押し付けられる 6
「まずはここまでですが、ルーチェさん、アナリズさん。この依頼、受けていただけませんか?」
一息入れるかのようにポラーレは尋ねてきた。その目は画面越しであるのにもかかわらず、しっかりとルーチェとアナリズをとらえているように見える。
ルーチェは通信端末に視線を送ってから、横目で隣にいたアナリズを見る。
アナリズもまた、じっと通信端末を見ていた。その表情には感情が一切見えず、ただただ、表示されていた依頼内容を見ることに集中していた。
アナリズのことはそのままにして、ルーチェが先に尋ねる。
「私は一度失敗している身だ。それでもいいというのか?」
「その辺りについては、了承したうえでの依頼ということのようです。むしろ、邪魔が入ったから失敗したのでしょう、と寛大な言葉をいただきました」
ポラーレの言葉にルーチェは腕を組んで天井を見上げた。ピエノパッチと変わらない天井があり、今は消えているが同じ照明がつけられていた。しばらくそれを見た後、ルーチェは視線を下ろす。肺の中の空気を静かに吐き出してから、ゆっくりと取り込む。何度か繰り返してから、ルーチェが口を開く。
「……アナリズはどう思っているかはわからないが、私は問題ない。この依頼、受ける」
「ありがとうございます、ルーチェさん。それで? アナリズさんはどうですか?」
ルーチェの返答とポラーレの問いに驚いたのか、体をびくりと揺らしたアナリズ。視線をルーチェと通信端末を何度か往復させていた。ルーチェはアナリズの顔を見るが、口を開きかけたアナリズはすぐに口を閉じて、通信端末へと視線を戻した。
「あっ、と、僕なんかでお役に立てるんでしょうか?」
おどおどとしながらアナリズが尋ねた。
「アナリズさん。それは大丈夫です。何かあれば、隣にいるルーチェさんが助けてくれます、そこは安心してください」
通信端末越しに気楽に言ってきたポラーレ。その答えを聞いたルーチェは通信端末をにらみつけるが、相手がどんな表情をしているのかわからないため意味はない。一つ嘆息をもらしてから、ルーチェは口を開く。
「……どちらにしても、使えるようになってもらわないといけないなら連れていくしかない」
「優しいのかそうではないのかわからない言い方ですね。ルーチェさん」
「そんなことはどうでもいい。他に何かある?」
せっかちですねぇ、と言う声とともに、通信端末の画面が切り替わった。どうやら、概要になっているらしく、ルーチェはそれを目で追う。
「詳細は現地に行ってからになりますが、場所はコビナレホールになります。アナリズさん、わかりますか?」
「えーっと、コビナレ川の近くにあるとしか……」
その答えを聞き、息を小さく吐き出してルーチェは話しだす。
「……アバラックバーイアは東西の二つに分断されている。それをしているのがコビナレ川。ここピエノパッチは西側、いわゆる旧市街。反対に東側は新市街になる」
いったんそこで区切るルーチェ。アナリズの表情を確認すると、わからないといった表情ではなく、小さく頷きながら話を聞いていた。
ルーチェが続ける。
「もともとは西側にすべての機能が集中していたけど、再開発することになって、都市機能の一部をコビナレ川の東側に移した。それが新市街。その新市街の中に都市機能の中枢の都市議会場と市街役場がある。それらとコビナレ川の間にあるのがコビナレホール」




