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「決心はつきましたか?」
私が漸く深い闇の世界へと足を踏み入れると、姿の見えない誰かが
問いかけてくる。
真っ暗な洞窟にでもいるように響いてくるその声は、ここ数日毎日
私に問いかけてきていた。
「はい。」
私はその問いに、一言だけ短く答えた。
「本当に良いのですか?」
「もう、決めた事ですから。」
「そうですか・・。 それでは前にも説明しましたが、確認します。」
そう言うとその声は続ける。
「この事は絶対に誰にも口外しない事、そして決して自分の正体を
明かさない事、それから・・・・・あなたの身体の保障は出来ない
と言う事・・・それでも良いのですか?」
「かまいません。」
私には、全く迷いはなかった。
私にあったのは、強い使命感とほんの少しの不安、そして大きな期
待感だけだった。
私が思ったままに強く行動することが・・・・、きっと・・・・。
「それでは目を瞑ってください。」
私は、言われるがままに真っ暗な闇の世界で目を瞑った。
程無く、私の身体が何か温かなもので包まれていくような感じがした。
目を閉じていても、瞼で隔てられた外の暗闇の世界が、とても眩し
く光り輝いていくのが分かった。
身体はどんどん軽くなっていき、わたしはここよりもさらに深い深い闇
の世界へと落ちていった。