星舟内にて
この度は、数ある作品の中からこの物語をお手に取っていただき、誠にありがとうございます。どなたか1人でも、当作品の存在を知っていただけるだけで幸いです。
星舟の内部は、いつもと変わらず静かだった。
人の気配はない。だが「無人」であることと、「無反応」であることは同義ではない。
観測層の最外縁で、微細な揺らぎが検出される。
数値は誤差の範囲内。
過去ログとの照合結果も「問題なし」と表示される。
それでも、記録系が一瞬だけ遅延した。
原因不明。
外部干渉なし。
内部損耗なし。
――ただ、座標がひとつだけ、既知の履歴と一致しない。
地球。
列島部。
人類文明圏。
補正処理が自動で走る。
「既知パターンへの収束」が選択され、数値は平常値に戻る。
だが、完全には消えない。
わずかに残る“ずれ”。
意味を持たないはずの偏差。
星舟はそれを異常として扱わない。
危険とも判断しない。
それでも、記録層の最深部に、追記が行われた。
――観測対象、未確定。
――過去参照、不可。
――感情反応、検出不能。
ログはそこで途切れる。
星舟は沈黙を保ったまま、航行を続ける。
何かを待つように。
あるいは、すでに知っているかのように。
この度は、私の作品を最後までお読みいただき、心より感謝申し上げます。読書のお一人でも、心に響いて頂けましたら幸いです。




