測距離に到達していた。

干渟は、遠目には何事もなかったかのように見える。

夜明けの光が、水面に淡く反射している。

だが――

計器は、静かに異常を示していた。

「……反応、変わりました」

ルーナの声が、わずかに震える。

「教団由来じゃない。

 これ、地球側の応答です」

マリアが即座に補足する。

「外部干渉に対する防御でも、拒絶でもない。

 もっと……自然現象に近い」

星図が切り替わる。

問題の座標を中心に、細い波紋が広がっていく。

「……安定していく?」

哲人が呟く。

「はい。でも“元に戻る”わけではない」

ルシアンは、静かに言った。

「世界が、折り合いをつけ始めている」

その瞬間だった。

憂が、はっと息を呑む。

胸の奥で、何かが――

ほどけるような感覚。

「……違う」

彼女は、小さく首を振った。

「呼ばれてない」

全員が、彼女を見る。

「さっきまでのは、

 “来い”っていう感じだった」

憂は、言葉を探すように続ける。

「でも、今のは……

 **“そこにいていい”**って」

誰も、すぐには理解できなかった。

マリアだけが、ゆっくりと頷く。

「……なるほど」

端末を操作しながら、低く言う。

「世界は、あなたを“資源”として見ていない。

 干渉者でも、修復装置でもない」

「じゃあ、何だって言うんですか」

タケルが問う。

マリアは、一瞬だけ言葉を選び――答えた。

「座標です。

 でも、固定するためのものじゃない」

ルシアンが、静かに続ける。

「戻れる場所がある、という事実そのもの」

星舟の外で、光が揺れた。

それは門でも、歪みでもない。

ただ、夜明けの空が、ほんの一瞬だけ色を変えた。

干潟に取り残されていた漁船の周囲で、

潮が、ごく自然に満ち始める。

位置は変わらない。

だが、生活が続けられる形へと、環境が調整されていく。

「……事件が、事件じゃなくなっていく」

ルーナが、信じられないように呟く。

「教団の“問い”が、成立しなくなってる」

ルシアンは、深く息を吐いた。

「世界が先に答えた、ということだ」

憂は、胸に手を当てる。

怖さは、まだある。

でも、それ以上に――

「……私」

小さく、しかし確かな声。

「使われなくても、

 消えなくても……」

顔を上げる。

「ここにいていいんだ」

誰も、否定しなかった。

星舟は、そのまま動かない。

介入もしない。

撤退もしない。

ただ、在り続ける。

その選択に、

世界は――初めて、静かに応えた。



この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ