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少女型兵器が戦う世界でTSする話  作者: 畑渚


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9/10

最後の作戦

「これは人類の大きな一歩となる作戦だ。気を引き締めてかかれ」


 通信機越しに軍団長の声が聞こえる。


「総員、任務開始!健闘を祈る」


 その号令で、俺達は動き出す。


「ユーディ、ぼさっとしないで」


「は、はい」


 支給されたライフルを握りしめて、トラックの揺れに身を任せる。

 俺達が進むのは、先遣部隊が切り開いた道だ。


 任務の肝となるのは、ドゥエラーの巣穴近辺への爆破工作だ。俺達ドレッド部隊も、爆弾持ちとして任務にアサインされている。


「ヴァイスちゃん、もうすぐ目的地だよ」


「ああ。皆、任務を必ず成功させよう」


 ヴァイスの手に、皆が手を重ねていく。


「とうちゃ~く!」


「よし、ドレッド部隊、作戦開始!」


 俺達の作戦が、幕を開けた。



+++



「こちらユーディ、チェックポイント通過。問題とくにないです」


「こちらヴァイス。その先には小さいがドゥエラーの生体反応がある。気をつけて」


「了解、オーバー」


 ライフルを構えて先へと進む。爆弾の詰まったバックパックがやけに重く感じた。


 俺達が進んでいるのは、ドゥエラーの巣穴と繋がっているとされる地下施設だ。先遣隊は地上での道を確保しているため、地下に進むのは俺達だけである。


「前方、はぐれた小型ドゥエラーがいます」


「了解、排除する」


 後ろから着いてきていたノエルが、引き金に指をかける。


 サプレッサーによって圧縮された乾いた銃声が施設に響いた。


「ドゥエラーの排除を確認」


「了解、前進します」


 地下施設はすでに電気もなく、場所によっては懐中電灯で照らす必要があるほど暗かった。

 巣穴が発生したときに犠牲になったのだろう。腐敗した死体がところどころに転がっている。このときばかりは、LFになって嗅覚をオフにできるようになったことを拝んだ。


「こちらアリスだよ~!ちょっとドゥエラーが多いかも、応援求む~」


「ノエルさん、行ってきていいですよ」


「……わかった。くれぐれも危険な行動は控えて」


「一応私もLFなんですから。まあわかりました」


 再度念を押すようにして指差ししたあと、ノエルはアリスの応援へと走って向かっていった。


 さて、一人になったわけだが。


「前進するか」


 とくになにかするわけでもなく、俺は爆破ポイント目指して前進を続けた。


 驚くことに、それ以降に接敵はなかった。


「ラッキーか。ここにきて幸運の女神が俺に微笑んでるな」


 そんなことを言ったからだろうか。通信機がノイズを走らせた。


「総員撤退。繰り返す、総員、すぐにその場を離れて」


 通信機越しのヴァイスの声には、明らかに焦りが含まれていた。


「ヴァイスさん、一体なにが」


「先遣部隊が接敵している。この分じゃあと30分も持たない」


「地上にいっぱいでてきたってこと?」


「アリスの言う通りだ。やつら、巣穴を捨ててこっちの人減らしに全力みたいだ」


「それじゃあ爆破は」


「不可能だ。爆破ポイントまで行かないと効果が薄いし、ポイントがある奥地まで行っては撤退は不可能になる」


 それは、任務実施不可を告げる連絡だった。


「ユーディ、爆弾は捨てて構わない。全力で、後ろを振り返らずに、戻ってきて」


 ヴァイスの声は切実だった。

 もう二度と仲間を失わせないという、強い意思を感じる。


 でも、そうもいかない。


「ごめんヴァイスさん。私は前に進むよ」


「なっ!?」


「さっきまでアリスのところにいたドゥエラーたちが、どうにも私の退路を防ぐように移動してるみたいなんだ」


「なるほど、すぐにアリスたちを向かわせてーー」


「必要ない。アリスとノエルはすぐに撤退。ヴァイスとシエナと合流でき次第、全速力で撤退して」


「ユーディ、あなたはどうするつもり!?」


「爆弾持ちのすることなんて決まってる」


 どうせ一度捨てた命だ。もう一度人類の役に立てるってなら、この上ない人生だろう。

 俺は爆弾を抱えて前に走り始める。後方のことなんて、気にもとめなかった。


「まて、ユーディ!くそっアリスとノエル、私の指揮を聞いて、いますぐユーディをーー」


「ったく、こう言わなきゃわかんないか?」


 俺は、あの時のように、ゆっくりと命令する。







「これは強制命令だ。従え。総員、撤退だ」







 突如として発された、人間にしか許されぬ指揮コード。

 それは俺が人間であったことを認めるようなものだが、この際どうだっていい。どうせ最期だ。


「LFは……強制命令権なんてない、ないはずなのに」


 いままであった指揮系統が焼き切れ、新たな命令をそこに刻み込む。


「ヴァイスさん。いや、ヴァイス。後を頼む」


「貴方はいつもそうだ。そうやって無責任に、あの時だって」


「そういう人間なんだよ、俺は。それじゃあな」


 俺はこれ以上追求されるのを避けて通信機を切る。


 爆破ポイントは、もう目の前だった。



+++



「ここか」


 地図に示されたポイントは、元は食堂のようだった。しかし壁には大きな穴が空いており、土の色が大きく主張している。おそらくここが、ドゥエラーの巣穴に通じる道なのだろう。


「爆弾は大丈夫だよな」


 爆弾をバッグから出して、柱の部分に取り付ける。電脳が示すマニュアル通りにセットすれば、3分のタイマーがカウントダウンを開始した。


「というかデフォルトで3分って、撤退させる気ないような」


 すると電脳がぽんと答えを出してくれる。どうやらセットする際に分数を指定できたらしい。


「えっうそうそ、じゃあなんかもっと長く設定しときゃよかったか!?」


 マニュアルをあれこれ読んでも、一度セットしたカウントダウンをキャンセルする方法は出てこなかった。


「いや、長くてもどうせ意味のないことか」


 たとえ自由にセットし直せたとしても、俺の退路はもうない。


「まったく、短い人生だったぜ」


 ドレッド部隊は今後どうなるのだろうか。アザレア博士は少なくともカフェイン摂取量が増えそうだ。軍団長は……まあなんだかんだいつも通りに過ごすのだろう。


「はあ、せめて最期になにか食えないか?」


 俺は立ち上がって、隣のキッチンへと足を踏み入れたのだった。


「さすがに缶詰があるくらいか」


 冷蔵庫を開けてみれば、腐った食材が少し残っているくらいだった。


「そもそもLFって飲食NGだっけ、まあこの際気にしてられっか」


 冷蔵庫の前で缶詰を開ける。

 缶の変形なし、汁漏れなし、中身も……問題なさそうだった。


「さてといただきーー」


 いただこうとした瞬間、視界が赤く染まる。

 目の前に表示されたのは、爆破まで30秒を切ったという警告文だった。


「こんな便利機能があったとは」


 俺は、そっと缶詰を机に置いた。


 そしてしばらく考え込み、その時を迎えた。





 地下施設は、たった1回の爆発をもってして、隣の巣穴とともに大きな音と振動をだしながら崩落した。






 作戦、成功。


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