変わらぬ朝
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
ブリッジでは、いつも通りの朝が始まっていた。
計器の起動音。
通信チェックの声。
誰かがコーヒーを淹れる匂い。
星舟は静かに航行を続けている。
「各セクション、異常なし」
ルーナの声に、ルシアンが軽く頷いた。
戦術モニターには、次の目的地周辺の星域が映し出されている。
「無貌教団の動きは?」
「直接的な接触はありません。ただし――」
マリアが端末を操作しながら続ける。
「周辺の情報網に、断片的なノイズが混じっています。
意図的に“意味のない噂”を流している可能性があります」
「いつものやり口だな」
タケルが肩をすくめる。
「派手に仕掛ける前の、前振りってやつ」
ルシアンは少しだけ視線を落とし、考える。
――夢の話をするつもりはなかった。
だが、マリアの中には、確かな警戒心だけが残っている。
「哲人くんと憂は?」
「後部ラウンジです。
地球の古い地図を見ながら、また都市伝説の話をしてます」
ルーナが苦笑する。
「相変わらずだな」
ルシアンは小さく笑い、そして表情を引き締めた。
「なら、ちょうどいい。
次は“動きながら”探る」
星舟は進路を微調整し、星の流れを横切っていく。
この航行は、逃避ではない。
待機でもない。
“次の局面へ進むための移動”だった。
ブリッジの外では、星々が静かに流れていく。
その中に、まだ名前の付いていない因果が、確かに混じっている。
マリアは、無意識に胸元に手を当てた。
――誰もいなくなる夢。
それでも残った、温度の感覚。
「……大丈夫」
今度は、心の中で呟く。
星舟は進む。
物語もまた、止まらない。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




